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グリモワール・オンライン  作者: 灰猫
序章 クローズβ
20/168

公式イベント後半戦 前哨戦と決戦と

色々とがんばって書いたけど誤字ありそう?

見つけたら教えて欲しいです!

「シッ!」

 大鎌で触手切るも切った傍から再生してている気がする。

 識別を使用せずとも(アリア)の情報が表示されている。イベントボスの仕様なのか、レギオンの仕様なのかは不明だが今はありがたい。


 隠滅のアリア レギオン レベル30 ランク8


「…アイスバレット!」

 本体への攻撃が一番有効の様だが、まだまだ手数が足りない。

 チラホラと他のプレイヤーが参戦しているが、まだ20人弱といったところだ。

「おらおら、『こっちだ!』」

 タンク型のプレイヤーがヘイトを稼ぐ。

「ファイアーボール!」

「アクアバレット!」

「アースバレット!」

 魔法職プレイヤーが連携を取り始めた。

「クッ」

 巨大イカの攻撃は触手だけではない。何もない空間から水の槍を飛ばしているのだ。

 被弾するとHPを半分ほど持って行かれる。

「スラッシュ!」

「…『こっちだ!』」

 どうにか連携をするも彼奴の巨体は揺るがない。

「セイッ!」

 切、躱し、受け流す。

 感情を捨て、冷徹に状況を整理する。

 プレイヤーが三人光になって消えた。ボスのダメージは軽微。

「触手への攻撃は、妨害止まり。持久戦なら、それでもいいか…」

 戦闘開始から裕に一時間が経過した。

 どうにか一本目(・・・)のライフを削りきった。

 残り四本・・勝利は遠い。

「姉さん」

「何?」

「そろそろ、夕食の時間だ」

「…でも」

 姉さんの言いたいことは分かる。自分たちが見つけた手前、放って置けないのだろう。

 イベントの期間を考えると、途中ログアウトするのは必然なので俺は気にしない。

「大丈夫、交代で休憩に入るだけだよ」

 どうせ直ぐ戻ってくるしね。

「分かった」


                       ♪


「兄上、夕食の時間で…起きていましたか」

「昨日の今日だからね」

「本日の夕食は、ビーフシチューです」

 適当な雑談を繰り返しながら、リビングへ降りる。

「ああ、ジン。今日は時間通りなのね」

「さすがに毎日じゃないよ母さん…なんで知ってるの?」

「楓に聞いたの」

 楓の方を見ると席について足をブラブラしていた。

「それは昨日やったから良いの!」

「あら、七海。今日は一番最後ね」

 いつの間にか降りてきていた姉さんが、唇をとがらせている。

「今日、父さんは?」

秀臣ひでおみさんなら、まだ研究所ね。立て込んでるらしいわ」

 父、東堂秀臣は脳科学を専門にしている研究者だ。母も元女医なので、知り合ったのは病院辺りだろう。

「父上はお忙しいのです」

「楓はお父さん好きねぇ」

 普通は父親は娘に煙たがられるものだが楓の場合、家族大好きな子なので関係なかったな。

「早く食べようよビーフシチュー」

「はいはい」

 女三人寄れば姦しいとはよく言ったものである。

「じゃ、いただきまーす」

「「「いただきまーす」」」


                     ♪♪


 夕食のビーフシチューを堪能した後、早速ログインする。

「戦況はどうだ?」

 MPを消費し戦線を離脱したプレイヤーに声をかける。

「そうですね…厳しいです。残り二本まで追い込んだ途端に、体表が赤いのに染まってパワーアップしました」

「パワーアップ?」

 俺が疑問の声を上げると隣で休んでいた、小柄な女性プレイヤーが会話に乱入した。

「そうなの、攻撃しないと回復しちゃうの!」

 HPの自動回復かな?

