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グリモワール・オンライン  作者: 灰猫
番外編 ファミリーズ
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牧場夫婦のゲーム日誌、その4

カクヨムにも投稿しております。

多くの応援に感謝の気持ちが絶えません。

 生産ギルドでお爺さんのお手伝いをする事になった私たち夫妻でしたが、そのお手伝いの内容と言うのが私たちにとって、とてもありがたい内容でした。

「ワシも歳で大分腰が辛かったから、ちょうど良い話じゃった」

「それで何をお手伝いしたら、よろしいのかしら?」

「僕に手助けできる様な事だと良いのだけれど」

「なに…庭の手入れを手伝ってもらおうと思っての」

「まぁ、ガーデニング?」

「残念じゃが、ワシは庭に小さな畑を持っておっての。…頼みたいのはそこの手入れじゃよ」

 お爺さんの家は元お城勤めと言われるだけあって、立派な一軒家にお庭が付いた。なかなかに広い土地の上に建っている。

「手始めに薬草を育てて見んかね?」

「薬草ですか?」

「うんむ。薬草は磨り潰して患部に当てる傷薬としても使われる。その他にも色々と便利な奴じゃ」「薬草って自生しているイメージがあったけど、栽培する物なんですね」

「もちろん、自生しておる薬草もあるがの。自分たちで作らんと、いつの間にか数が足らんものじゃ」

「さぁ、種植えじゃ」

 お爺さんは私たちに薬草の栽培方法だけではなく、キャベツやレタスなどのお野菜を初め、ぶどうやリンゴの様な果樹の育成知識も与えてくれた。もちろん、それが使えるのはゲームの中だけのお話だったのだけれど、私たちに親身に教えてくださったの。

「そうじゃ、シラユキちゃんよ」

「なんですか?」

 最初は信用できるか見定めるなんて悪ぶって言っていたのだけれど、それは畑の管理する知識を叩き込むための口実に過ぎなかったのだ。つまり、最初から王城の片隅にひっそりと作られたこの小さな畑を私に。

「もう知っとるかもしれんがの。冒険者ギルドから連絡があっての、なんでもゴブリンの軍勢がカルセドニーに向かってきておるそうじゃ」

「まぁ、ゴブリンって確かモンスター…」

「シラユキちゃんもヒデオミ君も畑弄りばかりで、街の外には出取らんから知らんのも無理ないかのぅ。ゴブリンは繁殖力が強く、殆どの環境で生存できる…ワシの様な戦う力に乏しい者達にとっては悪夢のような奴らじゃ」

「うーん、妻と一緒にいるのが目的だから、戦闘など門外漢だなぁ」

「あら、私を守ってくれないの?」

「いや、この身を賭してでも守るとも」

「もう…ヒデオミさんったら!」

 外部に漏らす事の出来ない研究を行う研究者は、自分が帰りたいからと言って直ぐに家に帰って来る事は出来ない。私が医者をしていて受け持っていた患者さんが、研究のテストケースにならなければ秀臣さんに出会う事も無かったのでしょうね。

 仕方がないと分かってはいても寂しいものだから、ゲームの中ででも一緒にいられて本当に嬉しいのよ。

「仲がいいことは結構なんじゃがの」

「あ、あら?」

「あ、はははは」

 夫婦そろって苦笑い。

 まだまだ新婚の気風は色あせてはいない。

「それでの、ゴブリンと衛兵やら冒険者が戦う事になるのじゃが、元々資源に乏しい国じゃ。食料を始め傷薬も恐らく足りなくなるじゃろう」

「それではカルセドニーが危険ですね…」

「幸い最近は各ギルドで新人が多数入っそうじゃから、人手は何とかなるじゃろう…が」

「が?」

「…材料が足りんじゃろうなぁ」

 作り手が増えれば、生産量は上がる。そして材料の消費する速度もまた上がるのだ。

「そこで、お主らには素早く生産できる薬草やイモ類の栽培をしてもらいたいのじゃ!」

「国からの依頼という事よね?」

 お爺さんはコクリと頷いた。

「それじゃあ、勿体ないけれど時間が掛る栽培中の果樹を撤去させて、畑のスペースを作ろうか?」

「そうね。ワイン…作ってみたかったのだけど」

「すまんのぉ」

 お爺さんはもし訳無さそうに言うけれど、私はそこまで残念とも思っていない。お爺さんにはお世話になったし、親切な街の人たちがゴブリンに襲われているのを黙って見ていたくはないわ。それに私が育てた薬草で手当てが出来るなら、医者として望むところですもの。

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