剣の宴
アレンが剣の隊の一員となった夜は、宴が開かれた。
次々とアレンの元を訪れる隊員達は皆酒を持ち、アレンの盃へと汲みながら自分が傭兵を始めたきっかけや銀翼傭兵団にとって剣の隊こそ花形でありククルは命を賭けるに値する人物であることなど様々な話を話した。
アレンが過去に所属していた傭兵団は金の為に人を斬り、目的も目標も何も持たない人間ばかりであった。
そんなアレンにとって彼らが話し、聞かせてくる言葉は心に染み入った。
「他の隊のことはわからねぇが、ここは、こいつらは良い奴らだな」
思わず心の声が出てしまったアレンの言葉に
「おう、アレンよ。お前はウチの組だ。よろしくやろうぜ」
と大人三人がかりでも飲まないような酒瓶を持った男が近づいて来た。
「剣の隊 副長のシュードだ。お前はウチの組さ。さぁ一杯やろうじゃねぇか」
アレンは差し出された酒を飲み干すとシュードに返答した。
「あぁ、副長。アレンだ。よろしく頼むぜ。」
「おいおい、その副長ってのはよせやい。シュードと呼んでくれ、アレンよ。それよりもお前さんは姉さんが惚れ込んで連れてきたってのは本当か?」
シュードの言う姉さんとはククルのことであろうと予想したアレンは頷いた。
「へぇ!こりゃまた本当だったか!アケドニアでは姉さんに勝てるような奴はただの一人もいなかったってのによ」
驚きながらも酒を飲む手が止まらないシュードに
「いやいや、俺も負けたんだよ。あのククルって隊長は何者だ?ただのエルフが魔術を使うなんて話、聞いたことねぇぞ?」
エルフとは弓矢と細身の剣、レイピアと呼ばれるものや短剣を使い俊敏な動きで敵を仕留める部族と聞いていたアレンはククルとの戦闘の際、ククルが魔術を使ってきたことをぼやいた。
「なっ!姉さんが魔術を使ったって!?戦場でもそんなのは見たことないぞ」
先ほどとは違い、酒瓶を落としてしまうかの勢いで驚いたシュードは期待を込めた眼差しでアレンを見ながら
「こりゃ銀翼傭兵団創設後初めて、もう一つの隊が出来ちまうかもな!」
と笑いながら話し、また酒を飲み始めるのであった。