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妹への復讐

そして、一ヶ月ぶりに家に帰る。

(ふう。なんだか懐かしく感じるな。こういうところは人間の感情のままか)

そのまま家に入ると、テレビの音が聞こえてくる。

リビングに入ると、珍しく妹の澄美がいた。

無言で入ってきた正志をみて驚く。

「キャッ あんた誰よ。出て行かないと警察を呼ぶわよ」

澄美し正志を見て、大げさに騒ぎ立てた。

もはや正志は、妹が見てもすぐにはわからないくらい、すっかり様変わりしていたのである。精悍な顔に筋骨隆々とした体。何よりも全体の雰囲気が異質だった。

「ふふ、とうとう自分の兄の顔も忘れたか」

正志は冷たく笑って、妹を見下す。

「兄・・?」

しばらく見つめて、声をあげる。

「…………なんだ、バカ正志か。あんた病院抜け出してどこいってたのよ、それにひどい臭い。ホームレスにでもなったの?」

上から目線でバカにする。確かに正志の体はイノシシの血にまみれ、異臭を放っていた。

「バカ正志、ね。久しぶりに会った実の兄にかける最初の言葉がそれか。躾がなってなかったな。教育してやろう」

その言葉と共に、澄美の顔面をビンタする。

「いたっ!え?」

あまりに意外な行動で、澄美は頬を押さえて呆然とする。

「何するのよ!」

次の瞬間、猛然と殴りかかってきたが、正志に軽くかわされた。

「え?」

反撃をかわされて、澄美は混乱する。今まで彼女は正志を兄として認めてなかった。一家の鼻つまみ者で、皆から苛められるどうしょうもない人間だと思ってたのである。自分より下の立場の人間だから、平気で馬鹿にできる。そういう対象が自分に何かしてきるとは想像すらできなかった。

だから、いきなり顔を思い切り殴られた時、痛みより意外さで呆然とした

「痛いバカ正志。なにすんのよ」

我に返って喚きたてるが、再びビンタされる。

「痛い!痛い!」

澄美が泣き喚くのもかまわず、正志は殴り続けた。本気で殴りつけると殺しかねないので、充分に手加減しつつ、また表面が腫れ上がる様にコントロールしていた。

しばらくすると、澄美の真っ赤に顔が膨れ上がった。

「いた……やめて……もうやめて……顔を殴らないで……お願い。明日も撮影があるの……こんな顔じゃ……」

どんなに泣き喚いても、正志は殴りつけるのはやめない。

しばらくして、澄美はついに気絶してしまった。

「ふん。これくらいにしておくか。『状態保存(セーブ)』」

正志は気絶した澄美の顔に、精神プログラムを注入する。澄美の晴れ上がった顔は、時間が経過してもそのままの状態で続いていた。


「……はっ?」

 澄美の意識が戻ると、目の前で腕を組んでいる正志がいた

「とりあえず……お兄様に土下座して、今までの態度を謝れ」

正志は今までとは別人のように、不敵な表情で笑った。

「あ、あんたなんか……ぐっ」

反抗しようとすると、容赦なく腹を殴られる。

「ご、ごめんなさい」

正志のあまりの容赦なさに屈服して、土下座して謝る澄美だった。

「ふん。ならばまずメシを作れ。ラーメンでいいぞ」

テーブルにふんぞり返って言う正志。

反抗しようと思ったが、また殴られるのが怖かった。初めて感じる兄からの恐怖。屈辱を感じながら、無言でラーメンを作る。正志は無言でラーメンをすすった。

澄美はその姿を不気味そうに見る。

「私にこんな事して、ただで済むとはおもってないでしょうね」

しばらくして、悔しげに澄美が言う。

「ただでは済まない?面白い。それで、どうなるんだ?」

正志は平然と笑う。

「決まってるじゃない。私の顔はアンタなんかの何倍も大事なのよ。もしこの事が原因で、アイドルになれなかったらどう責任とるの?」

すこし勢いを取り戻して、澄美が言い立てる。

「くく、心配しなくていいぞ。お前の顔はもう腫れたままだ。その不細工な顔じゃアイドルなんかにはもはやなれはしないだろう。お望みどおり責任とって、一生俺のペットとして飼ってやろうか。」

倣岸に言い放つ。

「は、腫れたままって? ど……どういうことよ? 」

「お前が気絶している間に、俺の手を通してソウルウイルスを侵入させて、治療の人体プログラムをいじった。今の腫れた顔がスタンダードになるように、カラダに覚えこませたから、治療されることはない。今後はブサイクなままですごすがいい」

「はっ、何を言っているかわかわないわ。とうとう苛められすぎて、気でも狂ったの?」

嘲笑う澄美だったが、正志は平然としている。

「ハハハ。俺が苛められていたという認識があるわけか。確かにな。親からも兄妹からも幼馴染からも苛められるクズが俺だよ。お前らのおかげさまで、とっくに狂ってるさ。全人類をギロチンにかける取引をした時点でな。だが、俺は今の自分が気に入っている。お前らに都合のいい正常なんかに付き合う気は無い」

正志はぬ゛君に笑い続ける。澄美は正志が発狂していることを確信し、心底から恐怖を感じた。

「何言っているの?まあいいわ。正人お兄ちゃんやお父さんやお母さんに言いつけてやるから。アンタ、お兄ちゃんに散々殴られるでしょうね。お父さんは怒って、家から追い出すかもね」

必至に恐怖心を押さえつけて、虎の威を借りて脅しつける澄美。正志に周囲の力を借りて仕返しすることを思い、口元が歪んでいる。

これで脅すことができると思ったが、正志は不気味な笑いを浮かべたままだった。

「ふふ。まあ見ているがいいさ。追い出される……か。果たしてどちらがそうなるか」

まったく動じない正志をみて、背中に悪寒が走る澄美。こいつは本当にあの卑屈な兄なのだろうかという疑問がわきあがってきた。今までとはまったく態度が違う。妹である自分も、兄である正人も、両親も恐れていない。

「……あんたに、何があったのよ」

ついに澄美は震える声で聞いた。

「ふふ。お前の猿並みの知能じゃ理解できないだろうが、ある取引を通じて、偉大な存在に進化したのさ。お前等にとっての化物にな」

凄みのある顔で笑う。澄美の背中の悪寒はますます酷くなった。


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