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グリモワール・オンライン  作者: 灰猫
第二章 ゴブリンの襲来
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報酬の使い道

 リビングに入ると、入口で待ち構えていた楓が楽しそうに声を掛けてきた。

「兄上、ランキング一位おめでとうございます」

「ああ、ありがとう」

 今朝早くにイベントの結果が、運営公式ページから公開された。

 すっかり『グリモワール・オンライン』に夢中な楓は、早朝から結果を確認して嬉しそうに俺に笑顔を向けている。

「あら、起きたの。おはよう、朝ご飯出来てるわよ」

「ああ、うん」

 リビングでは、母さんが朝食の用意をしていた。

 椅子に腰下ろすと焼きたてのトーストを齧る。

「仁、一位になったのね。私は、二位だったわ」

「あー、うん。最後の戦いで結構ポイント稼げたからね…」

 実際の所、ゴブリンゾンビで荒稼ぎ出来たおかげなのだが、バグ技なので黙っておこう。

「母上、空腹度の実装に伴い食品アイテムの重要性が急上昇すると思われます。農家がウハウハです」

「そうねぇ、お金稼ぎにはあまり興味がないのだけれど…。お父さんが欲しいって言ってた農場、買えるかしら?」

「一体何ヘクタール買うつもりなの?」

「あ、姉上。おはようございます」

「うん、おはよう」

 挨拶もそこそこにテーブルの椅子に腰かける。

「それで…イベントの報酬何にしたの?」

「土地だよ」

「…土地?」

 訳が分からないと言う様な顔をしている姉を放置して話を続ける。

「正確には『島』とその周辺の『海』かな」

「兄上は、地主になったのですか?」

「まだ受け取ってないけど…そうなるのか?」

「でも何で土地なの?」

 いつの間にか母さんまで会話に参加しているが、気にしないでおこう。

「理由は色々あるけど…一番の理由は、活動拠点の確保だな」

「拠点?」

「兄上、クランでも作るのですか?」

 顔を見合わせる姉妹。

「今の所、そんな予定は無いけど、それも良いかもな。まぁ、貰える土地を見てみないと何とも」

 拠点を作るのは良いとしても場所を見ないと難しいし、とこれから手に入れる拠点の事を考えるだけで一日中ニヤニヤと気持ち悪い顔を作る事になった。


                      ♪


≪イベント『ゴブリンの襲来』クリアおめでとうございます≫

≪イベントクエスト報酬『島及び周辺の海域』は、冒険者の国カルセドニー王城より受け取りが可能です≫

≪イベントランキング一位、おめでとうございます≫

≪イベントランキング報酬は、メニューのプレゼントボックスから受け取りが可能です≫


 ログインするやいなや、インフォメーションが続く。

「…取りあえずは、王城か」

 とは言え最後にログアウトした場所は王城の庭なので、今ログインした場所は既に王城の中なのだが。

「物が物だから受け取るのは、国王からかな」

 しかし、既に城壁の中にいるのだが、取り次いでもらえるものなのだろうか?

 もしかしたら、不審人物として捕まるのではないだろうか?

 不安を覚えつつも城内に向けて足を動かす。

 丁度良い機会なので、帰りには城の中を少し見学しよう。

 警備の兵や侍女さんとすれ違ったので、呼び止めて謁見の間まで案内してもらった。

 しかし、この侍女。

 どこかで見た覚えがある気がする。

「こちらが謁見の間でございます。私どもは許可がない限り、この奥には進めませんので…」

「ああ、案内ご苦労だった」

 侍女は一礼するとその場で反転し、自分の仕事に戻って行った。

「受け付けは…ないな」

 考えて見れば謁見の間にたどり着くのは、受付を終わらせた者達である。近くに受付が在るわけがない。

「そのまま入ったら、不敬罪とかで捕まりそうだな」

 だが受付を探すのも面倒だ。

「いえいえ、そのような事は御座いませんよ。既に連絡が入っておりましたので、陛下は既に奥でお待ちの筈です」

 声を掛けられるまで、その存在に全く気が付かなかった。

「…誰から連絡が?」

 内心の動揺を悟らせないように話を逸らす。

 俺に声を掛けて来た男は、執事服の様なものを着用している。

「先程、こちらまで案内をいたしておりました侍女からでございます」

「へぇ」

 案内してきた侍女と言うと、今仕事に戻って行ったあの侍女の事だろう。

 離れて直ぐに報告をしたのだろうか?

「ご存知の通り夜郷族は、高いステータスが自慢の種族ですので…」

「彼女は、夜郷族だったのか…」

 何となく見た事がある気がしていたが、キャラクターメイキングの時に見た自分の顔に良く似ていた。

 獣人族の様に外見に大きな特徴のある種族などは、種族選択後に耳や尻尾などのパーツが付けられた素体が現れ、そこから顔を始めとした容姿の設定に映るのだそうだ。俺の時は引き継ぎだったので基本になる容姿に種族パーツを付けるだけで良かったのだろうとそう思っている。

 夜郷族は昼間に弱い以外の目立つ特徴はない。

「我々夜郷族には、目立った特徴がありませんからなぁ。良く人族と間違われるのですよ」

「では、貴方も?」

「これは、ご紹介が遅れました。わたくしこの城で執事の真似事をしております。アイベルグ・ブーヴァン・フォンデパイン・ロックスと申します。呼びにくいようでしたら、気軽にロックスとお呼びください」

「……分かった」

「それでは、奥にいらっしゃいます陛下の元までお送りいたします」

 奥に進むにつれて、靴の音がコツコツと周囲に響く。

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