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ギヴ アンド テイク for gals  作者: 月岡 愛
2/22

出会い

瞳との出会いは私が高校2年の時、昨年の夏頃だった。教室で情報誌を眺めてるときに私に声をかけてきた。それまで同じクラスだったことも全く知らず、私も特に親しいクラスメイトのいないので気にはしてなっかったが、この情報誌がキッカケで、あまりにも親しげに寄ってくるので、始めは敬遠していたけど次第に(真行寺さん!)(愛~!)とお互いに呼ぶようになり関係も深くなっていった。


私は高校入学のときから親しい友達はいなかった。クラスで話すことはあっても授業が終わり帰りに遊ぼうなんてのは全くなかった。 私以外にも同じようなクラスメイトもいて、学校が終わったら、サッサと家に帰り1人で過ごしていたほうがラクという感じで、足早に駅に向かう生徒もいる。


私の高校は、1年ごとにクラス替えがあり、瞳とは高2のときに一緒になった。始めのうちは、瞳のことは全く知らなかった。会話した記憶もないし、全体朝礼や体育などで移動するときも、同じクラスにいたことすら気づかなかった。それほど私は人との触れ合いに無頓着なのである。


夏休みの前あたりに、授業の合間に無料情報誌をパラパラと眺めていたとき、瞳は私に話をかけてきた。これが瞳との出会いだ。


(バイト探してるの? 私もよくそれ、見るよ。)


(う~ん・・ま、ちょっと見てただけね。)


(私ね、学校が終わると家の近くでバイトしてるんだ。コンビニなんだけどね。)


(家、どこなの?)


(大森中。キネマ通りをチャリンコで行ってすぐかな。)


(え? 私は東蒲田だよ。図書館の近く。)


(えー??まじぃー??近所じゃん。ね、今日、お昼、一緒にしようよ。バイトの話もしてあげる。)


別にバイトの話などいいが、私はお昼は一人で過ごしたい女なんだ。だから一緒に食べようというのは・・・


そう言おうとしても、瞳は話し始めたら止まらないのなんのって・・


(××○○・・!!! □ ◇▽○○・・・・じゃ、お昼ね。声かけるから。)


すっかりと瞳の話術にハマってしまいお昼は、中庭のベンチで女同士のランチをすることになった。私はおじさんのパンを買って来て、瞳は自前のお弁当を持ってきていた。


(私、お料理作るの好きなんだ。だからお弁当を毎朝、作って持ってくるの楽しみなの。)


(私は、おじさんのパンが好きだからいつもこれ。)


(でも、その揚げパン、美味しそうね。ちょっとちょうだい?私もこっちあげるから。)


い、いや、やめてほしい。私は人の口にするものは大の苦手なのだ。ましてや口に入れた箸で私に、あーん・・なんて絶対にしないでいただきたい。と、その時、


(うーん、これサクサクして美味しい!! なに?これソーセージ?)


あー私の大事なロケットパンが・・・ 私の隙を見て、瞳は思いっきりパクついて食べてしまった。 


(それ、私のお気に入りで食べようと思ってたのに・・・)


(いいじゃん。私のおかずあげるから。ほい!これ、か・ら・あ・げ・・・あーんして?)


まさかと思ったが本当にやりやがった。


(い。いいよ。まだ、こっちのパンがあるから・・)


私は涙目になりながらエビグラタンパンを口にした。 


(これ、食べてよ。私の手作りなんだから。はい。)


そういうとお弁当のふたに、からあげと卵焼きを乗せて私に差し出した。


(い、いいよ。私はパンがあるし、これだけでいいから・・)


(なによ・・食べてくれたっていいじゃん。はい!)


食べたくはないが、ここはそうしないと気まずくなりそうなのでいただくことにした。 


(どう?イケる? ウフ。)


まぁ、ごく普通のおかずといったところか・・


(う、うん。美味しい) 


(そうでしょ? 美味しいでしょ?)


