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ダンジョンを見据えて

　すっかり恒例になってしまったケーキによるスイーツ休憩を挟んで、ここ数日の成果と共に噛みしめる。舌の上で蕩ける甘味が幸福感を盛り立てている。

　冒険者ギルドの信頼を得る為に港町を中心に活動をする事にした。最初に受けた積み荷の出荷作業を皮切りに、数日を掛けて町のクエストを攻略し続けた。

　その甲斐があって目標にしていたダンジョンの場所をギルドから聞くことが出来た。結局、火のダンジョンがあったのは、ドワーフ国の首都クロバクの王城が建つキラアウエ火山だった。結果として、先に王都へ向けて移動した姉さん達の判断が正しかったのだと思う。

　ギルドのクエストを何件も請け負った事もあって、カルセドニーでほぼ使い切っていた所持金も回復。そして、嬉しい誤算もあった。クエストの報酬とは別に依頼人からスキルのコツを伝授される場合があり、この伝授が発生すると覚えていないスキルの必要スキルポイントが軽減されるのである。既に習得済みのスキルには経験値として変換されるらしく、幾つかのスキルがレベルアップを果たした。

　塩水で育つ特殊な野菜を育成している依頼者からの害獣駆除を請け負た時には、自身のレベルだけではなく、採取や道具そして使い始めたばかりの生存術がレベルアップした。クエストの後で調理の手伝いをさせられて調理スキルのレベルが上がていたのは、今思えば美味しいクエストだった。

　ダンジョンの場所が分かったのだから、直ぐに出も王都に移動したい所なのだけれど、それはステータスの振り分けが終わった後にしよう。

　モンブランの乗ったフォークが最後の一口を届けると、ジンはステータス画面を前に悩み始める。

「回避スキルが俊敏値に依存しているみたいだからな…振りたいところだけど、ネクロマンサーのスキルを使うにもMPは欲しいしなぁ」

　ジンは闘技大会での手痛い失敗から、自分の戦闘スタイルを見直していた。大鎌という如何にも接近戦を重視した装備を与えられて前に出る戦いをしていたが、職業は後衛に向いており、やりたい事と能力を活かせる場面が噛み合っていなかった。

　港町でのクエストを消化しながらも、考えている内に新しいスキルを交えた戦闘スタイルが見えてきた。

　言語化するなら万能型ネクロマンサーである。

　職業によって獲得したスキルをメインとし、他魔法スキルで広範囲の敵に攻撃する。接近した相手には大鎌の一振りで迎撃し、サブ装備で意表を突く。

　恐らく純粋に後衛職としてステータスを割り振った方が強かったのだと思う。ただ今まで均等にステータスを振り分けたおかげで、万能型ならば修正が可能だと踏み切ったのだ。

　サブ武器は未だ決めかねているものの、戦闘スタイルを明確に定めた事でどのステータスを伸ばすべきか順番を決めかねてもいる。

「う～ん…決めた！」

　手元の画面に素早く入力をするとそれを眺める。

名前　　ジン

性別　　男

種族　　夜行族Lv3

職業　　ネクロマンサーLv3

ＨＰ　　232

ＭＰ　　180

筋力　　40+15(55)

体力　　40+19(59)

器用　　40+9(49)

精神　　39+9(48)

知力　　40+7(47)

俊敏　　33+3(36)

運　　　40

種族ポイント　　0

スキルポイント　30

グリモワール　　収録の魔道書　(グロノス)

武器１　　　　　フィルカーズ・サイス

武器２　　　　　ピーターの杖

頭　　　　　　

胴　　　　　　　グランブルアーマー

腕　　　　　　　グランブルガントレット

腰　　　　　　　旅人のポーチ

足　　　　　　　グランブルレガース

靴　　　　　　　旅人の靴

アクセサリー　　旅人のマント

アクセサリー　　地竜の腕輪

アクセサリー

所持金　　　　　　75970コル

スキル

武器スキル　　　【大鎌術Lv11】【杖術Lv3】

魔法スキル　　　【風魔法Lv7】【土魔法Lv5】【闇魔法Lv10】【呪魔法Lv6】

　　　　　　　　【下僕召喚Lv10】【召喚魔法Lv6】

生産スキル　　　【鍛冶Lv3】【木工Lv3】【調薬Lv3】【皮革Lv1】

　　　　　　　　【調理Lv2】【道具Lv3】【裁縫Lv2】

　　　　　　　　【アンデッド作成Lv5】

補助スキル　　　【魔書術Lv10】【採取Lv3】【採掘Lv1】【伐採Lv2】

　　　　　　　　【鑑定Lv5】【識別Lv5】【召喚Lv6】【罠Lv2】

　　　　　　　　【幸運Lv4】【剛力Lv4】【巧みLv4】【速足Lv4】

　　　　　　　　【気配察知Lv5】【魔力察知Lv5】【生存術Lv2】

職業スキル　　　【ネクロマンシーLv1】【死霊術Lv1】

固有スキル　　　【有形無形Lv8】【暗香疎影】

称号『始原の魔道』『絶望を乗り越えし者』『ゴブリンキラー』『漫才師の勲章』

　　『恐怖を知る者』『語られぬ英雄』

「ひとまずはステータスＡＬＬ40を目指す。そこから魔法関連と俊敏を上げよう」

　しかし、ステータスを見る度に装備の貧弱さが気に掛かる。割り振られたステータスに付いた+(プラス)は、装備品によるステータス上昇の合算であるのだけれど、その殆どが一桁である現状を見れば貧弱とも言いたくなる。

「ダンジョンで装備のドロップや宝箱から出て来るのは、お約束だけどダンジョンに潜る前に装備を整えて行きたい」

　姉さん達の装備と比べると、自分の装備がみすぼらしい物の様に感じる。

「スキルのレベルが低いから酷い出来になるかもしれないけど、次の装備までの繋ぎだと思えば…。うん、作るか統括者の装備」

　カップをソーサーの上に運び終え、店を後にした。