無意味な謝罪
「だ、誰がお前などに……くっ、また!」
あわててその場を離れようとするが、足が勝手に動いて正志の前にくる。
「よし、そのまま正座して、自分の指を前にだせ」
岡田の意思は正志の命令に逆らおうとするが、体は勝手に正座して、指を前にだす。
「では、質問だ。お前は本当に俺がこんな事をする理由に心当たりがないか? 」
正志が冷徹に質問すると、岡田は顔を真っ赤にして否定した。
「な、ない。お前が異常な殺人者なだけだ!」
「そうか……なら今から質問する。嘘を言うたびに、お前は自分で自分の指をおることになる」
正志の言葉に従って、岡田の右手が左手の指にかかる。
「なぜ俺が入院している間に、机の上に花瓶が飾られていたのを放置した? 」
「そ、そんな事は私はしらない……はぎゃ! 」
否定した瞬間に岡田の右手が動き、左手の小指が折られる。
すさまじい痛みがカラダに走り、岡田の目から涙がこぼれた。
「なぜ放置した? 」
「き、気がつかなかったんだ……ぐっ!」
左手の薬指もおられた。
「お、岡田先生、やめたまえ……くっ!体が動かない」
この異常な拷問を止めようとした教師達だったが、彼らの体も硬直する。
「邪魔をするな。質問を続ける。なぜ放置した? 」
「わ、悪ふざけだと思っていたんだ。冗談だと思っていた。悪かった!! ぐっ!」
とうとう正座したまま謝罪する岡田だったが、中指も折られた。
「花瓶を飾る意味は? なぜ俺がそんな事をされたんだ? 」
「だ、だから罪のない冗談で……いた!も、もう止めてくれ。悪かった!」
涙を流して謝罪するが、ついに人差し指も折られた。
「花瓶を飾る意味は? 」
「い、苛めだ!お前をクラスの連中が苛めて楽しんでいたんだ! 」
泣きながら苛めがあった事を認める岡田。初めて親指にかかっていた右手が離れていった。
「そんな……岡田先生が、苛めを知ってて放っていたなんて!」
桃井が真実を知って驚き、同時に蔑みの視線を向けた。
「なんでお前はそれを黙認していた? 」
「……」
「言え!さもないと……」
「仕方なかったんだ!今どきの餓鬼どもをまとめるには、苛めを利用してクラスを一丸にするしかなかった!そうしないと誰も勝手なことばかりするようになる!」
泣きながら勝手な事をいう岡田だった。
「ふん。だがな、苛めの対象にされる俺にとっては迷惑な話だ」
「すまない……許してくれ。俺が悪かった!」
土下座して謝る岡田だが、正志の怒りは収まらない。
「まあ、今までその方法で世の中を上手く渡ってきたんだろう。誰かを悪者にして苛めの対象にする事で、自分は上手く立ち回れる。だが、今度ばかりはそうもいかなかったな。周りをみてみろ。お前のせいで巻き込まれた人間がどう思うか……」
その言葉にはっとなって周囲を見渡すと、自分をみつめる冷たい目と合った。
誰もが侮蔑するような目を向けてくる。
「くくく……当分誰もここから出られない。今の会話は全校生徒にテレパシーで伝わっている。お前と1-Aの連中がこれからどう扱われるか、楽しみだ」
そう言い放つと、その場を去ろうとする正志だったが、呼び止められた。