そう言っとかないと、後々めんどうなことになりそうだから。


(あ、毎日、パンばかりじゃ飽きるでしょ? 一緒にお弁当作ってきてあげる。)


いゃあーそれだけはご勘弁してくれ。 


(いいよ。私はパンが好きだから。お弁当はいらないよ。)


(じゃ、サンドイッチ作る。それならいいでしょ?)


・・・・ なんだこの子は? 



これを機に瞳は私に近寄るようになった。クラスでは私は一番、後ろの席で瞳は斜め3つ前に席があった。私のほうを振り向いては笑ったり手を机の下から振ったりとまるで彼氏彼女みたいな素振りを見せてくる。


(月岡さん、下の名前なんて言うの?)


(え? 愛だよ。月岡 愛。あ、まだ名前聞いてなかったね。何さん?)


(笑。何さんって・・真行寺 瞳。今頃、聞いてこないでよぉ。笑)


(真行寺って・・お寺なの?家。)


(お寺じゃないよ。名前。フフフ)


瞳と私の物語がここから始まった。 


毎日、顔を合わせてると馴れ合いが出て来てお互いの呼び名も変わってくる。 私は瞳を、真行寺さんと言っていたが、瞳は(愛〜)と子供の頃からの友人みたいに呼ぶようになっていた。


この頃になると、お互いの家にも行き来するようになり、瞳は私の家によく泊まりに来た。瞳の家は、キレイなマンションでそれに比べると私の家は平屋のボロ家。正直、他人に来てもらいたくない。ましてや、同級生なんて言ったら本当に嫌だ。 しかし、瞳は何とも思わないのか、逆に落ち着いてイイね、なんて言って夕飯の支度まで一緒にするようになった。



高校の授業が終わると、瞳はアルバイトをしており、一度、私も体験で働かせてもらったことがある。バイトが終わると瞳は真っ直ぐ自宅に戻り、洗濯、炊事、お風呂と1人で何役もこなしまた、大学受験という目標もあり勉強も欠かさなかった。


瞳の家族は、母が救命救急医の医師で、父も外科医か何かで今、海外に赴任している。だから、瞳は自宅に帰っても一人で過ごさなければならない。そのためか私には姉妹のように寄り添い、夕飯を一緒に作ったりお互いの家に泊まったりしていた。



瞳は高校でも成績は常に上位で、卒業後の進路は医学大学への進学を希望していた。始めは理系だか法学だか分からないが、ごく普通の学部だったようだけど、私と瞳は、一度、瞳のお母さんが勤務する病院に行ったことがあり、その時に見た最新の医療機器、(ダヴィンチ)、救急搬送する際に出動する(ドクターヘリ)、24時間365日、休むことのない救命救急医の人たち・・・それらを目のあたりにして考えも変わったようだ。お母さんと同じ救命救急の医師になる!と強く私に言ったことを覚えている。


学校の三者面談でも、ご両親の前でその気持ちを伝えており、推薦入学を学校側が提案しても、自分の力で受験して必ず合格すると強い意志を先生とご両親に見せた。


私の記憶が確かなら、この三者面談を機に瞳は少しづつ変な方向に向かっているような気がしていた。 物事や私に積極的になるのはいいのだけど、執着というか束縛というか今まで以上に私に対して口を挟むようになった。


まるで瞳が親で私が子。 そんな瞳が何か言うたびに私は、鬱陶しくなり会うのも嫌になって来た。 高校3年と言えば就職や大学受験で大変な時期である。私も進学か就職かと真剣に考えなければならない。 瞳は進路が決まってるからいいが私はこれから、あと半年ちょっとで高校生活も終わるのにまだ何も決まってないのだ。 少し、瞳と距離をおきたい・・・考えてみれば、学校でも私生活でも常に瞳と一緒だ。私のプライベートなんて無いも同然だ。寝泊りも食事も一緒、出掛けるのも常に私の横にいる。 一人になりたい・・・そんな思いが私の中で強くなっていった。


そう思ってる中、事件は起きた。 




覚せい剤取締法違反。 厚生労働省 地方厚生局 麻薬取締部が瞳を逮捕した。




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