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ギヴ アンド テイク for gals  作者: 月岡 愛
16/22

試験3日目

いよいよ大学との面接だ。どんな質問をされるかは分からないけど、ちゃんと受け答えが出来るかどうか、不安になる。刻々と時間が迫り、早めに身支度をし旅館の送迎バスで送ってもらうことにした。他の受験生も私と同じ気持ちなのかバスに乗り込んできて早めに大学に向いたいようだ。 


それにしても冬の秋田は雪が凄い。一面、銀世界ならぬ、白世界だ。雪の降る景色をバスの中から見てると祖母や母、父が浮かんでくる。 両親は今の私を見てどんな思いになるのだろう・・・祖母にも本当に助けてもらった。出来る限り恩返しをしたい。大学を卒業し、就職して立派な社会人になった私を見せたい。 だから絶対に合格しなければダメなんだ。 


大学に到着して、バスを降り大学キャンパス内の面接会場へと向かった。


面接会場は午前と午後の2回に分かれており、会場とは言っても、筆記試験を受けた別の教室で、受験番号順に分かれており5つの教室で行われる。私は5めの教室で午前9:30からの時間だった。 こう聞かれたら、こう言おうと色々と考えてるが、いざ本番になったら言葉が出てこない気がしてドキドキしてしまう。


相棒(iphone6s)を見ると時刻は、9:15。 あと少しで私の番号が呼ばれる。緊張のあまりトイレに行くことにした。 トイレから戻り椅子に座ろうとしたとき、私の受験番号が呼ばれた。


(120○○○番の方・・こちらへどうぞ・・)


教室に入ると、長いテーブルに3人の人が座っていた。その正面に私が座る椅子が一つある。 あれ? 3人のうち1人は、私の高校に来た人だ。この人が私の面接官になるのか・・


(月岡 愛さんでよろしいですね? では、椅子に座ってください。)


面接が始まった。


生年月日、名前、年齢から一つ一つ、伝えていく。 卒業した小学校、中学、今、通ってる高校、家族構成・・・思った以上に細かく聞かれる。


(月岡さんは、この大学に入学し、寮生活を送りながら授業を受けるのだけど、将来の夢や目標などはありますか?また、大学ではどんなことをしたいですか?)

何て答えたらいいんだろう・・・夢とか目標とか、どんなことしたいとか・・全然、分からないよ・・


(え?え・・あ・あの・・・つまり・・)


やばい。初っ端からつまづいた。早く考えて言わないと・・・


別の試験官からも質問が来る。


(高校では主にどんな活動をしてましたか?なぜ、うちの大学に来たいと思ったのですか?)


うぁ・・・また別の質問だよ。どうしたらいいんだよぉー


えーい。もう当たって砕けろだ。喋るしかない。


(え・・はい。わたしは・・・)


約20分くらいの時間だが、終わり教室を出ると体中の緊張感がなくなり、しゃがみ込んでしまった。 何をどう言ったか、まるっきし覚えていない。 他の受験生はどのような感じだったのだろう・・同じ旅館に泊まってる受験生たちにも聞きたいがそんな力も残ってなかった。でも明日は学校見学がある。 でも、もう自信が完全になくなってしまった。 ふぅ~・・私は本当に合格なんて出来るのだろうか・・・・


3日間の試験を終え、ホッとした。旅館に戻りお風呂に入り、部屋で夕飯を食べてるとき、コンコンと襖をノックする音がした。 開けると、受験生だった。 


(あの・・・初めまして。同じ大学の試験、受けましたよね? 私、石川県から来た、竹内と言います。)


(あ、はい。初めまして。月岡 愛と言います。東京から来ました。)


石川県から受験に来た、竹内さんは高校を卒業後、働くつもりでいたようだが、両親に説得され秋田まで来たようだ。やはり私と同じ、試験の結果がすごく気になるようで不安になり私の部屋に来てしまったみたいだ。 試験を受けた同士だ。いろいろ話したい。


(私も面接でもう、言葉が出てこなくて。マジで合格しなかったらどうしようって考えこんでたの。)


竹内さんも、

(私なんか、緊張のあまり足と手が震えて。試験官に落ち着いてって言われた。笑。)


私だけではないんだ。受験生みんな不安と緊張で大変だったんだ。そう思うと何だか気が楽になり竹内さんとも話が弾み、私の部屋で一緒にご飯を食べることになった。仲居さんが竹内さんの部屋から夕飯の支度を移動させてくれて、アイスクリームのデザートもサービスで持ってきてくれた。


(このアイス、美味しいね。東京にはないよ。)


(石川県にもこんな感じのアイスはないよ。)


何だか新しい友達が出来たみたいで、楽しい。 一緒に寝ようか?となり今度は私が竹内さんの部屋に布団をもっていった。 竹内さんは明日、石川県に帰る。帰れば後は合格発表と卒業式。私もそうだが高校生活も終わるのだ。 初対面で新鮮なのか、女同士、話が尽きない。 中学のとき土曜日の夜によく友達の家に泊まりにいったときのことを思い出す。


翌朝、一緒に朝食を食べて見送ることにした。


(また、会えるといいね。)


(そうだね。竹内さん、LINEで連絡し合おう。)


お互いにIDを交換した。 竹内さんは結子という名前だ。 ん?竹内結子?


