行賞の宴
その日の宴は盛大に行われた。
剣の隊だけでなく、銀翼傭兵団の全団員が参加し勝利の美酒に酔いしれた。
天幕の方では六人の隊長達が酒を酌み交わし、その他では隊関係無く皆が入り混じり騒いだ。
最前線で戦闘を行った剣の隊は負傷者が多かったが、よほどの重傷者でない限り宴に参加していた。
「アレン。感謝する。あれは副長である俺の力量不足だ」
アレンの元へ歩み寄ってきたのはシュードであった。
アレンとその横にちょこんと座りながら葡萄の果汁を飲んでいたコルはシュードを見上げる。
「お互い様さ、シュード。次は俺がやべぇかもしれない、その時はよろしく頼むぜ」
アレンがシュードを慰めるように声をかける。
コルはその様子を見ながらまた果汁を飲み始めていた。
宴も半ばに差し掛かった頃、天幕の方でエスカーが立ち上がる。
その様子を見た団員達は一斉にエスカーを見る。
「おい、何が始まるんだ?皆静かになりやがったぞ」
「これから各々の武功を発表するのさ。今回の戦だと俺達剣の隊は期待大ってとこだ」
シュードはそう言いながらアレンとコルにも天幕を向くように呟く。
アレンとコルは目を見合わせ、アレンは微笑みを浮かべコルは緊張した面持ちになる。
「俺の翼達よ!よくぞアケドニアの野郎どもを退けた!戦傷者達もいるが、良く戦ってくれた!」
人の上に立つに相応しく良く通る声でエスカーが話し始めると、団員達はただ黙って酒を飲みながらエスカーを見ていた。
「酒を飲みたいやつ、騒ぎたいやつもいるだろう!今回の戦の行賞を発表する!」
エスカーはちらりと隣に立っているククルを見ると、ククルは頷きながら笑っていた。
その笑みにアレンは思わず見惚れてしまい、ククルから目を離せなくなってしまった。
あの女は、あの隊長はどんな人間なのだろう。
ククルの下で闘う今後を考え、ククル・アルキドシアという女性をもっと知りたいと思うアレンであった。