両親への復讐
夜になって両親が帰ってくる。床に転がって泣き喚く正人と、それを面白そうに踏みつけて笑っている正志かリビングにいた。
「と、とうさん。助けてくれ。体が動かないんだ。コイツが変なことを俺にして……」
なきながら助けを求める正人は、涙と鼻水で顔中ぐしゃぐしゃになっている。
自慢の息子のそのような姿をみて、父親の龍二が声を張り上げた。
「どうした。何があったんだ」
異様な光景に驚いたが、父親の威厳をもって正志に怒鳴りつける。
「ふふ。見ての通りさ。お前の自慢の息子は今日から何も出来ない赤ちゃん同然さ。せいぜい可愛がるがいい」
「何を言うか!」
怒鳴り上げ、いつものようにビンタをしようとする。
しかし、その手が掴まれ、逆に締め上げられた。
「は……離せ。痛い。痛い」
骨が潰れるメキメキという音。ベキッという音がして、腕がありえない方向に曲がる。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
腕を押さえてうずくまる龍二の顔面に、正志は蹴りを入れる。メキっと音がして、鼻が折れ、歯が飛ぶ。。
「まったく、こんな雑魚から俺が生まれたと思うと、自分が情けなくなるぜ」
「くっ……いたい!貴様、父親にこんなことして!今すぐ出て行け!」
激痛を抑えて気丈に睨みつけるが、正志は平然としている。
「父親だと? 笑わせる。今まで父親らしい事をしていたとでも言うのか?まあいい。これからたっぷり役に立ってもらう。ソウルウイルス注入。痛みにもだえるがいい」
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
龍二は床を転げまわって暴れる。
母親の涼子は青い顔をして、正志と龍二を見比べていた。
正志はそんな母親にも近づき、手を触れる。
「いたっ!」
一瞬で激痛が走り、涼子は床に崩れおちた。
「さて、元母親。アンタはどうするね?」
「……どうするとは?」
「この雑魚二匹を病院に入れて話を表にださないか、警察でも呼んで表沙汰にするか。どっちでもいいけど、後者を選んだ場合、あんた等全員自殺してもらうことになる。あんたも既に俺のウイルスに感染している。生かすも殺すもすべて俺の手のひらの上だ」
狂気の表情で母親を睨みつける正志。
「あんた、何を言ってるのよ。気でも違ったの?」
「ふふ。娘と同じ事を言うか。まあ狂ったかどうかはともかく、お前等の自殺はこんな風にしてもらうことになる。首を絞めろ」
命令する正志
「何を・・ガッ」
正志の言葉を聞いたとたん、自分の体がいう事を聞かなくなる。
自分の手が勝手に動き、喉元を力いっぱい締め付けていた。
「こ、これは…こんなことありえない!」
「これが俺の得た能力の一部さ。死にたいならこのまま自殺してもらうけど?」
必死に首を振る涼子。その顔は窒息寸前で苦しそうに歪んでいた。
「ならば、さっさと後始末をするがいい。クックック……」
次の瞬咳き込みながら、自分が生んだ子供を悪魔を見るような目で見た。
(そ……そんな。お父さんたちまで……逃げなきゃ!)
その様子を澄美は隠れてみていたが、玄関に向かおうとする足が止まる。
(い、いや!なんで動かないの?助けて!)
立ち尽くしたまま足がとまる澄美。
「愛しい妹の澄美さんよ。お前さんにもソウルウイルスを注入している。逃げられんよ。お前には俺の奴隷として、今までの事を償ってもらわないとな。涼子。お前もだ。とりあえず、明日家族の預金全部を俺の口座に移せ。逃げようとしたら、自分で自分の首をしめるように脳にプログラムをインストールしている。今日からはお前らは俺の家族ではなく、奴隷だ」
リビングから正志の声が聞こえてくる。
(あ、あいつは悪魔に魂を売ったんだ……。助けて神様。何もしていない私達家族に、なんでこんな不幸が……)
絶望のまま立ったまま涙を流し、虚しく神に祈る澄美。
リビングでは涼子も同じように涙を流していた。
結局、表ざたにはせず、涼子が手配して二人を病院に入院させるのだった。




