パトカー
一時間後、上田明から通報を受けた警察から、パトカーが派遣された。
「しかし、学校が占領されたなんて、生徒の戯言でしょ? なんで俺らがいかなきゃならないんですかね? 」
運転している若い警官が、隣の中年の警官に話しかける。
「それが、学校から携帯で何十本も救援の電話がかかってきているんだ。訳のわからない力をもった生徒に人質にされているってな。教師からも助けてほしいと言われたらしい。何で逃げ出さないかについては意味不明のことを言っているらしいが。なんでも、校庭に出たらカラダに痛みが走るらしい」
「……は? なんですかそれ? 」
「わからん。だから確かめにいくんだ。そろそろ見えてきたぞ」
学校の敷地内に入るパトカー。
「グッ……痛い。なんだこれは? 」
校庭に入った瞬間、二人の全身に痛みがはしる。
「だ……誰か。助けて。うわ!! 」
痛みのあまり、思わずあらぬ方向にハンドルを切ってしまい、車が塀に激突して大破する。ガソリンに火がついて、盛大に燃え上がった。
その様子を見ていた生徒達は絶望する。
「パトカーが燃えている……」
『いやー。これからどうなるのよ」
生徒達はますます動揺し、誰を生贄にささげるか醜い争いを続けるのだった。
それを見た正志は笑みを浮かべる。
(面白い。燃えろ燃えろ!これで日本中に俺の名が広がるだろう。あのゲームに参加する人数が増える)
これからのことを考えると、ワクワクしてくる。
(とりあえず、教室にでも帰ってみるか。あいつらはどうしているかな?)
一通り学校を回って1-Aに帰ってくる正志だった。
正志が教室に帰ると、皆が恐怖の表情で出来るだけ離れようとする。
そして、一人の少女をけしかけた。
「弓、任せたわよ」
「早く謝れよ。お前にクラス全員の命がかかっているんだから」
クラスメイトの中から弓が押し出され、正志の前に立たされる。
弓は覚悟を決めて震える声で話しかけてきた。