イベント、ルール説明
先ずは説明担当の話を聞こう。
そう思い立って歩き始めたのだが、無理が在ったかも知れない。
前に進もうとしても、人混みが邪魔でなかなか前に進めないのだ。
そもそも掲示板を調べれば、説明担当から聞いた説明を誰かが投稿していてもおかしくないのだ。
柄にもなく興奮でもしているのだろうか?
人混みに流されること数分、プレイヤーの集まる区画を見つけた。
「…ふむ」
区画内に足を踏み入れる。
どうも見覚えのある姿だ。
「警備隊長?」
彼に最後に会ったのは、彼が盗賊のボスを取り逃がした時だっただろうか。
「ここに来たという事は、既に説明を聞いて来た冒険者だな。私は警備隊の隊長を務めているサイルだ。もし説明を受けていないのなら今説明するが、どうする?」
「ああ、説明を頼む」
警備隊長は俺の事を覚えていない様だ。
知らない振りをしているのかも知れないが、恐らくイベントが関係しているのだろう。他のプレイヤーが多数関わるものであるし、ある程度の地位があるNPCには余計な言動を控えさせているのだろう。
少し寂しい気もするがな。
「何度も説明している時間はないので、一度で覚えてくれ。先ずはこれを受け取ってくれ」
そう言って手渡されたのは、赤色のカード。
「これは?」
「そのカードは、功績ポイントを貯めるカードだ。君達、冒険者は軍人としての訓練は受けていない。従って、基本行動は支援となる」
俺の様に戦争を知らない世代は、軍事行動を取れるだけの訓練を受けたことが無いからな。
精々避難訓練が関の山だ。
「ふむ」
「支援と言っても戦うなと言っている訳ではない、敵の数を減らしてくれるなら大歓迎だからな。要は戦うにしても、こちらの指示を仰いで欲しい訳だ」
「…なるほどな」
勝手な行動で作戦が失敗に終わっては、話にならないって事だろう。
「そこで我々警備隊が、冒険者達に現在必要としている事態の解決をクエストとして発行する。例えば自軍の食料を運搬するなどだな。このクエスト等を達成する毎に、先程渡したカードにポイントが付与される」
「ポイント?」
「それは、国王陛下が下されたクエストの報酬に関係する。今回の様な大勢の冒険者にクエストを発行する場合、全員に均等に報酬を出すのは非常に困難だ。その為、順位を付ける」
その順位を決める方法がポイントであると。
「ポイントが多い者は、それだけ貢献したという事だ」
つまりはイベントランキングである。
上位成績者には、豪華な賞品が贈られる訳だ。
国側は良く考えたのではないだろうか?
ポイントを競ってクエストをやってくれれば、それだけ国は助かる。クエストを幾ら吹っかけても報酬が増える事もない。
「カードは盗まれたりしないのか?」
「カードは魔道具になっている、当然持ち主の識別が可能だ。そうでもないとポイントの増減が出来ないからな。ただ、国王陛下が出されたクエストが終了すると同時にカードは我々に転送される。わざわざ返しに来る必要はないぞ」
「わかった」
その言葉を最後に警備隊長は説明を終える。
クエストの一覧は何処で確認するのだろう。
そう思っていると警備隊長の傍に掲示板が出現していた。
「カードがないと見えないとか?」
RPGで良くあるお使いクエストを思い出した。フラグを立てないと先に進まないアレである。
早速、掲示板のクエストを確認する。
「武器の製造、防具の製造、ポーションの製造、食料の運搬」
どれも軍を維持するには、大切な事だろう。
生産がメインのプレイヤーに対する配慮なのだろう。
だが俺は戦闘がメインである。別に一つの事に拘る気はないが、今は戦闘がしたい。
「…これ、分りやすいな」
討伐系クエストは、一つだけだった。
倒せるだけ倒せ ランク不明 報酬貢献ポイント
軍同士の衝突が起きる前に少しでも敵の数を削れ!
ポイント一覧
・ゴブリン(1ポイント)
・ゴブリンアーチャー(2ポイント)
・ゴブリンソーサラー(2ポイント)
・ゴブリンナイト(5ポイント)
・ジェネラルゴブリン(20ポイント)
・ゴブリンキング(100ポイント)
・その他のゴブリン(3ポイント)
好きに戦って、敵の戦力を削り取れという事だろう。知らない種類のゴブリンも複数存在するのだが、ゴブリンキングは総大将じゃないだろうか。
「作戦行動中じゃなければ、好きに戦えと…僕等は使い捨てか?」
いつの間にか隣に立っていたキザっぽい男は誰だろう?
「僕は負けない、必ずこの国を救ってみせる!!」
大声で何やら宣言するとそのまま城外へ出て行ってしまった。
俺だけではなく、他のプレイヤーも何言ってるんだコイツと思ったに違いない。
「俺は俺で狩りをして過ごすか…」
折角の正式版、初イベントだ。楽しんで楽しんで楽しみ抜いてやろう。




