真実の禁1
今回は短めです。
皆さんお好きでしょ?
グリモワールの強化、それを成し得る為には過去この世界で起きた歴史を知る必要がある。
ギルドの医療施設に勤務する強面のおじさんにグリモワールの強化について尋ねた俺は、何故グリモワールの宿主が住民達から英雄視されているのかを調べろとヒントが出された。
俺たち以前にグリモワールの宿主がいたのは、遠い過去の事だ。
当時を生きていた人が存在しない程の昔ならば、それは歴史を後世に伝える歴史書として後世に残されている可能性が高い。現代社会の様に学校で教える事は無くとも、歴史を語る語り部や資料を集める学者がいるはずである。
冒険者の国カルセドニーは、冒険者が建国した事で知られる。ここベネート大陸では一番歴史が浅く、若い国ではあるが、どの店を回っても歴史に関する本が存在しないのである。
この違和感に何所か薄ら寒い物を感じながら、最後に歴史を知らないでは済まされない場所。王宮へと足を踏み入れた。
「これはこれは、ようこそいらっしゃいました。ジン殿」
淀みない口調と気配を感じさせない動き。
「ロックスさん…」
「本日はどの様なご用件でしょう」
「…この国。いや、この本について調べに来た」
俺はグロノスを本の状態で顕現化させる。
「なるほど……では玉座の間へ」
♪
「久しいな冒険者よ」
「陛下もご壮健そうで」
体が思う様に動かない。
以前と同じようにイベントが始まったようだ。
「して此度の要件は、魔導書についてであったな?」
「はい。いくら探せどグリモワールに関する物どころか、歴史書の一つも見当たりません。国中の者達がグリモワールの宿主を知っているのにも関わらず関連書籍が全くない」
何時間も王都中を探し回ったが、何も見つけることが出来なかった。本屋こそあるものの資料となりそうな書籍は見つけることが出来なかった。
「うむ、歴史を綴る文献は王族が管理をしておる。故に一般には出回っておらぬ」
「その歴史とは隠し立てする様な物なのですか?」
自由に体が動かせたなら、こんなセリフは恐ろしくて口にできない。その国の国王に国に隠したいほど恥ずべき秘密があるのかと問いただしている様な物だ。
「…ある意味では隠す事は義務であった」
「義務?」
「だが其方が、知りたいとこの城に踏み込んだ時点で禁を守る務めは終わりを告げた」
≪ワールドクエスト『真実の禁』を開始します≫
≪公式ホームページより、ワールドクエストの詳細、進行状況を確認する事が出来ます≫
≪世界に再び混沌と秩序が顔を覗かせた≫
ワールドアナウンスだと!?
「付いてまいれ、グリモワールの宿主よ」
国王が立ち上がると玉座が奥にスライドし、階段が顔を見せる。
「今こそ語ろう建国の冒険者、クレイク・ファーバーの伝説を」
今、二百年の封印を破り伝説が動き出す。