妹様冒険譚、その3
三人で幾つかのクエストをクリアし、レベル的にもカルセドニー周辺なら余裕が出て来た頃に尾音ちゃんがぽつりと呟いた。
「そういえばさー」
「うんー?」
「僕たちって全員、獣人族なんだよねぇー」
「そうですね~」
一見、天使のような翼を持つ有翼族。その正体は獣人族のバリエーションであり、なんのことは無いただの鳥系統の獣人族である。つまり、私たち三人は『黒猫族』『豹人族』『有翼族』となかなかに人目を引く三人組なのである。
「せっかくみんな獣人なんだから、なにかそれらしいことしたいぞー!」
「なによ、それらしいことって…」
「うーん、チーム名を決めるとか?」
「それのどこが、それらしいの?」
わざわざチーム名を付けてみた所で、誰かに名乗ることも無いのだから。
「どちらかと言うとパーティー名になるのでは?」
「それもそうか…」
しまった。椿ちゃんが、話に乗ってしまった。このままでは、いつもの流されるパターン入ってしまう。
「ね、ねぇ!」
「んぅ?」
「なんですか?」
「えー、ツバキちゃんの回復スキルって、すごく珍しいみたいだよね!」
「そうなんですか?」
よし、釣れた!
「お姉ちゃんに聞いたら、このゲームでは聞いたことないって言ってたもの。回復はポーション頼みで、回復できるスキルがあるなんて羨ましいって」
「そっかー、他の人たちは回復大変なんだねぇ。あ、通り魔みたいに手当たり次第に回復かけて回る?」
「しませんよ~。危ないですし、ご迷惑ですからね?」
「でも、珍しいのか。変な人が寄って来ても嫌だから、ハラスメント設定弄った方が良いよツバキ」
「それなら、キャラクターを作成する時に」
「あははは、釈迦に説法だったのだー」
「どっちかというと『猿に木上り』ね。まぁ、でも気を付けないとね『猿も木から落ちる』って言うし」
「ふふふ、はい」
椿ちゃんは何だか、楽しそうに笑った。