「それは、また…」

「β最初で最後のイベントですからね。まだ隠し玉があるかと思いますが…」

「いや、助かったよ。さて復帰しますか…」

「あ、帰還組の方でしたか、それなら生産職の人達が補給を請け負っています。行ってみてください」

 俺が離れている間に色々と進展していたようだ。

「ありがとう。行ってみるよ」

「またね~なの!」

 教えてくれたプレイヤーに軽く手を振りその場を離れる。

 生産職のプレイヤーに合うのは初めてだ。

「すいません、ここで補給をやっているんですか?」

 戦闘エリアである港から少し離れたところにテントが張ってあった。テントに大きく補給の二文字か書いてあったので間違いないと思う。

「おうよ、ここが補給所で間違いねぇ。何が欲しいんだ?」

 俺の声に答えてくれたのは、肌色の頭部が光る如何にも鍛冶屋という体をした男だった。

「取りあえず回復アイテムですね」

 特に何かを欲してやってきた訳ではないが、ボス戦にあって困らないので要求してみる。

「おう、MPポーションはもう数が少ねぇ。大事に使ってくんな」

「ありがとうございます。あれ、料金は?」

「あん…ああ、掲示板をみてねえのか」

「掲示板ですか?」

「おうよ、コルはβから引き継ぎは出来ねぇってんで、みんな大盤振る舞いなのよ」

 その言葉を聞いて納得した。

 なにせ最後のイベントなのだ。手元にコルが残っても意味がないと判断したのだろう。

 その為、掲示板で無料配布に至った。

「なるほど」

「アンちゃんも活躍して、正式版にでも贔屓にしてくれや」

 背中をバンバンと叩かれる。

「痛いですよ。じゃあ、行ってきます!」

「おうよ!」

 では帰ろう、戦場へ。

「ギヤャャャャ!!」

 戦闘エリアに足を踏み入れるやいなや、巨大イカの咆哮が響き渡った。

「口…どこにあるんだろうな?」

 どうでもいいことを考えている間にも、他のプレイヤーの奮戦は続いている。

「魔装化!」

 大鎌を構え飛び出す。

 確かに体表が赤くなってからパワーアップしている様だ。触手の威力が上がっているし、水攻撃のパターンも増えている様だ。

「厳しいな…」

 だが無理という訳でもない。

 触手を切れば援護になるし、本体を直接攻撃したっていい。

 躱し、躱し、受け流す。

 此方に迫る触手が増えた気がする。

「シッ!」

 大鎌を横に一線。触手三本が一度に吹き飛ぶ。

 HPはお互いにジリジリと削れていく、援護を受けて体制を整える。

「大丈夫か!?」

「少し余裕が出来た、感謝する」

「はぁ、回避盾は良いが連携しないと持たないぞ」

 注意をするそのプレイヤーは、呆れ顔で杖を構えている。

「俺はサンガ。お前は?」

「…ジン」

「そうか…ジン。俺と組まないか?」

 話を聞いてみるとそのサンガは水属性の魔術使いらしく、巨大イカと属性相性が良くないそうでパーティ参加は諦めていたそうだ。どうせソロ同士なら、と俺を誘ったらしい。

「いいよ、こっちも援護がないと辛かったし」

「よし、決まりだ!」

 再び大鎌を構える。

「奴のHPは…残り一本半か」

「絶対残り一本になったら何かあるよなぁ」

「だな」

 実のない話をしながら、触手を相手に連携を確かめる。

 俺が受け流した所にアクアカッター、後ろに跳び引いた所にアクアボールでノックバック。

「これなら行けそうだな」

「相性は悪くないな」

 その言葉を最後に本体への攻撃を開始する。

「セイッ!」

「アクアバレット!」

 魔術の相性が悪いのは本当のようで、MPを抑えたバレット系呪文で触手を牽制している。

 本体を切り付けるも不思議な手応えに首を傾げる。

 やわらかい。

 この一言に尽きるのである。

 触手を切った時も柔らかく感じたが、これは不自然だ。

 やわらかく感じているのに殆ど刃が通っていないのである。

「なんだっ?」

 二回三回と繰り返し、切り付ける。

「…アクアボール!」

 サンガの周りに触手が集まってきている。一旦離れるべきだろう。

