大破滅
「ここは?」
気がついたら、宇宙空間のような場所にいた。足元には青い地球が見える。
「綺麗……」
不細工な顔の女子生徒が声を漏らす。
「これは俺が作った世界だな。お前たちは意識だけになってここにいる」
正志が姿をあらわす。なぜか光り輝く服を着た神様のような姿だった。
「そして、俺がシミュレーションしたこれからの地球だ。よく見ているがいい」
正志の言葉に地球を見つめると、次第に地球が変わっていく。
誰の目にもその異常がわかり、彼らは激しく動揺した。
「これがこれから起こることだ。少なくとも数年以内にな」
正志の声が冷たく響き渡り、沈黙が広がる。
「あんたがやることなのか?」
生徒の一人が正志を睨み付ける。しかし、正志は苦笑して首を振った。
「勘違いしてほしくないが、俺のせいじゃないぜ。もっと根本的で、逃れようがない理由で起こるんだよ」
「その原因って?」
興味を引かれた男子生徒が聞く。
「つまり、地球を支配している存在……仮にガイアとでも言おうか。それが眠りに落ちるのさ。それは地球と一体化している。どんな生物だって睡眠の時は休止モードになるだろう?地球だって同じだよ」
「そんな……」
精神に直接それが事実であることが伝わってくる。
「まあ、こんなに早く地球が眠りに落ちるのは、人間が原因なんだけどな」
正志は優しくその理由を話す。地球はすべての生物が発する魂のエネルギーでバランスをとっているが、人間が増えすぎたことにより生物が激減し、今の世界を維持できなくなった。そのため一度眠って力を回復する必要があるのだった。
「だが、一度眠ると一万年は起きない。当然、そのあいだに人類が築き上げた文明は滅びる。ガイアはここまで作り上げた文明を失うのはもったいないと思っている。だからサタンに命じて、人類という種の生き残り方法を開発することを命じた」
皆、正志の声に魅入られたように聞き入っていた。
「サタンはそれを受け、ガイアが眠りに入る前に、なんとかして最小のエネルギーで文明を維持できるシステムを考え出した。その地上代行者-つまり、救世主が俺なのさ」
胸をそらして言い放つ正志だった。
「それは、どうやって?」
「実はな……」
彼らの脳に正志の考えが伝わってくる。彼らは正志の『魂を売れ』という意味をやっと理解して、複雑な顔になった。
「うーん……微妙だな」
「だが、まったく環境を汚染させることなく100万人を養うことができるのはこれしかない。時間に余裕があれば、もっと可能かもしれない。すべての人類を救うことは無理だが、ほんの一部でも救うことができれば、人類は一万年後、再び繁栄することができるかもしれないんだ」
正志の顔には希望が溢れていた。




