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ギヴ アンド テイク for gals  作者: 月岡 愛
22/22

別れ・・・

東京を離れる前に、この生まれ育った、蒲田という街を今一度、振り返ってみたくなり私は、歩いてみることにした。


小学校をスタートとすると、この真裏の公園や体育館も変わってしまい昔の面影は全くない。私が子供のころはまだ区役所もあり図書館も一緒になっていた。体育館も三角形の変わった形で、女子プロレスの聖地とも言われていて、スポーツのイベントなどにもよく使われていた。体育館も分館があり、ここでは剣道やダンスなど一般向けに利用されていた。それが、今ではどれ一つとも残っていない。 近代的や新しい形にはなったが・・・


私の家の近所も平日の昼だというのに、静かな町になっている。この辺りには町工場があり、小学生の頃は、機械の音が所々で響いており、どの工場も活気があった。それが今では一軒家や建売、マンション、駐車場などに景色を変えている。 あの時代はどこへ消えたのだろう・・・


京急も平地から高架になって踏切が無くなり通行が便利にはなったが、あの開かずの踏切がなくなったと思うとなんだか寂しい。JR蒲田駅まで来てみても、昔はミスタウンなんて映画街があったらしいけど、そこも無くなりホテルになっている。ここら辺は、キャバレーなども多くあったようで、夜の街としては蒲田は有名だったようだ。駅ビルも屋上はちょっとした遊園地みたくなっていて両親と来た記憶はあるけど今では無くなり、入れなくなっている。


唯一、変わらないとこがあるとすれば、やはり、昭和島まで続いている、呑川緑地だろうか。ここだけは本当に昔と変わらない。中3のとき、朝、学校へ行くふりをしてよくここに来ては時間を過ごしていたな。朝の空気を吸いのんびりと歩きながら昭和島まで歩いて母が仕事に出かけた後に家に戻り、テレビを見ながらお菓子を食べてたな。 そんな私も大学生になる・・大学を卒業するときには22歳になっている。どんなになっているのだろうか。また、この町には戻ってはくるがその時には周りの景色も変わっているのだろうか。




その日・・・ 大きな荷物は先に大学の寮へと送り手荷物だけ持っていけるようにした。早朝5時、祖母がお弁当作ってくれて家まで来てくれた。一緒に東京駅まで来てくれ見送りをしてくれるようだ。明日からはこの家は祖母が住むことになる。父と母の写真を見ては、懐かしいのか微笑んでいるようだ。


(愛、電話だけはちゃんとしておくれよ。せめて愛の声だけでも聞かないとおばあちゃんも心配だからね。大学生活の4年間って長いようだけどあっという間に過ぎてしまうよ。愛が20歳を過ぎる頃って、きっときれいな女の子になってるよ。おばあちゃんもそれが楽しみなんだよ。 成人式には戻っておいでよ。愛の振袖はおばあちゃんがちゃんと作っておくからね。可愛らしくきれいに仕上げておくから。 )


(ありがとう。必ず、成人式には帰ってくるからね。)


父と母の写真に手を合わせ、荷物も手にとり、祖母と一緒に家を出てキネマ通りでタクシーに乗った。いよいよ秋田・・・か。タクシーの行く方向が蒲田駅ではない。どこに向ってるんだ? 


(おばあちゃん、何だか方向が違うよ。どこに行くの?)


(東京駅までタクシーで行こう。電車は人が多いし座れないから。お金のことは心配しなくていいよ。)


蒲田駅から京浜東北線で東京駅まで行くつもりでいたが、東京駅までタクシーなんて本当に気が引ける。祖母には何から何まで迷惑をかけてしまってるようだ。


東京駅に着くと秋田新幹線が出るまでまだ時間があり、待合室でちょっと待つことにした。周りを見ると人が結構多い。秋田だけでなく東北や北陸、また名古屋や大阪など出張や帰省、私みたいに移住なんて人もいるのか、こうして見ると、日本全国にこの東京駅からそれぞれ行くのだろう。 


あれ? 目の前に担任がいる。


(月岡さん、いよいよね。これね、クラスのみんなから・・・)


