最後の審判
『よし。昼食の時間は終了だ。これで締め切る。学食に入れなかった者は次のチャンスを待つんだな。これ以降、命令があるまで殴り合いなどの争いを禁止する。下手に怪我をされるとつまらないからな』
正志の思念がまるで放送のように生徒全員の脳に響き渡る。いいところを邪魔されて、生徒たち全員から不満があがった。
「冗談じゃねえ! こいつらのせいで俺たちまで酷い目に会っているんだ。せめて一発殴らせろ!」
1-Aの前にいる生徒が騒ぐが、直後に全身に激痛が走る。
『俺の命令に逆らう奴はいつでも死んでもらって結構。さっさと散れ!』
あわてて教室のからいなくなる他の生徒たちだった。
「助かったの……?」
弓がすすり泣きながら独り言をもらす。
「ふん! こうなったらどの道終わりだよ。もう何をやってもいいんだ!」
いきなり一人の男子生徒が女子に飛び掛って、服を脱がそうとする。
「そうだな。死ぬ前に楽しい思いをさせてもらわないとな」
一斉にとびかかる。皆、理性を失った獣のようになっていた。
「いやーーーーー!」
必死に抵抗する美香。ツインテールを後ろからつかまれて羽交い絞めにされている。
「ふふ、生意気な女め。俺はずっとこうしたかったんだ! 」
ギラギラとした顔で胸を掴む。他の女子も組み倒されていた。
「助けて!助けてーーーーーーーーーーーーーーーーー」
クラスの中では女子の絶叫が響き渡る。
1-Aだけではなく、学園中で同じ事がおこっていた。
ある者たちは合意で、ある者たちは力ずくで。
人間は追い詰められると性欲が増すというが、そのとおりに皆狂い掛けていた。
『おっと。忘れていた。そういう事はして欲しくないな。俺が見ていて胸糞が悪くなる。というわけで、禁止する』
「「「ぐぎゃーーーーーーーーーー」」」
正志の思念放送が響き渡り、行為に及ぼうとしていた男子生徒たちに痛みが走った。
「……た、助かったの?」
弓が体を起こしながら、荒い息をつく。
「吾平くんが助けてくれたの?あ、ありがとう……」
理沙がおもわず正志に感謝するが。返答は冷たかった。
『誤解しなくていいぞ。別に女達を助けたわけじゃない。それに、今からそんなこと考える余裕もなくなるからな』
正志のあざける様な思念が返ってきた。
「何をするつもりなの……?」
「これから全員参加のデスゲームを開催する。覚悟しておけ。お前たちもだ。お前たちの本性が剥き出しにされ、これから救われる価値があるかどうかを容赦なく判断される。ゲームの名前は『最後の審判ゲーム』だ」
「『最後の審判ゲーム』ですか……?何で審判されるんですか?」
学級委員長の理沙が恐る恐る聞いてくる。
『お前たちが今までどういう行動をしてきたのか、そのすべてでだ。今までみたいに、容姿で左右されない。権威も通じない。暴力でごまかされない。仲間に頼れない。すべて自分自身の力だけで、無罪を勝ち取るしかないんだ」
正志の思念はそういうと、静かに消えていった。
「もうこんなとこにいられないよ! 私は出て行く! 」
啓馬に乱暴されそうになった美香が泣きながら教室を飛び出す。
「まって!」
里子が彼女を追いかける。
「……私達も行きましょう。こんな獣たちがいるとこなんかにいられないですわ」
京子が言うと、女子全員が頷く。
「パソコン室に行こう。今なら誰もいないはず」
「……そうね」
女子たちは1-Aを出ていく。男子たちは先ほどの痛みの影響で、止めることができなかった。
「はっ。せいぜいアイツに尻尾振ってろよ」
歯をむき出して威嚇する光利。1-Aは男女のグループに分裂した。
「でもよ、これからどうする?」
半分になった生徒がこれからの事を相談し合った。。
「木村さんに頼むか?」
啓馬が3年の暴走族をしている先輩の名前を出すと、何人かの生徒が頷いた。
「……でも、木村さんでも無理なんじゃないか?」
「大丈夫だよ。無敵のヤンキーだって他校でも有名な先輩だぜ」
「でも、どうやって……?」
「俺、木村さんの携帯知ってるから、連絡付くよ。どうせアイツを倒せば、俺らの呪いも消えるだろ?そうなったらクラスの女を差し出せばいいさ」
「そうだな。もうアイツは俺たちの敵だし。遠慮することはないよな」
他の男子生徒たちも頷く。
啓馬は木村という生徒に連絡をとり、正志に対抗してもらうよう依頼した。
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