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グリモワール・オンライン  作者: 灰猫
第三章 某国戦争編
135/168

争乱の中で

 イベント中の体が勝手に動くシーンを終えて、宿屋から飛び出した体はピタリと止まる。


≪グリモワール・オンラインの歴史が進行、または判明しました。グリモワール・オンラインの歴史は、公式ホームページよりご確認いただけます≫


≪戦闘教本を受け取った≫


「国を売り渡す契約を建国した王が推し進めるなんて…それは国の経営は激務ではあっただろうけどさ」

 アナウンスが響き渡る中、一人ポツリとつぶやく。

「船を貰えるんなら、自分の島に疎開するか…おっさんも逃げろって言ってたしな。えーっと、みんなと連絡を取らないとな」

 オンラインゲームではお馴染みのメール機能を使って、家族にメールを送る事にした。可視化されたキーボードを使ってメッセージの入力を終えると、入力画面の送信と書かれた文字をタッチする。

 その瞬間にメッセージは一枚の羊皮紙となり、くるくる丸まって一本のスクロールに姿を変えた。そしてドコからともなく現れた鳥が、天高く身を投げたスクロールをその足で捕らえ、飛び去って行く。

「…今の内にアイテムを買えるだけ買って集めておこう」

 もう購入する機会は、得られないかもしれないから。

 混乱の熱は引いたものの困惑の声が辺りから途絶える事のないコロッセウムの中、親友の戦いを見届ける為にやって来ていた猫耳娘の元に、一羽の鳥がスクロールを伴って参上する。

「あ、メールだ」

 混乱の渦中とあって先程から、周囲のプレイヤー達の元に何度も鳥がやって来ていたが、自分の所にもやって来るとは思ってもいなかった。

「あ、兄上様から…えええ!?」

 鳥から届けられたスクロールの中身を確認していると、そこには驚くべき内容が記されていた。

「こ、これは大変なことに…えっとオトネちゃんとツバキちゃんにも知らせないと。あ、兄上様はお母さん達とフレンドになってないんだった!」

 連絡しなければならない相手が増えたと、みんなの元へ羽の鳥を送り出す。

「これで良しっと…兄上様の言う通りなら、できるだけ準備しておかないと。えっと何がいるかな?」

 闘技大会を観戦しながら、友人と一緒にカフェで紅茶を楽しんでいると一羽の鳥がスクロールを掴んでこちらに飛んでくるのが見えた。

「あら…私宛?」

「お、珍しいな…コミュ障のナナにメールなんて。妹ちゃんか?」

「ご両親でしょ…スコーンおかわり」

 届いた手紙を唸りながら読破するナナの様子を不審に思いながら、其々の紅茶を口に運ぶ。

「やっぱり、あたしはダージリンが好きだね。セカンドフラッシュは初めてだけど、香りが気に入った」

「ダージリンはは確かに素晴らしいけどね。私はウバの方が好きね。やっぱりいろんな一面を見せてくれる子が好みね」

「かぁー、お嬢様め、茶葉の香りに慣れたらミルクティーにする気だな」

「毎年の香りの違いを楽しめるのも強みよね。でも…いくつも買うとね」

「消費しきれないのに買い込むからだろ」

「…否定はしないわ」

 ガタっと椅子が激しく移動する音が、二人の紅茶談義をストップさせる。

「おい、どうした?」

「ナナ?」

「移動するわよ」

 そう言い残すと、店を出て行こうとするナナを慌てて追いかける。

「さっきのメールに何が書いてあったんだ?」

「せめてお会計は済ませるまで待って欲しかった…」

 店を出た所で立ち止まったナナを追いかけて来たヤッパ―は、ナナの肩に手を乗せて呼び止める。

「ジンからね…国を出るから仕度しろって」

「リアルでか?」

「そんなわけないでしょ、カルセドニーから脱出するのよ。理由も書いてあったわ」

「ジンって弟だっけ?」

「ジンが船を抑えているらしいから、船で脱出するわ。それから…」

「あん?」

「私はカンヤム派よ」

 城に畑を構える一組の夫婦は、自分達の師にあたる老人から事の顛末を聞かされていた。

「それじゃあ、あのお孫さんは…」

「んむぅ、生きていればあのぐらいの年頃かのぉ」

「…」

「お主らは逃げなされ、こんな国と共に亡びる事は無い」

「おじいさん…」

 そこにスクロールを捕らえた一羽の鳥が現れ、娘のメッセージを伝える。

「これはカエデからだね」

「国を離れる…っあの子たちも答えを見つけたのね」

「ほっほっほ、実に聡く頼もしいお子さんたちじゃの。…さぁ、行きなさい」

「…行こうシラユキ」

「ヒデオミさん…はい」

 争乱の最中に9人のプレイヤーが、カルセドニーから姿を消した。

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― 新着の感想 ―
運営のこの設定は今まで頑張ってきたプレイヤーを絶望させ過ぎまたは馬鹿にしすぎでは? 全年齢ゲームとしてもいただけない気がする 鬱ゲーじゃなはずだよなあ
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