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アレンという男
戦場の真ん中に立つ男が一人。
血と汗が弾け飛ぶ戦場で彼の周囲に他に立つものはいない。彼の名前はアレン・アックスフォード。
彼は無骨なただの鉄塊のような大剣を振り回し、この戦場でただ一人生き残った。
「ふぅ、また俺だけか」
初めて戦場に出たのは九歳の時。
父も母も傭兵であったアレンにとっては戦場は学び舎であり仕事場であり人生そのものであった。
父と母はアレンにとって三回目の戦場で命を落とした。アレンを守る訳でもなく、敵軍の将軍と相見える訳でもなくただ普通に死んでいった。
その事になんの疑問も無く
「傭兵であるならばいつ死んでもおかしくない」
その一点のみしか考えた事は無かった。
アレン・アックスフォード、「鬼剣の傭兵」と呼ばれる事になる彼の運命はレグナレス帝国とウラド王国の間で行われたこのしがない小競り合いを機に大きく変化していく。