アリエフスキの戦術
レグナレス軍議が終わり、エスカーが銀翼傭兵団の者達が野営を行う場所へ戻ってきた時にはすでに日は暮れようとしていた。
正午過ぎに野営地の到着したレグナレス軍であったが、対するウラド軍も同じく戦の支度を整えていたため、互いに見張りは立てつつも動きは無かったのである。
エスカーのテントに六人の隊長達が集まる。
「皆、ご苦労さん。明日の闘いについてだが、ハルベルト大将軍に許可を得た。明日は俺達の闘いになるだろう。」
笑みを浮かべながらエスカーは先程の軍議の様子を語る。
「戦術に関してはアリエフスキに一任する。この山岳地帯、レグナレスは七万に対しウラドは十二万だそうだ」
そう言いながらアリエフスキの方を見やるエスカーであったが、エスカーは信頼の眼差しを、アリエフスキは自信に満ち溢れた表情をしていた。
「了解です、団長。もうすでに隊長達の間で話を進めておりました。明日は剣の隊、槍の隊を前衛に据え後方より魔の隊、弓の隊による援護射撃を行う。斧の隊は奇襲に備え後方で待機する布陣を考えています」
エスカーが戻るより前に、アリエフスキ含め隊長達は己の隊の動きを確認していた。
そして、アリエフスキが描いた図を聞いたエスカーは思っていた通りの布陣に頷く。
「よし、それで行こう。ククル、サリオン、頼むぞ」
エスカーがそれを認めたことにより、明日の布陣では剣の隊と槍の隊が最前線を務めることになる。
ククルとサリオンは頷くと、魔の隊ユリエルと斧の隊ガダンも頷く。
「それともう一つだ。明日、ハルベルト大将軍が戦の口上を告げるだろう。その後の第一陣を仰せつかった」
「第一陣でござるか?ほぅ、団長も粋な計らいをなさる」
サリオンが満更でない顔を浮かべククルの方を見る。
「今回の戦の第一陣、譲って貰っても良いだろうか?ククル殿よ」
「えぇ、構わないわ。剣の隊は槍の隊の援護に入りつつ、徐々に斜陣を敷くように展開していく」
サリオンが頭を下げるとククルに礼をする。
これで明日の戦の術は決まった。
戦に備え各々の隊に戻り動きを確認するも良し、気付けに一杯やるも良し、とエスカーが告げようとしたその瞬間、少し申し訳無さそうなククルが口を開く。
「けれどねサリオン、ごめんなさい。もしかしたら…ウチの大剣男が何かをしでかすかもしれないけど、その時はよろしく頼むわ」
詫びは先にしておこうと右手で額を抑えながら、謝るククルにサリオンは明日の戦で何が起こるのであろうかと目を瞑るのであった。




