敵陣中
「うわぁぁぁぁぁ!腕が、腕がぁ!」
アレンと衝突した敵兵達は次々と武器を腕ごと平原に落としていく。
槍も斧も両手で扱う武器であり、それを振り回し突き出すには必ずタメの時間が生まれることをアレンは知っている。
そこで一拍早く大剣を振り始め、両の腕を叩き斬っていく。
切れ味は鋭くなく、振り下ろす速度も速くないこの大剣でどうやって斬ることができるのかコルは目の前で起こっている出来事を理解できなかった。
「おい、相棒よ!兜だ!こいつらの中で兜が違うやつを捜せ!そいつが隊長だ!」
アレンは大剣を振り回しながらもコルに伝える。
あの距離を寸分違わず弓矢で撃ち抜いたコルならば隊長格を見つけられる。
隊長格を討てば軍という存在は瓦解することもアレンは知っていた。
気付けば敵兵を斬り捨てながら進んでいたアレン達は敵軍の中央付近まで進んでいた。
しかし、先ほどまでと兵の密度が違うことに気付いたアレンは咄嗟に手綱を引く。
「ちっ、数も多けりゃ練度もよくなってきやがった」
中央に向かえば向かうほど敵兵の数も増え、恐らく前線にいた兵よりも練度の高い兵達が集まってきたのであった。
「アレンさん!見つけました!一人だけ違う、二本角の兜!」
コルは黒馬の上に器用に立ちながら陣地のさらに奥を指差す。
「相棒よ!弓矢を使え!こういった類の野郎どもは自分の弱点を全て鎧で覆った気になってやがる!けどな、絶対に覆えない場所もあるはずだ!」
「で、でも、弓矢は使えません…」
コルが震えながらそう告げたが、アレンは叫ぶ。
「矢でそいつの目を射るんだ!そうすりゃお前がこの戦の第一功だぜ!」
そう言うとアレンは黒馬の上から飛び降りた。
騎馬兵、歩兵入り混じる混戦となった中アレンは馬から降りたのである。
「俺がこいつらを引き受ける。お前はお前の仕事をしろ!でなけりゃこいつらまとめてぶっ飛ばした後、俺が隊長格も叩っ斬るぞ!」
アレンがコルの目を真っ直ぐに見つめそう告げると、コルの震えが止まった。