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グリモワール・オンライン  作者: 灰猫
第三章 某国戦争編
124/168

素材を集めよう7

こそっと投稿

 予定通り、と言うべきか。

 俺は今、アーロックで恒例とも言うべき、ケーキタイムを楽しんでいる。

「美味い」

 今回注文したのは、チョコレートケーキである。本来チョコレートが嫌いな俺は、自分からチョコレートを食べようとすることは無い。だが幾らか例外がある。

 その最たる物がホワイトチョコレートだ。

「やはり、チョコレートケーキにホワイトソースを思わせるホワイトチョコレートで装飾してやると美しく、味も合う」

 一般にチョコレートケーキと言えば、地層を思わせる茶色と黒のホールケーキだが、別に使用するチョコレートに制限がある訳では無いだろう。ここは現実リアルという訳でも無いのだ。現実世界に制限があるのかは知らないが。

「さて…」

 一次的とはいえ、アカシックレコードにアクセスすると言うとんでもないアイテムのお陰で、最後の素材である『統括者の鋼』の場所が判明した。それも複数体分だ。

 作戦を立てる名目の元、ケーキタイムを楽しんでいた訳だが、目的の場所が侵入困難な事実が変わる訳ではない。上手く動かなければ、もう二度とアーロックに立ち入る事が出来なくなるばかりか、犯罪者プレイヤーとして手配されるかもしれないのだ。

「…ケーキの追加を」


                      ♪


「クエストを受けていると進行しないってのは、こういう事か…」

 潜入ミッションと言えば、夜間行動が基本である。そんな適当な思いから潜入する時刻を夜に合わせた。正直、時間が無いのは本当なのだが、リアル時間の都合だけの問題ではない。

「灯台下暗し…探しも物をするなら足元からって事か…」

 アカシックレコードが叩き出した回答は、アーロックを治める領主の邸宅。冒険者ギルドに、態々クエストを発行してまでゴールデンハムスターの保護を訴える様な領主だ。複数のゴールデンハムスターを飼っている事は、少し考えれば想像できる事だった。

 希少なアイテムをどうでもいい事に使用したような後味の悪さをケーキで回復させたのである。当然、冒険者ギルドでクエストを受けていたら、討伐したゴールデンハムスターとの関連性を疑われて逮捕。暫らくはまともにプレイするのは不可能だっただろう。

「立派な建物だけど、警備は二人か…」

 正門を守る守衛は交代制だろうから、控えの衛兵も考慮しなければならない。

「正面からは無理だな…隠密系のスキルでもあればなぁ」

 アーロックは城壁で囲まれた町である。隣国との貿易拠点でもあるから、町自体の警備体制は厳重だ。とは言え、町の外への警戒程じゃない。

 【闇魔法】で自分の姿を闇に紛れさせる。

「あーあ、アカシックレコードなんて使わなきゃ良かったな」

 アカシックレコードは質問に関係する補足情報も次々に表示してくれた。

 紙にはこう書かれていたアーロック領主の邸宅にて複数のゴールデンハムスターが生息している。現在その数は一万匹を超え、なおも増加している。このまま放置すると魔物氾濫スタンピードが発生します。猶予は後、15日ですっと。

「そこそこ、大きい建物だけど。一万匹も入るサイズじゃない…地下か?」

 闇に紛れてそっと忍び込む。幸い衛兵はやる気がない様で、欠伸を連発している。

 屋内は思いの外薄暗い。電灯の明かりが当たり前な世代には燭台から漏れる光では暗く感じる。薄暗い廊下を音を立てない様に慎重に進み、部屋を幾つか発見したが全て空振りに終わった。中には話し声が聞こえて、調べるのを断念した部屋もあったが、そこはハズレの部屋で間違いないだろう。

 いくら【テイム】スキルでモンスターをペットに出来ると言っても、魔物氾濫スタンピードを起こすような規模のモンスターの所持は、間違いなく違法だろう。

 魔物氾濫スタンピードが良く分からなかったので調べて見たら、増え過ぎたモンスターが餌場や水場を求めて、本来の生息地から凄まじい数で移動する事だと分かった。もちろん、唯の移動では無く通り道にある町や国などを叩き壊していくのである。