(女優の竹内結子さんとおなじ名前なんだ。笑。ぜんぜん似てないけどね。フフフ)


(月岡さん・・絶対、連絡しようね。)


竹内さんは送迎バスに乗り、私に手を振りながら秋田駅に向かった。


私はあと3日、滞在して東京に帰る。 明日は学校見学でそれが終わると私の大学受験は一先ず終了となる。


翌日、私はキャンパス内、見学のため、大学に向った。昨日の雪から晴れて青空がとてもきれいに見える。東京と比べて秋田の空気は清んでいて気持ちがいい。 大学では私の高校に来た方が案内してくれることになっている。 総合案内センターに見学の旨を伝え、担当の方が来るのを待った。 しかし、この大学は本当に広くてキレイだ。それに天井がとても高い。行きかう生徒さんたちも英語で会話をしてるし、見てると伸び伸びと楽しそうにしている。こういう大学って、そうないだろう。


(やぁ、月岡さん、待たせたね。じゃ、行こうか。)


キャンパス内は、近代的でとても広い。この敷地内に生徒たちの宿泊施設もある。驚いたのは図書室。24時間利用出来て、その本の数が尋常ではない。まるで大型書店だ。 お昼に利用する、食堂はビッフェ形式になっており、中華、パン、タコス、サラダ、それにスィーツなど種類も豊富だ。


それに、スタバも入っているのにはビックリした。キャンパスの外にはテラス席もあり昼休みや休憩時間などもゆっくりと休めそうな環境だ。花や木も多く、本当にここは日本なのか?と思わせるくらい外国を感じた。


宿泊施設を案内されると部屋の間取りも見せてくれた。2人部屋でトイレとお風呂は共同。お風呂も銭湯のように広く、トイレも最新のカッコいいものだ。すぐにでも住みたくなってしまう。 もっと色々、見たかったが、時間の都合上もあり見学は午前中で終了。


(月岡さん、合格発表、楽しみにね。)


(は、はい。でも・・・・)


(大丈夫だって。きっと良い結果が出るよ。また、再会しよう。東京へは明日?)


(いえ、あと2日あります。私、合格して必ずまたここに来ます。)


(その意気込みだよ。待ってるぞ。)


担当の人にお辞儀して【秋田国際大学】を後にし、旅館の送迎バスに乗った。 


2日後・・・ 旅館の女将さんや仲居さん、働いてる人たちにお礼を言って東京へ向かうことになった。


(色々、ありがとうございました。ご飯も美味しかったし、新しい友達も出来ました。)


(受験、終わって、良かったわね。また、いらっしゃい。これ、新幹線の中で食べて。お弁当作ったの。)


女将さんの手作り弁当をいただいた。


(絶対に合格して、またこの秋田に来ます。)


送迎バスに乗りこんだ。 仲居さんたちが手を振ってくれている。私も手を振りながら

ありがとうございました・・・と言って旅館を後にした。少しの間でも触れ合った人たちと別れるのはとても寂しい・・・また、再会したいけどもし不合格になったらもう秋田に来ることはない。これも出会いと別れというものなのだろう。窓越しに見る雪景色が涙で滲んでいる。


秋田駅に着き、送迎バスの運転手さんにもお礼を言った。


(大学や駅まで送り迎えしてくれてありがとうございました。)


(いやぁ、いいんだよ。これが俺の仕事だから。大学、受かるといいな。きっと良い結果が出るよ。)


そういうと、あの赤い包みのチョコレート【キットカット】をくれた。合格と書いてある。


(これ、もっていきな。受験生にはいつも渡すんだ。また会えるといいな。よく頑張った。じゃあな。)


(ありがとうございました。)


運転手さんとも別れ秋田駅に入った。 秋田新幹線の品川行は午後3時。 おみやげのお菓子を買って新幹線に乗り出発を待った。あと20分ほどで発車だ。これでようやく東京へ帰ることができる。品川駅に着くころは夜7時くらいか・・


午後3時・・・出発だ。  私はこの一年、急な坂道を上がり下りしてきた。進路も決まらないまま春が終わり、夏が終わり、そして秋になり・・・。瞳との関係も壊れ、2つの事件の当事者。大学受験。それがここでようやく一区切りになる。あとは合格発表と卒業式を迎えるだけになった。 秋田新幹線から見える景色は夕暮れになりオレンジ色の太陽が眩しく顔に照らしてくる。 


私を支えてくれた、祖母、玄さんたち・・それに旅館の人たち、担任や校長先生・・・ありがとう。


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