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ギヴ アンド テイク for gals  作者: 月岡 愛
14/22

警察署で・・・

クラスメイトたちもセンター試験が近づき、バタバタと忙しくなってきた。通学の時もノートや教科書を開いている生徒たちも多い。当たり前だがあとわずかで大学受験が始まるのだ。


私も皆と同じ受験をしなければならない。勉強らしきことはしていたつもりだけど、他の人は私なんかよりもっと多くの時間を受験勉強で過ごしていたはずだ。 正直、試験で受かる自信はない。いくら推薦でといってはいても、試験で合格ラインをクリアしなければゼロになってしまう。 それに私の場合、センター試験ではなく直接、秋田まで行き受験、

面接をしなくてはならないのだ。 秋田新幹線に乗り、雪国の秋田へ・・・ 考えるだけで滅入ってしまう。 


あ、電話だ。誰だろうか?


(こんにちは。月岡・・愛さんですか?)


(はい・・そうですけど・・)


警察からだった。瞳の事件の担当刑事からだ。


(月岡さんね、時間があるときで構わないから、署に来てほしいんだ。事情聴取ではないから。)


なんでまた?行く?・・・ 瞳のマンションの管理人さんも来るようだ。いったい・・・


(できれば午前中にでも来て欲しいんだけどね。こちらから学校にも伝えるから。)


(先生にも連絡しますから、明日でもいいですか?)


(分かった。じゃ明日の朝、10時ころでいいかい? こちらからも学校に連絡しておくから。)


私も学校があるし、なるたけ早めにいくかな・・・担任に連絡し明日の午前中は警察に行く旨を伝えた。


(分かった。明日は休みでいいわよ。でも、なんだろうね?)


(私も分からないんですけど、でも、管理人のおじさんも来るみたいだし、聴取ではないっていってたから・・)


担任に電話をし、翌朝、早めに家を出て、警察署に向った。




 (ごめんね。何度も。じゃ、こっちの部屋で・・)


女の刑事さんが、会議室みたいな部屋に案内してくれた。 私より先に管理人さんも来ていた。


(お姉ちゃん、色々、大変だったろう? 俺もあれからマンションの管理組合とか会社の連中との話し合いとかあってさ・・・もう、疲れちゃったよ。笑。)


(私も、大学受験の事とかあって本当に疲れました。笑。)


お互い、笑顔で再会した。 と、そこに、事件の担当刑事が入って来て・・


(いや・・すいませんね。何度も。 本日はその後の事件の経過を伝えるのと、お二人にお渡しするものもあるので。 じゃ、ちょっと事件の経過から話します。)



刑事さんによると、瞳は逮捕後、取り調べですべてを自供した。どこで覚せい剤を入手したか? どんな売人だったか? 連絡先など事細かに伝えたようだ。そこから捜査が入り、密売人やアジトなどが浮上し組織解明につながったようだ。私が驚いたのは、密売人がごく普通の主婦だったことだ。暴力団関係者との深い付き合いがあり、覚せい剤を求めにくるのも同じ主婦仲間や高校生、大学生など一般の人を対象に売りさばいていたらしい。この密売人の主婦も家庭があり、中学生と高校生の子供がいて私と同じ、高校生は大学受験を中学生は高校受験を控えていたようだ。 この主婦、見た目、ごく普通の家庭って感じでとても密売人には見えなかったそうだ。 


密売人というと、外国人や暴力団関係者を思い浮かべるが、ここ最近は、ごく普通の一般人が多いらしい。中には大学生や高校生なども含まれているようだ。


刑事さんの話を聞いてると本当に、心が折れそうになってしまう。


(で、真行寺さんは今、どうしてるんですか?)


(お友達は、まだ、裁判の途中なんだ。だから拘置所というところで結果が出るのを待ってる状態なんだ。まだ・・・少し、かかるかな?)


(瞳とは・・・真行寺さんとは会うことはまだ出来ないんですか?)


(うん、出来ないことはないんだけど、ハッキリとした判決が出てその後がどうなるか決まるまでは控えた方がいいと思う。でも、そんな長い期間ではないから、すぐに会えるよ。その時は必ず、連絡するから。)


犯罪を犯して逮捕されるというのは思ってるほど甘くはない。特に、危険ドラッグや覚せい剤、大麻など、薬物犯罪はとても厳しい。だって、私と同じ年の瞳が、まだ未成年というのに、成人と変わらない扱いを受けている。 今、瞳はいったい、どんな思いでいるのだろうか・・・・


刑事さんの話が終わり、女の刑事さんがお茶とおせんべいを持ってきてくれた。


(どうぞ。熱いお茶でも飲んで。フフフ。このおせんべい私の田舎のなの。美味しいわよ。もう少しで署長室に案内するから。)


署長室??? 何しにいくんだろう・・・


管理人さんと、お茶しながら食べた。 少しくつろいだところで、女の刑事さんが所長室に案内してくれた。部屋に入ると、とても偉い感じの人とカメラを持ってる人、その周りを囲むように警察の制服を着てる人たちがいた。


(今日はね、月岡さんと管理人さんに警察署長から(感謝状)が授与されるの。)


感謝状??? 


(月岡 愛さんだね。じゃ、前に出てそこに立って。) 


ご年配の警察官の方が私を誘った。 警察署長が感謝状を読み上げた。


私と管理人さんは、瞳を救出したこと、それが元に麻薬密売組織の解明につながり犯人逮捕までいったことにより警察から感謝状を渡されることとなった。 しかし喜んでいいのかどうか私の中では気持ちの整理がつかない。


(同級生は大変なことになってしまったけども、月岡さんや管理人さんの協力によって犯人逮捕までいくことが出来たんだ。これには本当に感謝する。ありがとう。)


署長が私たちに言った。 感謝状授与の場面をカメラで撮影され、これが(けいしちょう)という機関紙と明日の朝の新聞に載るようだ。 でも、何だかしっくりとこない・・本当に感謝状なんてもらっていいんだろうか? 瞳を警察に売って私は感謝状・・・どうしてもそんな思いが過る。 警察署を後にして管理人さんと一緒にタクシーに乗った。自宅まで送ってくれるくれるようだ。 嬉しい・・


(俺もね、感謝状なんてもらっていいのか?って思ってるんだ。お姉ちゃんのお友達を助けたことは良かったけど、犯人逮捕までってなると、何だかお友達をエサにしたみたいでさ・・・)


管理人さんも私と同じ思いだった。 でも、もう考えていてもしょうがない。いまさらどうこう思っていても、瞳は元通りにはならないのだ。こうなったのも、私にも責任があるしあとは、時間の流れに任すしかないのかもしれない。


自宅についた。管理人さんともここでお別れだ。


(じゃ、またな。受験、しっかりと頑張りなよ。)


(はい、ありがとうございました。)


私も気持ちを切り替えなければいけない。自分のこともあるんだ。あと少しの間で、本物の大学受験が待っている。不安がとても大きいがもう後戻りは出来ないのだ。 






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