教師への復讐
「さて、自発的に手伝おうとする奴はいないのかね?すこしは罪が軽くなるかも知れないぞ」
正志が周囲を見回すと、あわてて何人かのクラスメイトの男子生徒が昏倒している三年生を持ち上げ、泣きながら窓の外に放り出す。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
三階から放り出されて、地面に激突したその三年生は壊れた人形のように動かなくなった。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「本当に落としたぞ!」
それを見て、集まっていた生徒達は逃げ出していく。
「面白くなってきた。次は警察とマスコミが来るまで、次の準備を始めるとしようか」
正志はそれを見ると、満足してニヤリと笑い、教室から出て行く。
クラスメイトたちは安堵と不安で震えていた。
生徒たちが去ると、つぎに教師たちが押し寄せてくる。
「吾平君。馬鹿なことは止めなさい。君は何をしているのかわかっているのかね?」
頭が禿げた校長が正志に詰め寄ってきた。彼はいつもは教育者然とした紳士だったが、この異常事態に余裕が無くなり、目が血走っている。
「もちろんわかっているとも。お前達も現状を理解するがいい」
偉そうな教師たちに責められても正志は恐れ入らない。
権威が通じず、校長は頭に血を上らせた。
「き、君は退学だ!」
「馬鹿かお前は。もうそんな次元の話じゃないんだよ」
正志は鼻で笑うと、校長の首をつかんで持ち上げた。
「く、苦しい!話せ!」
「ふんっ!」
正志はそのまま力を入れ続ける。しばらくすると、校長は涎を垂らして舌を垂らした。
「人間って、簡単に死ぬもんだな」
正志はあざ笑いながら、校長の体を投げ捨てる。あわてて駆け寄った教師たちは、校長が呼吸をしてないことを知って真っ青になった。
「ほ、本当に殺した……」
「ああ、殺したさ。それがどうした?」
全く罪の意識を感じてない正志に、教師たちは心底恐怖を感じる。
「吾平くん、ど、どうしてこんな事を……まじめな生徒だったのに」
英語の担当だった、今年教師になったばかりの女教師が震える声で聞く。桃井杏という名前で、生徒と間違われるほど小柄で可愛らしい。
「桃井先生か。あんたも不運だな。よりによってこんな学校に来るなんて。まあ、こんなことになったのは、すべての原因は俺を苛めたクラスの奴等と、それを止めるどころか助長していた岡田のクズ教師のせいだよ。恨むならそいつらにしな」
そっくりかえって正志は言う。
「岡田先生は立派な教師だわ。苛めの助長なんてしない!私の事も誠実に指導してくれてるし、生徒たちからも慕われているわ」
ムキになって言う桃井教師だったが、正志はそれを聞いてあざ笑った。
「ふーん、どれどれ……」
桃井の脳にアクセスして、情報を探る。すると、ある感情が伝わってきた。
「そうか。アンタは岡田に惚れていたのか。アンタの情報もビンビン伝わってくるからすぐわかるぜ」
「なっ!」
いきなり自分の心を指摘され、桃井は真っ赤になる。
「馬鹿な女だ。あんたの惚れている教師が、どれだけ醜い人間かも知らずに」
「そんなことはないわ!」
きっとなる桃井に、ますます笑みを濃くする正志。
「なら、そいつが今まで何をしてきたか、本人に聞いてみようか。そこでこそこそ隠れている岡田。こっちにこい!」
正志は教師達の一番後ろにいた岡田に命令した。