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グリモワール・オンライン  作者: 灰猫
第二章 ゴブリンの襲来
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衝突

 掲示板から新しいイベントクエストを受けて、数時間が経過した。

 カルセドニー軍はその時間を使って、人員の確認や物資の供給などの最終確認が行われていた。

 一方プレイヤー達はその間、時間を持て余していた。何しろカルセドニー軍が、軍備の最終確認をする為に掛かる時間が不明瞭だったからだ。

 俺はその時間を使って、ステータスの確認や掲示板を眺めて過ごした。

 ゴブリンゾンビを召喚して、攻撃魔法を何百発も撃ち込んでいた為に幾つかスキルのレベルが上昇していた。

 掲示板を流し読みしていると如何にも騎士といった風貌の男が、声を張り上げ大きな声で号令を発した。

「これより、外壁に纏わり付く魔物の軍勢との戦闘を開始する!!」

「「「「おおおぉぉぉぉぉ!!」」」」

 宣言の声に応じて、兵士達は雄たけびを上げる。

 また騎士が号令を発すると、外壁の門が口を開いた。

「突撃ィ!」

 門が開け放たれるとゴブリンの陣営に向かって、突撃の指示を出した。

 兵士たちの雄たけびで、大気が震える。

「さて、俺も行くか…」

 数時間も待ったお陰で、HPの数値が正常値に戻っている。これで不意打ちや流れ弾に怯えずに済む。

「『サモン』『召喚』『魔装化』」

 召喚するのは、ゴーストと黒猫だけだ。ここでゴブリンゾンビを召喚すれば、間違いなく一騒動起きてしまう。

 俺達プレイヤーの役割は、遊撃の一言に尽きるだろう。まだクランは実装されていないし、人を引き付ける有名プレイヤーも台頭していない。結局のところ出来る事が、他にないのだ。

 そんな事情もあってプレイヤーの戦争参加は、カルセドニー軍の突撃後となる。

「…おお、激しいな」

 カルセドニー軍の突撃の様子を窺っていたのだが、戦闘の騎馬が陣営に食い込んだと思ったら一気に中央までの道を切り開いた。

 三国志や戦国時代の戦いは、これ程までに激しいものだったのだろうか。集団の力というものを見せつけられたな。

「攻撃対象はゴブリンだ、間違うなよ。…行け!」

 召喚モンスター達は、俺の指示を受けて戦場に乗り込む。

 軍の突撃が成功したのなら、次は俺たちの番だ。精々暴れまわってやろう。

 門を走り抜け、混乱するゴブリン軍に接近する。

「シッ!」

 一閃を描く様に大鎌を振りぬく。

 ゴブリン達は良い感じに混乱している様だ。

 個人ならまだしも、軍としての対応は出来ていない。

「…『パラライズエッジ!』ゴブリンナイトか…」

 貢献ポイント5のモンスターで、ジェネラル程ではないが厄介な相手だ。

「『ダークランス』…チッ、パーティか」

 ゴブリンナイトの後ろには、杖を構えたゴブリンソーサラー。姿を隠すように弓に矢をつがえるゴブリンアーチャー。そして集まってくるゴブリン。

 ゴブリンナイトの厄介な性質、それがモンスターのパーティだ。

 通常のモンスターは、同種族でも戦闘時に集団となる事はない。しかし、ゴブリンナイトの様に同種族への指揮権を持つモンスターは別だ。この指揮権を持つモンスターは、同種族のモンスターに指示を出すことが出来る。その為、配下のモンスターを集め集団化しパーティを作る。冒険者が組む、パーティと同じ様に。この指示権をより上位のモンスターが持つことで、パーティから巣に巣から集落にとグレードアップしていく。

 今回の戦争相手、ゴブリン軍の総大将ゴブリンキングが指揮権を持つことで、軍にまで集団が膨れ上がったのだろう。

「ギギ!」

 咄嗟に回避を試みるが、ゴブリンナイトの攻撃を躱したところにゴブリンアーチャーの矢が飛来する。

「連携…厄介だな」

 指揮権を持つモンスターにも因るが、この集団の最も厄介なところはその連携にある。

 集団のトップである指揮権を持つモンスターが、指示を出すことによって信頼性の高い連携攻撃を可能にするのだ。

「ギギ…ギ!」

「…おっと。ゴブリンとゴブリンナイトを前に出して、ゴブリンアーチャーの弓で牽制。隙を見てゴブリンソーサラーの魔法攻撃か。厄介だな」

 だが強力な指揮権にも弱点はある。

「『ダークノア』『ウインドボール』」

 最初に指揮権を持つモンスターを倒せばいいのだ。

 指揮権を持つモンスターを倒されると集団のモンスターは、数分の間バットステータスを受ける。その間は動きが遅くなるので、好きなだけ攻撃をプレゼントしてやれば集団は壊滅する。

「ギギーー!」

「『スロウ』」

 ゴブリンナイトの指示で前に出たゴブリンに魔法をかける。

 ゴブリンに構っている暇はない。

 時間をかければ、ゴブリンソーサラーの魔法が飛んでくる。

「…いたゴブリンナイト。『ポイズンエッジ』」

 ゴブリンを目暗ましに指示を出していたゴブリンナイトを大鎌で叩き切る。

「ッギ!」

 大鎌の攻撃にゴブリンナイトが膝を付いた。

 放っておいても状態異常の毒が、ゴブリンナイトのHPを削りきるだろう。

「他のゴブリンに治療されると面倒だ。『ダークランス』」

「…ギ」

 ゴブリンナイトが光となって消失する。

 後はゴブリンパーティを叩くだけだ。

「指揮官を倒して、部下を楽に始末する…趣味じゃないんだけど…『アースグレイブ』」

 動きの止まったゴブリンパーティの立つ地面が割れ、そのままゴブリンパーティは大地に呑み込まれて行った。

 喫茶店でケーキを頬張りながら考えた呪文の一つだ。

 攻撃用の土魔法を考えたのは初めての事だったからか、広範囲ではなく範囲魔法だった。もしかすると消費MPの問題なのかもしれないが。

「…次、行こうか」

 ポーションで回復を行いながら、次の獲物を求めて歩き出した。

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