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グリモワール・オンライン  作者: 灰猫
第二章 ゴブリンの襲来
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運営の苦悩

「どうにか…なったな」

「でもタイミングが悪かったね。いやー、一時はどうなる事かと…」

 我々『グリモワール・オンライン』運営チームは、モニター越しにイベントを観戦していた。

 開戦当初こそ、予定通りにカルセドニー軍の攻撃が始まったものの予想外の事態が起きた。

「戦争に参加せずにいたプレイヤーを巻き込む為に、モンスターを門前に出すようにしたのに。設定が終わった直後出陣しましたからね…」

「四日目の予定が三日目に食い込むところだったな」

「騎馬隊も危ないところでしたけどね」

 完全に包囲され、後は殲滅を待つだけだった。

「まぁ、あの出陣組のお陰で全滅はしなかったから良かったんですかね?」

「予定では、初撃の突撃でバラバラになったゴブリン軍をプレイヤーが、討伐していく筈でしたよね。やっぱり例の影響ですか…」

 男がわざとらしく、顔を手で覆う。

「あー、ポイントのシステムな。お前、手抜きしただろ?」

「面目ないです。死霊使いのスキルを見落としていました…」

「でもさ、【下僕召喚】以外のスキルでもゴブリンは出せたんじゃないの?」

「そうだな。モンスターのゴブリンを捕獲するスキルやモンスターその物を作り出すスキルがあるからな」

「ううう」

 あるプレイヤーのゴブリンゾンビによる貢献ポイントの荒稼ぎ。今回のイベントで起きた危機的状況は、この行いが原因の大まかな部分を担っていた。

「良いアイデアだと思ったんだよなー。全プレイヤーの総合貢献ポイントで、イベントの後半。ゴブリン軍との戦争開始後の難易度が変更されるって」

「前半の準備期間で、始めたばかりの初心者プレイヤーや生産職のプレイヤー達が活躍できる環境を作る。その前半で稼いだポイントで、戦闘職の難易度が決まる。現状、生産と戦闘職のバランスは、戦闘職に傾いているのでイベントは十分クリアできるレベルに収まる筈だったのですが…」

「二日目の荒稼ぎで、難易度が跳ね上がったね。尤も大量の野菜投入で、既にある程度ポイントはたまっていたけど」

 バグ技であろうとそのプレイヤーを責めることは出来ない。

 そのプレイヤーは、頭を捻って知恵を出したに過ぎないからだ。

 文句があるなら出来ない様にすれば良いのだ。それが出来るのが、運営なのだから。

「悪いのはポイントの設定だよな。敵対していないゴブリンは、ポイント対象外にしとけよ。亜人のゴブリンまで討伐されるぞ!」

「す、すいません」

「まぁまぁ、今問題なのは、イベントの難易度でしょう?」

「あー、そうだった」

 前半の準備期間で溜まったポイントは、実に5万に及んだ。

 本来想定されていたのが、3万だった事を考えると難易度はかなりの物だ。

「予想のポイントより、結構上だな」

「ランキングが裏目に出ましたかね…二日目の【下僕魔法】以降、高ポイントのゴブリンがいると言う噂が出回って、競うようにポイントが増えましたし…」

「難易度は、最高レベルですね…」

「最初のイベントだし、そこまで難しい要求はしてないはずなんだが…」

 モニターに『ゴブリンの襲来』の難易度一覧が表示される。

「え…?」

「これで……難しい要求はしてないですか?」

「うーん、どうしような?」

「カルセドニー…残りますかね?」

「あー、それは大丈夫。今回のイベントでは、街の一部が壊れるまでしか予定していないからな。国が潰れる事はないよ」

「「はぁー」」

 安堵か呆れか、気の抜けた二人は椅子に腰を下ろす。

「でもここまでポイントが高くなると報酬の方も色を付けてやらないとな」

「そうですね…システム、開放しちゃいましょうか?」

「それだ!」

「なるほど…だったらコレなんてどうですか!?」

 モニターに新しい報酬が、追加されていく。

 クリア後の報酬は、システムの開放。そして開放に伴って追加されたあるアイテム。

「報酬は追加された…さて、ストーリーの裏側には、誰が気づいてくれるかな?」

「ストーリー気にして欲しいですよね」

 徹夜の残業でテンションがおかしい運営の三人は、後になって減給を言い渡されるのである。

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