終戦
アレンとマヤシナの一騎討ちが終わり、近衛兵も撤退。
野営地を突如襲撃されるという劣勢から、銀翼傭兵団は勝利を掴みとったのである。
大きく一息つくアレンの隣にはククルがいた。
「おい、隊長。少々来るのが遅いんじゃねぇのか?」
アレンが悪戯っぽい微笑みをククルに向けると、ククルは申し訳なさそうな顔を浮かべる。
「すまないと思っているわ。銀翼傭兵団としてこの戦での第一功団は剣の隊なのは間違いない。後は隊の中での第一功を決めないとね」
周囲にいた剣の隊隊員達は剣を高く掲げ雄叫びを上げる。
「ふふっ、まだよ。負傷者を後方へ運んで。まずはアリエルに手当てをしてもらいましょう。」
終盤に重装騎兵達による猛攻を受けた剣の隊は少なからず負傷者が出ていた。
まずはその隊員達の手当てを優先することになり、本当に戦が終わったことをコルは実感していた。
「おい、相棒。やるじゃねぇか。お前はこの隊で一番の武器を持ってるんだ。誇っていいんだぞ?」
アレンが先ほどまで見せていた魔獣のような目つきから一転、昨日の宴で見せたような暖かい微笑みを見せながらコルに問う。
「で、ですが僕は剣の隊です。剣では無く弓で将を不意打ちするなんて、きっと隊長は褒めてくれません」
コルは勝利の余韻程なく、自分の手柄について否定した。
「傭兵ってのは殺られる前に殺る。そんな甘いもんじゃねぇ。殺られる前にじゃ遅いのさ。考える前に殺るんだよ」
アレンは自分よりもずっと背の丈が低い相棒に語りかける。
まだ年端もいかない少年が、敵将を討った。
どんな形であれ、だ。
しかし、そのことに目の前の少年は納得していない。
きっと良い男になる、そう確信しアレンは微笑む。
「なぁ、隊長。俺には団長さんやコルのように何かを見据えて走れねぇ。俺は決めたぜ。それが見つかるまでここで剣を振る」
指示を一通り終えたククルにアレンが告げた。
ククルは一瞬目を見開きながらも、あの闘いを見て、この男が欲しいと感じて本当に良かったと思った。
「えぇ、ようこそ銀翼傭兵団へ。アレン・アックスフォード。」
「あぁ、ひとまずはあんたの為に剣を振るうとするさ」
二人が手を取り握手をする姿は周囲にいた隊員達から見ても神々しく、これから始まるこの傭兵達の物語の続きが鬼剣の傭兵と呼ばれ史に残る鮮やかな記録となることを予感した。