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グリモワール・オンライン  作者: 灰猫
番外編 ファミリーズ
93/168

妹様冒険譚、その4

 僕たちは今、オンラインゲームの世界で悪意と戦っている。

「カエデ!」

「任せて!」

「「ツインスラッシュ!」」

 僕とカエデとツバキちゃんは、三人で一緒に戦ってきた。

 グリモワール・オンラインにはあるシステムが組み込まれていた。それは戦闘中にHPが一定以下を下回ると装備している武装の攻撃系アーツを習得するという物である。当然、それは一度きりの物ではあったが、その機会に二人が手に入れたアーツこそ『ツインスラッシュ』であった。

 二人が同時に手に入れたツインスラッシュは、一人で使えば唯の二回攻撃に過ぎない。このアーツは、二人のプレイヤーが同時に発動する事で真価を発揮する。

「え、HPが溶けっ…」

 ツインスラッシュは、発動させた二人のプレイヤーが持つ攻撃力の合計値をツインスラッシュに加算し、二連撃を与える。正に成長するアーツとも言える強力な代物だった。

「フッー、さすが『ツインスラッシュ』ね!」

「通常攻撃のダメージに私たち二人分の攻撃力を足した二回攻撃だから…ダメージは通常攻撃6回分ね!」

「二人で使うんですから、12回分ですよ」

「まぁ、HPも一瞬で空になる訳よね!」

 いきなり他のプレイヤーから攻撃を受けてあわわと焦ったとはいっても、これだけの火力を叩き出せれば、大した脅威にはなり得ない。

「それにしても、PKに目を付けられるとはね」

「三対一で勝ち目があると思ったのでしょうか?」

「分からないけど、この程度なら僕たちだけでもよゆーだね!」

「やっぱり目立つのが原因だと思うのよね」

 都市伝説だと思っていたプレイヤーキラー。グリモワール・オンラインって運営に言わせれば、第二の地球なのだ。できない事など無い、喧嘩も商売も建国も暗殺も何をしたって良い。それが開発スタッフの望んだ第二世界。とは言えゲームという媒体を使っている以上は、年齢制限によるレーティングだとか知的財産権に因る使用不可な言語だとか、出来ない事は出来ない事で多々あるのだけれど。

 そんな中で望まれて生まれた不都合がプレイヤーキラー。いわゆるPK達である。

「やっぱり、羽根が珍しいんだよ!」

「まぁ、一番最初に目が行くもんねぇ」

「ひっぱっても取れませんし、有名税とでも思うしかありませんわ」

「ま、人目気にしてちゃゲームなんて楽しんでられないもんね」

「それより、クエスト進めようね。次はトウガラシの採取…なんでトウガラシ?」

「カエデが「こういうのはまとめて受けるもんなの!」とか言って、片っ端から採取のクエスト受けるからでしょ!」

「内容も見ないで受けるんですから、その内ゴブリンの生首採取とか受けて来そうで心配ですよ」

「もぉー、流石にそんな訳の分からないクエス…ト」

 森の中で一人の少女が叫び出すのは、この後わずか数秒後の出来事。

「えええええええぇェェ!?」

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