忠臣
王城が長くなったので今回は短めです。
次からあの二人が再登場です!
遅くなりましたが、先月のアクセス数は、291,779アクセスでした。
半月ほど更新できなかったのですが、皆さんの応援のお陰です。
これからも、応援よろしくお願いします!!
長かったインフォが終わり、謁見の間から退室しようと立ち上がる。
「ああ、それから島への案内人を付ける」
「は?」
俺が求めた『土地』は、周囲を海水で囲まれた孤島。案内人と言っても、歩いて案内をできる場所にはない。
「ロックス」
「…は」
国王が名前を呼んだかと思うと執事服に身を包んだ老人が、まるでずっとその場に居たと言わんばかりに佇んでいた。
「冒険者ジンよ、そなたにこの執事ロックスと侍女クロエを案内人として貸し与える」
するとロックスの隣にメイド服に身を包んだ黒髪の少女が、日の傾きによって濃くなる影の様に色濃くその存在感を増した。彼女もまた今現れたのではない、ずっとその場に居たのだ。ただ俺に一切認知される事無く、その場にあり続けたのだ。
「…これは」
驚く俺を他所に二人は、綺麗な一礼と共に自己紹介を始めた。
「先程ご挨拶させていただきましたが、改めて自己紹介をさせていただきます。名をアイベルグ・ブーヴァン・フォンデパイン・ロックスと申します。愛称はロックスにございます。主に執事を仰せつかっておりました。王のご命令により暫らくの間では御座いますが、お供させて戴きます」
「ジン様、ご挨拶させていただきます。シャウロード・バーディン・クロエルド・ユーリアと申します。王城では侍女を仰せつかっております」
「…」
悠々と行われる自己紹介の中、俺の頭の中では疑問が飛び交っていた。なぜ案内人に執事と侍女を付けるのか、どうして案内人が必要なのか。
「困惑するのも無理はないが…この者達はそなたに必要な者達であるぞ」
「…必要、ですか?」
「然り、そなたは欲する物に『土地』と答えた。そして、そなたが欲した『スファレ』はドラゴンが住む秘境である。一般の兵士を案内に付ければ、全滅の恐れもある」
確かにファンタジーの王道であるドラゴンが『土地』に住み着いているとなると、一般の兵士では戦闘力にも行動にも不安がある。国王がここまで推してくるのだから、この執事達を信頼しているのは間違いないだろう。
「しかし、彼等は納得しているのですか?」
国王の命令だからと、いやいや従われても扱いに困る。
「…私共であればご心配なく、我らは職務に忠実でございますれば」
「…」
しかし、土地を欲して人を付けられると監視されている様で落ち着かない。
「…まぁ、考えている事は分からないでもない。だがこの二人は監視の為に派遣するわけではないぞ?」
「?」
「余としても短い期間ではあるが、この二人を手放すのは痛手なのだ。出来る事ならこの城に留まって欲しいと思うておる。だが此度の協力にそれだけ感謝をしておるという事だ」
そう言えば、ここは冒険者の国カルセドニー。建国したのが冒険者であった事で、多くの冒険者が建国に携ったそうだ。
力ある冒険者には最大の敬意を示す。それがこの国の在り方なのかもしれない。
「…分かりました。二人をお預かりします」
「うむ」
国王に一礼すると謁見の間を後にする。
後ろに付いて歩いてくる二人をどう扱ったものかと頭を抱えながら。