「どんなに弱いモンスターだろうと一万匹も町に住まわせるなんて……正気の沙汰じゃないよな」

 魔物氾濫スタンピードが起こるという事は、使役されていないモンスターであると見て間違いないだろう。


                      ♪♪


「見つけた」

 廊下に人影が過ぎ去り、姿を現せた恰幅の良い男。

 このアーロックを統治する領主、エルリック・リードである。

「あいつの後を付ければ…」

 数分間エルリック・リードの後ろをついて歩き、地下室への入り口にたどり着いた。

「ふふ、ぼくちゃんの可愛いハムちゃん…ふふふ」

「…」

 趣味人し趣味に没頭すると周りが見えなくなる人もいると聞くが、コイツはそんな奴らしい。

 地下への入り口は、木造の大きな扉で塞がれていて、流石に一緒に地下に降りる事は出来そうにない。いくら魔法で姿を見え難くしても、振り返れば直ぐにバレてしまう。

 一旦、その場を離れ地下から領主が引き上げるのを待つ。

「…」

 息を殺し、近くの部屋に入り身を隠す。

 その部屋は武器庫であるらしく、剣や槍などが立てかけてある。夜中の内に持ち出される事がない限り、人の出入りは心配しなくても良いだろう。

 待機している間、色々な不安が浮き沈みする。

 今回の潜入は発見されれば失敗、ゴールデンハムスターを討伐出来なければ失敗。そして自分の痕跡を残したら失敗である。

 後者の一つは次のイベントに出られない程度で済むだろうが、前者の二つはアーロックの潰滅に繋がる。

「町かぁ…」

 チュートリアルの段階で国が亡びる様な世界だ。町一つ消えるのは日常茶飯事なのだろう。

「…!」

 パタンっと音が響き、足音が部屋の前を通り過ぎる。

「行くか…」

 誰にも語られぬ英雄譚…なんてな。

 地下への扉を開き、一歩でも早く標的の元へ。

「キゥイ?」

「はは、見つけた『魔装化』」

 ゴールデンハムスターは弱い。大鎌の一振りで絶命する程度には弱い。

「キュ!」「きゅー」「キッ」「きゅきゅー」「きゅ…」

 可愛らしい声で絶命するゴールデンハムスター。罪悪感に駆られるが手を止める訳には行かない。

 こんなに弱いゴールデンハムスターが何故脅威なのか。それはゴールデンハムスターがが群れで生活すると頻繁に変異した個体が生まれるからだ。

 以前カルセドニーで戦ったラージラットも、このゴールデンハムスターの変異種だと調べて解った。だから冒険者ギルドでは本来、発見したら即討伐が基本だそうだ。アーロックでは領主の権力と貴族の地位で無理がまかり通ってしまったのだろう。

「やっぱ…変異種もいるわな」

「ギュゥーーー!」

「っチ」

 鳴き声を上げながら突進するネズミを躱しながら【識別】を掛ける。


ギュウキラット 魔物 レベル10 ランク7

ギュウキラット 魔物 レベル11 ランク7

ギュウキラット 魔物 レベル7 ランク7

ギュウキラット 魔物 レベル2 ランク7

ギュウキラット 魔物 レベル8 ランク7

ギュウキラット 魔物 レベル12 ランク7


「ちょっと数が多過ぎやしないか!?」

 ラージラットより格上のランク7モンスターのハズだが、ラージラットより戦いは楽に感じる。当時より強くなったのもあるが、ギュウキラットの攻撃方法が接近戦のみであるお陰だろう。

 やっぱりラージラットはボス補正とか掛かってたのかな。

「距離開けて魔法、それで行けそうだな」 

 いくら地下室でも余り大きな音は立てられない。『ダークルーム』を連発するも音が出そうな【風魔法】や【土魔法】は使えない。

 時間もかけていられないから、召喚系は全使用だ。

「これ…今日中に終わるのか?」 


                      ♪♪♪


≪種族、職業レベルが上昇しました。種族、スキルポイントを獲得しました≫

≪クエストアイテム『統括者の鋼』を入手しました≫

≪隠しクエスト『名も無き英雄』を達成しました≫

≪隠しクエスト『名も無き英雄』の達成報酬として、称号『語られぬ英雄』を獲得しました≫

≪種族レベルが20に達しました。進化を行います≫

≪職業レベルが20に達しました。死霊使いの上位職への転職が可能です≫

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