担任からは一枚の色紙と紙袋を手渡された。色紙にはクラスメイトたちからの寄せ書きがびっしりと書かれていた。紙袋の中身は手編みのマフラーと手袋だ。


(秋田に行ったらまだ寒いから、これ使って。私の手作り。なかなかやるでしょ?笑。)


担任が私のために編んでくれたマフラーと手袋・・・・


何だか秋田へ行くのが辛くなってきてしまった。

(先生、ありがとうございます。クラスのみんなに何も言えないで秋田に行ってしまうけど・・・)


(クラスのみんなも祝福してたよ。この色紙がみんなの気持ち。秋田に行っても忘れてはだめよ。)


(絶対に忘れません。この色紙は大切に飾ります。)



秋田新幹線の搭乗時間になった。赤いラインの新幹線はとても大きく見える。ホームで祖母と担任が出発までいてくれる。私もぎりぎりまで中には入りたくない。刻一刻と時間が近づいてくる。 これで担任とも祖母ともお別れか・・・


(愛 !) 


後ろから私を呼ぶ声? 


まさか? 


瞳は私に駆け寄り、抱き着いて頬を寄せた・・


(よかった・・間に合った。絶対に会いたかった。)



(どうしたの?なんで?ここに?)


(刑事さんが一緒に行こうって・・・)


(月岡さん、特別に許可が出たのよ。通常は許されないのだけど、刑務所の所長が私が一緒ならってことでなんとかしてくれたの。)



(昨日、同じ部屋の人たちと先生と刑事さんと刑務官の人たちが私の卒業式をしてくれたの。ちゃんと卒業証書ももらった・・・)


瞳は涙を流しながら話す。


高校の制服姿の瞳は、刑務所で見た作業着姿の瞳とは違っていた。穏やかな表情で明るさが戻っている。


(良かった。真行寺さん、ちゃんと卒業したんだよ。これで高校も卒業したんだよ。)


(うん。私、また勉強して大学目指す。出所したら大学受験目指して絶対に頑張る。そして、愛と同じ、大学に行く!愛に絶対に会いに行く。)


久しぶりに見る、瞳の笑顔だ。ようやく自分というものを取り戻してくれたようでこれで私も安心して秋田に行ける。


(私、真行寺さんのこと待ってる。ずっと待ってる。絶対に。)


私と瞳は抱き合いながら別れを惜しんだ。




(愛、頑張っておいで何かあったらいつでも帰っておいで。)


(月岡さん、成長した貴女を待ってるからね。)


祖母と担任との別れ・・


そして、刑事さんも、


(月岡さん、元気でね。彼女のことは私が見守るから・・)



出発の時刻。


私は座席に着いて、駅を離れるのを待った。ホームには祖母、担任、瞳、刑事さんが見える。


新幹線が少しづつホームから離れていく・・・・



瞳が私を見ながら歩いてきた・・・


(愛!・・・)


窓越しに微かに聞こえる瞳の声。


秋田新幹線は東京駅を後にした。



祖母から手渡された封筒の中に一万円札1枚と手紙が入っていた。



(愛、いっしょうけんめい生きてください。)



私は溢れる涙を止められず、それを抑えるかのように外に顔を向けた・・・



人には出会いがあり別れもある。その別れは、もう会うことの出来ない別れと、再会できる別れがある。 正直、瞳とはもう会うことは出来ないだろうと思っていた。しかし瞳から来てくれた。これも何かの引き合わせなのだろう。 玄さんたちもそうだが会うことの出来ない別れだったはずが、家族の方から来た・・私も玄さんたちも再会できる別れだったんだ。 玄さんも言っていたけど、神様は試練を与える・・・この言葉が理解できたような気がする。瞳との関係では色々な試練があった・・でもそれを一つ一つ乗り越えたことによって結果的に良い方向へと導いてくれた。これも神様のご加護なのかもしれない。



私のステージ1は、ようやく一つの区切りとして終えた・・・次は大学生というステージ2が待っている。新しい自分の人生・・・いろいろなことが待ち構えているだろう。しかし私は決して背を向けず向き合っていくつもりだ。 曲がり角の先にはきっといいことが待っている・・・その言葉を信じて・・・。






See you next….. Give and take ~ 大学時代編へ。



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