檄
エスカーがハルベルトより命を受けた、アレンがククルより遊撃隊隊長の任を受けた、夜が明ける。
日の出より二刻目、エスカーの指示通りにククルの元に集った剣の隊隊員達。
しかし、いつもの様子とは違うことに他の隊員達が気が付いたようである。
ククル隊、シュード隊、そしてシュード隊の横には大剣を背に下げたアレンと約五十名の隊員達、そしてアレンの横にいたのは英功賞のバッジを胸に付けたコルの姿があったのである。
「このことは団長には話してあるわ。アレン、頼むわよ。」
ククルがこちらを見ずにアレンに話し掛けると、アレンも頷く。
「あぁ、任された。シュード、フォロー頼むぜ。俺は斬り始めたら前にしか進めねぇ性質だからな」
「おうよ、わかってるさ!」
先の戦により第一功を賜った剣の隊隊員達の士気は高く、戦へ向かう為の支度は出来ている。
「俺の翼達よ!今日より、史は始まる!俺達の力を大将軍ハルベルトの目に刻みつけるぞ!」
エスカーが最前列で声を張ると六隊全員が声を上げる。
ウラド王国とのしがない小競り合いであるはずの戦は、銀翼傭兵団にとっては大事な戦であるのだ。
国境沿いまでは歩きで三刻ほど、今日の昼には戦は始まる。
これから背を任せ合い、共にククルの為剣を振るう遊撃隊員に向けてアレンは大きな声で叫ぶ。
「おい!お前ら、よろしく頼むぜ!胸に付けてる小さいバッジは一回外せ!腹でも腿でも良い、下に付けとかねぇと襟までバッジになっちまうぞ!」
名も無き遊撃隊の男達は右腕を掲げる。
一戦ではあるが、闘いぶりを見てアレンに惚れた者たちの集まりである。
隊員達の士気を最高潮に高めるアレンの檄を聞き、この男は一人で剣を振るい続けるだけではない、人を率いる将としての才覚を持つ男なのだとククルは思った。
「シュード、アレン。今回の戦も過酷な物になるかもしれない。けど、一人でも多く生きて帰るのよ」
ククルにそう言われたアレンは笑みを浮かべる。
「あぁ、了解したぜ。隊長さんよ」
シュードとアレンが頷く様を見て、ククルもまた頷く。
銀翼傭兵団は戦場に向かい前進を始めるのであった。




