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グリモワール・オンライン  作者: 灰猫
七つのダンジョン編
155/168

二点の頂を目指して

見捨ててないでくれてありがとう

 慌てて駆け出して行ったゴブリンを追いかけて辿り着いたのは、住居が立ち並ぶ小さな農村。外敵の侵入を拒む木製の柵に周囲を囲まれ、唯一の出入り口は出入りがあって間もないのかまだ開いていた。

「ニンゲン…我らの集落に何の用だ!?」

 長槍を構えた二人の番兵は、周りに知らせる様に大声を轟かせ警戒心を露にする。

「緑色の肌…ゴブリンか?」

「だったらなんだ!」

「気を付けろ…また突然襲い掛かって来るかもれん…」

 ゴブリン族の番兵が長槍の穂先をこちらに向けて、迎撃の構えを取る。

「何を警戒しているのか知らないが、俺に抗戦の意思はない」

「何も言わず襲い掛かって来るやからよりはマシのようだが、信用ならん!」

「この頃、グリモワールを所持した人型の生物の目撃情報が上がっていたが…」

 番兵の目がギロリと光る。

「俺は薬草探しを手伝ったゴブリンの後を追いかけて来ただけだ」

「…もしかしてゾローリか?」

 覚えがあったのだろう番兵の一人が動きを止めた。

「ゾローリならば…確か薬草を抱えて走っていた」

「何故ゾローリ後を追ったのだ?」

 構えを解いて話を聞く気になってくれている内に、こちらの害意が無いのを理解してもらわなければ。

「レモングラスと言う薬草を探していると聞いてな。それを探す手伝いをしたのだが、そのゾローリがレモングラスを摘み取るや否や駆け出して行ってしまったのだ」

 その言葉を聞き、大袈裟に肩を落として見せた。

「そうか…ゾローリがな。奴は元々注意力が散漫な奴なのだが、事態が事態だけに平静ではいられなかったのだろう」

「薬草を見つけ出してくれたのなら、集落の恩人だ。ゾローリに確認が取れるまで集落に入れる訳にはいかない。申し訳ないが、ゾローリを呼んで来るまで待っていてくれ」

 ゾローリが連れて来られるしばしの間、一人残った番兵との会話の無い静まり返った門前で夜風が草木を揺らす音だけが耳に残響した。

「ご、ごめん。忘れてたっ」

 見覚えのあるゴブリンが、申し訳なさそうに俯きながら門の中からやって来た。

「確認が取れた様で何よりだ。…ところで、どうしてあんなに慌てて走って行ってた?」

「や、薬草を早く届けたかったんだ。井戸に毒を投げ込まれて、水を飲んだ仲間がお腹壊しちゃったんだ」

 井戸に毒を投げ込まれて、腹痛程度で済むのかとゴブリンの毒に対する抗体があるのかも知れないな。

「それで薬草を求めていたのか…」

 すっかり警戒心を無くした番兵が、呆れ顔で口を開いた。

「なんだ、理由も聞かずに手伝っていたのか?」

「お人好し…という奴か。恩人を夜更けに追い出す訳にもいくまい…名もなきゴブリン族の集落へようこそ」

 ゴブリンの守衛でジンに槍を突き付けた見張り役のゴブリン、ダンペイさんが気を使って一晩の宿を手配してくれた。

 宿泊所への移動中に気になっていた井戸の話を切り出した。

「しかし、井戸に毒など…いったい何者が?」

「決まっている例のグリモワールの宿主共のどれかだ」

 以前の大規模イベント『ゴブリンの襲来』でゴブリン(イコール)モンスターとプレイヤーが認識したのは理解できる。動画などでイベントを見た第二次プレイヤー流入、掲示板のログに残るゴブリンとの戦いをレクチャーする初心者応援など、ゴブリンをモンスターと認識するプレイヤーが多数存在するのは無理のない事なのだろう。

 そのしわ寄せが平穏に暮らしているゴブリン族に降りかかって、良くない影響が出ているとは精神衛生に悪い話だ。

「アメシストの奴らさえ来なければよぉ…」

「言うな。我らは少ない糧でも生きてゆけるが、ニンゲンは違う」

 彼らの言う事が正しいのならば、ゴブリンが住む集落の井戸に毒を投げ込む正気を疑うような行動を取るプレイヤーが周辺にいる事になる。

 巻き込まれるのも嫌だが、見捨てて素通りも心地が悪い。

「そう苦々しい顔をするな恩人よ」

 ハッと顔を上げて前を見据えると、ダンペイが微笑み立ち止まっている。

「我らの問題は、我らで何とかする。恩人殿が気に病む事など何もない」

「ああ、アンちゃん毒消しの薬草を見つけてくれたんだろうが、十分助けられたさ。ニンゲンにも、アンちゃんみたいなお人好しがいるのは良く分かってるさ」

 自分たちが被害を受けているのに、恩人だからと余分な気遣いをさせてしまった。こちらにも予定があるのだから、明日には首都のクロバクに向けて出発しなければならない。だが、せめて彼等の力になれる何かを残してから出立したい。

