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Die fantastische Geschichte 0  作者: 黄尾
異世界の仲間達に関する所感
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0-11:異世界の仲間に関する所感・ライオネル

【0-11:異世界の仲間に関する所感・ライオネル】


 夜の野営地にパチパチと薪の爆ぜる音だけが響く。背後にあるテントの内側へ意識を向ければ仲間たちが静かに眠る気配を感じる。今の所敵襲は無く、仲間たちにも異常は無いようで安心する。

 ツヴァイの町へ向けて出発してから二日目、山を越えればすぐに町があるという所まで来ていた。山の天気が変わりやすいことは知っていたが、昼に降った激しい雨はさすがに予想外だった。そのせいで行軍を一時中断せざるを得なかったために予定より遅れてしまったが、明日の午前中には町に入れるだろう。交代で見張りをしながら、夜が明けるのを待って山を下りるつもりだ。


 今はライと二人で見張りをしているが、会話も無くただ時間だけが過ぎてゆく。私は元々口数の多い方では無いと自覚しているが、ライはさらに輪をかけて無口だ。いつも無表情か少し不機嫌そうな仏頂面で感情を露わにすることが極端に少ない。ライを見ていると私も他人からはこう見えているのだろうかと思ってしまうが、まだマシだというシルバの言葉を信じることにしよう。そのための性格分析でもあるのだからな。

 身動ぎすることも無く静かなライに、もしや寝ているのかと疑うが、明かりに照らし出された顔に目を向ければ、普段通りの無表情でしっかりと火を見つめ続けていた。そこから彼が何を考えているのかは読み取れない。沈黙を気まずいと思っているのか、全く別の事を考えているのか。

「何か用か」

 向けられる視線に気づいたのだろう。焚火に向けていた顔をこちらに向け淡々と声をかけてくる。眉根を寄せているので少し機嫌を損ねてしまったかもしれない。何も言わずに見られ続けるのは彼でなくとも嫌だろう。悪いことをした。

「いや、すまない。疲れているのではないかと思ってな。昼の戦闘でだいぶ消耗しただろう」

「……問題ない」

一言だけ返してまた焚火に視線を戻してしまう。言葉通り今は大丈夫そうだが、考えの読めない彼相手では、実は疲労を隠しているのではないかと心配になる。日暮れ前に戦った魔物の中に一際強い個体がいて体力を消耗したのは皆同じなのだが、留めを刺したライは大技を使っていたこともあって少々気になっていた。


 雨が上がりぬかるんだ地面に注意しつつ山を進んでいた矢先の遭遇だった。

「かっっっってえええ! なんだコイツ、超硬てえぞ!」

思い切り剣を叩き付けた反動で手が痺れたのか、ゴウが手を振りながら涙目で叫ぶ。巨大なアルマジロのような魔物は非常に硬い外殻に覆われているようだった。腕力のあるゴウが全力で剣を振り下ろしたというのに、傷一つついていない。

「物理攻撃が効かないなら魔法で、と言いたい所ですが……どうやら魔法耐性も高いようですね。厄介な相手です」

魔物の魔力を分析したセドナは険しい表情で告げる。体力を削れないことはないが、時間が掛かりすぎる上に敵はこれ一体ではない。周りの敵に妨害されている間に回復するかこちらが大打撃を受けるのは明白だ。

「あの硬さは魔法では無いようですし、私では打つ手がありません」

剣も魔法も効かないとなれば長期戦になる。威力のある攻撃を受け続けることになればこちらが不利だ。外殻の隙間を狙えるだろうかと思案するも、掠めただけで大怪我を負いかねない魔物の攻撃を掻い潜って接近戦を挑むのは危険だと判断する。出来て一撃離脱だ。しかしそれでは魔法で少しずつ削るのと変わらない。

「……周りを黙らせろ。一度だけ仕掛ける」

 黙って魔物を見ていたライが口を開いた。何か策があるのだろうか。

「周りの敵を抑えるのはいいが、何をするつもりだ? 倒せる当てがあるのか?」

「効くかは分からない。それに使えるのは一度だけだ。失敗すれば終わる」

だからこそあの魔物だけに集中できるようにしろということか。絶対に効果があるとは言い切れないのが不安だが今はライの策を採ってみるしかない。

「分かった。……全員ライの援護に回れ! 周りの雑魚を寄せつけるな!」

他の仲間たちに指示を飛ばし、魔物に向かうための道を作る。ライは真っ直ぐ敵に向かいながら武器の形を変え、手にしたのは刀。普段はあまり使う姿を見ない武器だ。魔物の攻撃を躱しながら接近し、魔物の死角に入った彼は立ち止まったかと思うと、刀を上段で構え片足を引く。目を閉じ精神を集中させた彼からは並々ならぬ気迫を感じた。

「〈(くろがね)を以て阻むこと敵わず。我が刃に断てぬもの無し〉――」

構えた刀を振り下ろす。詠唱と共に光を帯びた刃は、鋼鉄の体に吸い込まれるようにして叩き込まれた。

「――〈斬鉄剣〉!」

いかなる攻撃を以てしても傷一つ付けることのできなかった魔物の体が、一刀の下に両断される。断末魔すら上げることなく真っ二つにされた魔物はゆっくりと地面に倒れた。

 ライは刀を弓へと変えると魔物から離れそれ以降は後衛に徹していたが、普段通りの無表情にわずかな疲労の色が見えた。あれほどの大技ならば消耗も大きいに違いない。一度しか使えないというのも恐らくそれが理由だろう。


 戦いのことを振り返ってふと思う。いつも交流を避け冷たい物言いをする彼だが、決して冷淡なわけではないのかもしれない。一人では不利になる策を採った辺り、仲間と協力する気はあるようだ。一応共同生活のために設けた決まり事は守っているので、少なくとも協調性はある。単独行動に走ることもなく、馴れ合うつもりは無いとだけ言う彼の考えは今は分からない。

「二人ともそろそろ交代の時間だよ。さっさと寝て明日に備えな」

「ライ、本当に寝てていいからな。むしろ見張り役で何とかなる内は呼ぶまで起きないでくれよ」

「…………」

 時間になりエルヴィラとフィリオンが交代を促してくる。フィリオンが釘を刺すと、ライは不機嫌そうにしながらもテントに入って行った。気配に敏いのか眠りが浅いようで、近づくと起きてしまうので寝顔を見たことがない。昨晩、見張りの私とフィリオンが魔物の気配を感じたと同時にテントから出て来たのには驚いた。危険を察知してすぐに目覚められるのは戦士として頼もしいが、仲間を信頼していないせいで常に警戒している結果だとしたら複雑だ。


 まだ心を開いてくれていないのかもしれない。距離を取ろうとする彼にどう接するべきかまだ迷う仲間もいる。何が原因かは分からないが、いつか蟠りなく語らうことができれば良いと願う。


【Die fantastische Geschichte 0-11 Ende】


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