内乱
井上学園
何の進展もないまま、時間だけが過ぎ、正午を迎えた。
「くそ!あいつ、生贄を出したら解放するって、ちっとも俺たちを許してくれないじゃないか!」
「もうお昼よ……。お腹すいた……」
生徒たちから不満が出る。昼飯を食べようとしても、学食は正志が立ち入り禁止エリアに設定しており、近づくだけで激痛が走る。弁当を持っている生徒はまだいいが、もってきていない生徒たちは腹をすかしていた。
『さて、昼になったから、そろそろイベントを開始しようか』
生徒たちのイライラが高まったころ、脳内に正志からのメッセージが鳴り響いた。
『前に説明したとおり、俺はこの学園で苛めを受けていた。何人もムカつく生徒や先生がいるが、俺一人じゃ手が回らないから仕返しを手伝ってもらおう』
1-Aを含めた全生徒に、いままで正志が受けた苛めの詳細な記憶が伝わってくる。
一人ひとりの心に、実体験したような鮮明な記憶が刻まれた。
「さて……いまからはじめるささやかな仕返しだが……」
実に楽しそうな正志の思念が伝わってくる。
「俺を今まで苛めていた奴らから『憎悪』をもらった者は、学食に立ち入ることを許可しよう。弁当を持っている生徒も参加したほうがいいぞ。早く権利を手に入れないと、締め切るからな。そうなったら飯も食えないで何日この学園に閉じこめられるか……。それじゃスタート』
正志からの思念が届くと同時に、全校で悲鳴と雄たけびが沸き起こった。
「俺が先だ! 」
「あいつらを殴って憎まれればいいんだな。ちょろいぜ!」
一部の生徒が1-Aに向かう。
もちろん1-Aでも正志の思念波は受けており、全員が恐れおののいた。
「お、おい、どうするんだよ!このままじゃ、全校生徒からリンチされるぞ!」
慌てた声ほ上げたのは、男子のリーダー工藤啓馬である。
「と、とりあえず、ドアを閉めて鍵をかけて!立て篭もりましょう」
井上京子の提案で、ドアと窓をしっかりと閉め、机をつんでバリケードを作り上げた。
1-Aの前にはどんどんと生徒が集まってくる。中には教師の姿も見られた。
「でてこい!」
「俺たちをこんなことに巻き込んだ責任を取れ!」
外で激しく罵声を上げるが、1-Aのドアはかたく閉ざされ、中の生徒が必死に抑えていた。
「卑怯者が!今度は俺たちが苛めてやる!」
集団でドアを棒で叩くが、開かない。
「くそ!」
1-Aの前に集まった生徒たちが舌打ちをする。
その時、隣のクラスで大騒ぎが起こり、一人の男子生徒が中から追い出された。
「あ、あいつ……何が起こってるんだ?」
その姿をみてざわめく。
「た、助けてくれ……。許してくれ。確かに俺は中学のころに吾平を苛めたことがあるけど、高校に入ってからはなんにもしてなかったじゃないか。頼む……」
泣きながら正志に許しを請う少年の顔は、集まった生徒たちの記憶にもあった。
「コイツも今の原因を作った一人ってことだろ」
よってたかって殴られる生徒。全身血まみれになって倒れ伏した。