 しかし、その前に彼らに伝える事が一つある。

「俺は夜行やこう族だ…人間ではない」

 口を大きく広げたまま体を硬直させたゴブリンを他所に協力を申し出る。

「それから【調薬】なら手伝える。人手がいるなら、使ってくれ」

 今日は徹夜を覚悟しなくてはな。



                     ♪



「すまないなジン殿…すっかり甘えてしまった」

 ゴブリンの集落の門前。そこには今も睡魔に襲われて半目のままのダンペイと、数時間の仮眠を取ったジンが穏やかに会話を弾ませていた。

「なに…やりたいことを実行しただけだ」

 ジンの見つめるステータスには、レベルの上昇した生産スキルに向けられ、 そのおかげで【調薬】【木工】【道具】【調理】のスキルレベルが上昇したと嘯く。



生産スキル   【鍛冶Lv3】【木工Lv4】↑1【調薬Lv5】↑2【皮革Lv1】

        【調理Lv4】↑2【道具Lv4】↑1【裁縫Lv2】

        【アンデッド作成Lv5】



「ジンちゃん、ありがとねぇ…井戸に鍵まで付けてくれて」

「にーちゃ、すーぷ…おいし」

「ゾローリのおっちょこちょいが、幸運を呼び寄せるとはな」

 出発の見送りに集まってくれた集落の皆とも一晩で随分と打ち解けた。最初こそ警戒されていたが、薬師のお婆さんに教えられたレシピの通りに調合を繰り返している内にいつの間にか反感の声も無くなっていた。

 腹痛が治ったゴブリンたちが腹の虫を鳴らし始め、料理を作るのに大忙しだったのでそれ所ではなかった。そのまま宴会に発展して、あちこち走り回り疲労困憊になるほどだ。

 宴会の最中に井戸を見て蓋も付いていない事に気が付いてからは、ひたすら【木工】さんの出番だった。このまま蓋なしでは同じことの繰り返し、木製の鍵付きの井戸蓋を作成した。鍵は集落の長をしている大爺さんに渡したが、鍛冶設備がない集落ではこれが限界だった。

「ほーら皆、いつまでも足留めしてちゃあジンに迷惑かけちまうぞ。何しろジンはこれから二点の頂きを目指すってんだ」

 二点の頂、プレイヤー風に言うならダンジョンの攻略である。その呼び名の由来は、火、地のダンジョンを攻略した二代目国王ドン・エールが放った言葉にあると言う。

「『ダンジョンの奥底に二点の頂きを見た』…楽しみだ」

「それでこそ戦士よ!」

 背中をバンバンと叩く、ダンペイの手が微弱なダメージを発生させる。進化していて本当に良かった。

 ゴブリンたちの声援と感謝の言葉を激励に、クロバクを目指し旅を再開する。


≪クエスト『ゴブリンの小さな頼み事』を達成しました≫

≪クエスト報酬としてスキルポイント2点が付与されます≫


「二点の頂か…ホント楽しみだ」

 太陽の日差しを浴びマントを翻し旅は続く、いづれ辿り着く場所に想いを馳せながら。

名前  ジン

性別  男

種族  夜行族Lv3

職業  ネクロマンサーLv3


HP  232

MP  180

筋力  40+20(60)

体力  40+90(130)

器用  40+25(65)

精神  39+39(78)

知力  40+12(52)

俊敏  33

運   40+8(48)


種族ポイント  0

スキルポイント 32


グリモワール  収録の魔道書 (グロノス)


武器1    フィルカーズ・サイス

武器2    ピーターの杖

頭      統括者のサークレット

胴      統括者のスケイルライトアーマー

腕      統括者のライトガントレット

腰      統括者のリザードベルト

足      統括者のボトムスケイル

靴      統括者のロングブーツ

アクセサリー 旅人のマント

アクセサリー 地竜の腕輪

アクセサリー


所持金    75970コル


スキル

武器スキル   【大鎌術Lv11】【杖術Lv3】

魔法スキル   【風魔法Lv7】【土魔法Lv5】【闇魔法Lv10】【呪魔法Lv6】

        【下僕召喚Lv10】【召喚魔法Lv6】

生産スキル   【鍛冶Lv3】【木工Lv4】【調薬Lv5】【皮革Lv1】

        【調理Lv4】【道具Lv4】【裁縫Lv2】

        【アンデッド作成Lv5】

補助スキル   【魔書術Lv10】【採取Lv3】【採掘Lv1】【伐採Lv2】

        【鑑定Lv7】【識別Lv5】【召喚Lv6】【罠Lv2】

        【幸運Lv4】【剛力Lv4】【巧みLv4】【速足Lv4】

        【気配察知Lv5】【魔力察知Lv5】【生存術Lv2】

職業スキル   【ネクロマンシーLv1】【死霊術Lv1】

固有スキル   【有形無形Lv8】【暗香疎影】


称号『始原の魔道』『絶望を乗り越えし者』『ゴブリンキラー』『漫才師の勲章』

  『恐怖を知る者』『語られぬ英雄』『鉱山の統括者』


収録の魔道書

名称  グロノス

階級  第81中階位

タイプ 万能

能力  【コレクションカードLv4】【カード化】【魔物図鑑】【解体】

    【召喚魔法】【販売】【魔石生成】


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