第3節「攻防」
「数多の魔術を喰らいし古の書よ、揺らぐ世界に秘められし禁術を解放せよ。今こそ我が血の盟約に従い姿を現せ、虚ろなる禁書黙録」
温かい光が咲葉を包みこみ、一冊の書を具現化する。淡い輝きを放つ純白の書は、黒く長い咲葉の髪を白銀に染め上げた。
会場に準備完了を知らせるブザーが鳴り響き、フィールドと観客席とを隔てる魔導結界が形成される。
『では、試合準備が整いましたのでこれより試合を開始します。決闘開始!』
「鳴り響け、周波音声!」
開幕直後、奥寺の放った技が大地を抉り咲葉に迫る。
「魔を貪るモノよ、修羅の如き力を示せ! 来たれ、妖刀・羅刹」
咲葉は、虚ろなる禁書黙録から一本の刀を引き抜く。真紅の紋様が走る禍々しい黒刀。それを鞘から抜き放ち、構えを取る。
「宵桜流一刀術五之太刀、白疾風」
袈裟斬りと逆袈裟の二振りて、一つとなる剣術は、奥寺の声の波を両断した。
咲葉の攻撃に奥寺は少し驚くが直ぐに真剣な顔つきになる。
「一秋、お前金属アレルギーで刀は持てないんじゃないのか?」
「羅刹は金属でできないんですよ」
そう言って、咲葉は一足一刀の間合いに踏み込む。
「舞い踊れ、剣の舞い」
瞬時に光剣を手にした奥寺は、剣の舞いの補助を受けた音速の剣を振るう。
「一刀術七之太刀、刹那」
音速の剣を躱し、奥寺の背後へ飛んだ咲葉は、神速のカウンターを放つ。だが、咄嗟の判断で奥寺は周波音声を発動させる。
空中にいた咲葉は、回避行動をとることが出来ず、衝撃波が全身を襲う。
「打ち砕け、破砕衝音」
追い打ちをかけるように放たれた技は、上空から咲葉に衝撃を与える。鉄をも押し潰すその衝撃波に、咲葉の防御魔法が砕け散り、骨が軋む。
あまりの衝撃にフィールドの一部が破砕され、その中心に咲葉が倒れている。
誰もが勝敗が決した。そう思った次の瞬間、咲葉の体からドス黒い魔力が放たれた。
「解き放て、呪壊!!」
放たれた魔力は大蛇と化し、咲葉の体へ巻き付く。大蛇は、胴体から徐々に左腕へと移動する。
「理事長。今から全力出しますから、死ぬ気で防いでください」
少し長い文ですが読んでいただけたら嬉しく思います。まだまだ、勉強中の身ですので何かご指摘があればどんどん言って下さると嬉しいです。