「サンガ離れるぞ!」

「おう!」

 他のパーティと入れ替わるように本体の傍を離れる。

 巨大イカとの戦闘の証か石造りの港は見る影もない。

「はー、かてぇなー」

「そうだな、柔らかい様でいて刃が通らん」

 サンガにMPポーションを渡しながら戦術を練る。

「大体今のでどれくらい削った?」

「周りからも攻撃してんだから、分かんねえよ」

「そうだな」

 言葉を零しながら、アリアのHPバーを見る。

「そろそろ、一本か?」

「ああ、残り一本だな。離れておこう」

「そうだな」

 瀕死からの強化はお約束である。ゲーム好きの俺はそれを良く理解していたので、戦闘エリアから離れる事にした。

「ギシヤャャャャャ!!」

 残りHPバーを一本切ったところで『隠滅のアリア』は咆哮を放った。

「激昂常態か?」

「そうみたいだな…何か港崩壊してね?」

 咆哮を放ってから攻撃力が格段に上がったのは間違いない。タンクの人が大盾で受け止めようとして、死に戻っていたのだから間違い様がないのだ。

 気になるのは攻撃対象に港が追加されているのかだが。

「そう言えばさ」

 現状を訝しんでいるとサンガが声を発した。

「なんだ?」

「イベントの最初って『隠滅のアリア』を発見しなかった場合、街が消滅するんだったよな?」

 その言葉を聞いて可能性に思い当たる。

「おい、まさか。コイツの攻撃対象には、元々街が含まれていたって事か!?」

 可能性はあると恐る恐る頷くサンガから視線を外し、『隠滅のアリア』を睨む。

「厄介極まるってか…」

「死に戻り覚悟でやるしかねえな。他に村すら発見されてないんだし」

「街が無くなったら、正規版どうなるんだろうな?」

「開拓からスタートじゃね?」

「それで出来た街にフリーボスが襲来して…か」

 どっちも御免こうむる事態だ。

「行くか」

「ああ、MPも回復したしな」

 俺たちは再び、戦闘エリアに踏み込んだ。

 崩壊を始めた港は、足場がとても不安定だった。

 サンガは遠距離が主体の後衛職だから問題はないが、近距離で戦う俺には不利だ。

「ハァ!」

 だから俺にできる事は、後衛の護衛に留まる。

「これはMP使い切った方が良さそうだ。ウォーターランス!」

 目指すは短期決戦。

 勝利が目的ではない、少しでもHPを削る事が目的なのだ。

 時刻は既に日をまたぎ、人々が仕事や学校に向かうような時刻となっている。

   そんな折、俺は目の前で暴れまわる『隠滅のアリア』を睨んでいた。

 戦闘開始から、既に一日が経過している。

 昨日は結局倒し切れず、サンガがやられて別れてからお互いにログアウトとなった。

 現在は掲示板の呼びかけで継続戦闘のローテーションが組まれている。お蔭で自動回復の効果は気にしなくてもよくなったが、まだまだHPバーは残っている。

 街の状況はギリギリだ。

 港周りが全壊した為、現在の戦闘エリアは街の中央から少し外れたところだ。

 プレイヤーがいる間はプレイヤーを狙って攻撃するようで、なんとか街への被害を抑えられている。クローズβ終了まで、約十時間。そのあとは街が消滅することだろう。

「そろそろ、行くか」

 すっかり手に馴染んだ大鎌を手に駆ける。

 激昂発動後、攻撃は全て回避している。当然、俺の体は大盾ほど頑丈ではない為だ。

「っと」

 巨大な『隠滅のアリア』と戦うには、建物の上に乗って屋根を飛び回る方が効率が良い。足場がやや不安定だが贅沢を言っていられない。

「シッ!」

 短く息を吐きながら大鎌を振るう。

 触手を切り落とし本体に迫る。

「フン!!」

 一撃を放つと直ぐに下がり、触手を躱す。

「ギィィィィ!」

 何もない空間から、変則的に水弾をばら撒く。

「クソッ!」

 攻撃を躱すことに成功したが、街の地面に幾つか穴が開いた。

「魔術と威力が段違いだな…魔法?」

 ふと自分のステータスを確認する。


名前  ジン

性別  男

Lv  10★

HP   47

MP   60

筋力  11+1(12)

