始まりの日
入学式から数日後、咲葉の気分は沈んでいた。理由は、他人に隠していた異能を一人の観察者に知られたからだ。しかも、それは隣の席に座る空加雪菜という女子生徒だった。
そして現在、咲葉は雪菜からのマシンガントークを受けていた。
「ねぇねぇ咲ちゃん、その肩に乗ってる竜って何なの? もしかして、使い魔だったりするのかなぁ? いや、それは無いか。じゃあ、魔力を使った魔力体ってヤツかな」
自問自答している雪菜を無視して、咲葉は肩の子竜にパンを食べさせる。嬉しそうにパンを食べる子竜の姿に咲葉は優しく微笑む。
「ねぇ咲ちゃん、色々と聞きたくてしょうがない事があるんだけどいいかな?」
「何?」
咲葉が短く返すと、雪菜は体ごと咲葉の方に顔を向ける。
「咲ちゃんは、本当に男子なの?」
「そうだけど」
「色白で華奢で長髪でサイズが微妙に大きい服を着てるのに!?」
「前の三つはいいとして、最後のはお前の偏見だろ」
雪菜は答えを聞かず、また自問自答を繰り返す。そして、何か答えが出たのだろう。目を輝かせて咲葉を見る。
「咲ちゃんってもしかして”男の娘”!?」
「コロナ、フレイムタン」
コロナと呼ばれた子竜が小さく鳴くと、焔の蛇が作られ雪菜を襲う。驚きのあまり、雪菜は悲鳴を上げて逃げるが、すぐに異能力を発動させて焔の蛇を消し去った。
「いきなりアレは危ないよね、死ぬかと思ったよ!?」
少し怒った様子で戻って来る。咲葉は溜息をついて雪菜を見た。
「言っておくが、俺は普通の男子だ。色白で華奢なのは、昔病弱だったから殆ど外に出れなかったからだし、髪の長さは異能力の関係だ」
呆れた様子でそう咲葉が言うと、雪菜は真剣な顔つきでメモを取っていた。
「何してんだよお前・・・」
「なっ何もしてないよ!? そっそれよりさ、咲ちゃんは異能学園戦争の一回戦で紅炎の王と戦う事になってるけど、何か対策してる?」
「はぁ? 何言ってんだよ、俺はエントリーしてないぞ」
「え? でもここに咲ちゃんの名前がかいてあるけど・・・」
雪菜の差し出した端末を見て咲葉は驚く。トーナメント表に ”一秋咲葉” と確かに書いてあったのだ。
「なぁ雪菜、俺の名前が書いてあるところが他者推薦になってるんだけど、お前の仕業か?」
「そんな事してないけど・・・」
キョドった様子でそう答えた雪菜に怪しさを覚える。
「じゃあ誰が・・・」
「私が推薦したよ」
そう言って俺の後ろに立っていたのは、理事長の奥寺藍那だつた。