アレンの策
時は遡る。
ハルベルトとマーキールの号令前、エスカー率いる銀翼傭兵団はハルベルトより左に位置し、恐らく戦の重要な場所であろう中央から遠く離れた最奥に陣を取っていた。
「アリエフスキ!この辺りで良いか?ユリエル!号令を聞き漏らすなよ?」
少年が虫を捕まえに行くような、とても戦が始まる前とは思えぬ無邪気な声でエスカーが確認する。
「団長。良い場所が取れました。ここが最適です」
「はーい!団長!もう陣は組み終わってるよ!」
アリエフスキとユリエルの確認を取り、準備が完了したエスカーはハルベルトの号令を待ちわびていた。
銀翼傭兵団最前線では敵と睨み合いを続ける剣の隊と槍の隊が並び、敵に悟られぬよう魔の隊が後衛で広域殲滅魔術の陣を完成させていた。
「ククル殿よ、先に行かせてもらうからな!」
「サリオン…い、一応わかったわ」
前夜と変わらず煮え切らない態度のククルには、訳があった。
前夜のククルとサリオンのやり取りの少し前、シュード、アレンと話をしていたククルは約束してしまっていたのだ。
「ククル。明日の戦では俺が切り込む。号令の直後にだ。その後のフォローはシュードとあんたに任せるが、軍ってのは傭兵と違って味方がやられると萎えるもんだ。まずは俺達遊撃隊が敵陣深くまで切り込んでからが勝負だ。ただ、布陣は軍の端が良い」
アレンの自信満々な作戦と呼べるかどうかもわからないような案に、呆れ顔のククルであったが何故か長年右腕として共に闘ってきたシュードは深く頷いている。
一体今の策に何が隠されているのかと考え込むククルであったが、その場にいたもう一人の存在に気付く。
「あなたの言いたいことはわかったわ、アレン。薄々感じてはいたけど、口下手ね。私じゃなかったらそんなの伝わらないわ」
アレンの策は号令と共に切り込んで敵兵数を減らす。
そんな甘い物では無かったのだ。
その後、アリエフスキの戦術により魔の隊が誇る広域殲滅魔術を目眩しとすることが決まった為、ハルベルトとマーキールの号令直後に爆風が吹き荒れ、両軍が辺りを見渡せ始めた頃には敵陣左方に一本の矢が刺さることになったのであった。
アレンの目的。
それは号令直後に相棒 コルが類稀な視力と弓の腕により指揮官を射抜き、向かい合うことになった敵陣の指揮を遮断すること。
そして、アレン率いる遊撃隊五十人が正面では無く側面から中央に向かって前進して行くことであった。