体力  13+1(14)

器用  21+4(25)

精神  16

知力  16

俊敏  8

運   15

ボーナスポイント 0


グリモワール 収録の魔導書 (グロノス)


装備    『グロノス(大鎌)』 白鉱のナイフ 探索者のベルト


所持金    250コル


スキル   【鑑定Lv4】【魔書術Lv11】【採取】【採掘】【調薬Lv2】

      【幸運】【風魔法Lv1】【識別Lv1】【召喚Lv3】【剛力】

      【巧み】【鍛冶Lv1】【皮革Lv1】【木工Lv1】【調理Lv1】

      【道具Lv1】【伐採】



称号     『始原の魔道』『第100中階位の魔導書』『魔蜂の打倒者』『ダンジョン攻略者』

       『レアハンター』


収録の魔道書


名称   グロノス


形態変化 大鎌


階級   第100中階位


タイプ  万能


能力  【コレクションカードLv3】【カード化】【魔物図鑑】


 俺はスキルの書を使って【風魔術】と【風魔法】を覚えた筈だ。

 しかし、ステータスには【風魔術】の記載はない。恐らく、【風魔法】が【風魔術】の上位互換当たるからだろう。

「魔法なら対抗できる…?」

 しかし、呪文の記載はない。

 頼るなら召喚だろう。

 召喚もレベルが上がっているから、グレートビーを召喚できるだろう。

「ッ!」

 突然地面から現れた触手をギリギリで回避に成功する。

「また意識が逸れてたな…」 

 HPバーは半分を切って、徐々に追い込み始めている。プレイヤーが、増える時間帯に入ったのだろう。

「【召喚】!」

 グレートビーを召喚し攻撃を指示する。

 グレートビーと時間を空けて攻撃に移る。

「ハァ!!」

 水弾を躱し本体を切り付ける。

「まだまだ!」

 一撃また一撃と切り付けて、後ろに跳ぶと同時に水の槍が飛んでくる。

 躱し、切り付け。

 いつしか時を忘れて攻撃を続ける。

「残り時間……一分か」

 『隠滅のアリア』のHPパーは残りあと僅か。

「…この時間で俺にできるのは、全力で振り下す事だけだな」

 建物の屋根に駆けあがると飛び降り、柄にもなく大声を上げ全力で大鎌を叩きつける。

「喰らえぇぇぇぇ!!」


≪クローズβ版テストが終了しました≫

名前  ジン

性別  男

Lv  10★

HP   47

MP   60

筋力  11+1(12)

体力  13+1(14)

器用  21+4(25)

精神  16

知力  16

俊敏  8

運   15

ボーナスポイント 0


グリモワール 収録の魔道書 (グロノス)


装備    『グロノス(大鎌)』 白鉱のナイフ 探索者のベルト


所持金    250コル


スキル   【鑑定Lv4】【魔書術Lv11】【採取】【採掘】【調薬Lv2】

      【幸運】【風魔術Lv1】【識別Lv1】【召喚Lv3】【剛力】

      【巧み】【鍛冶Lv1】【皮革Lv1】【木工Lv1】【調理Lv1】

      【道具Lv1】【伐採】



称号     『始原の魔道』『第100中階位の魔導書』『魔蜂の打倒者』『ダンジョン攻略者』

       『レアハンター』


収録の魔道書


名称   グロノス


形態変化 大鎌


階級   第100中階位


タイプ  万能


能力  【コレクションカードLv3】【カード化】【魔物図鑑】

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 文脈的に主人公平日なのに学校行かずにイカと十時間激戦したみたいけど、ママ怒らないの?(´・ω・`)
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