俺は今日から亭主関白になる
録画していたテレビ番組を見終えると、俺はソファーへもたれかかった。そして、隣に座っていた妻に宣言する。
「決めた。俺は今から亭主関白になるぞ」
「何なの、いきなり」
「いや、実は前々から思っていたんだ。どうして一家の大黒柱が家事の手伝いをしたり、買い物に付き合わなくちゃならないのだろうと。さっきの番組を見て決心した。もう二度と、お前のために動いたりしないからな。もし文句を言ったら」
「言ったら?」
俺は無言で、妻の前で手のひらをグーにした。小中高と空手を続け、都大会でも入賞を果たした拳。もはや口にするまでもないだろう。
「……馬鹿みたい」
と、妻は小馬鹿にした口調で言い放った。ソファーから立ち上がると、冷蔵庫を開けた。
「あなた、晩御飯作るから食器並べて」
「断る」
「ならテーブル拭いて」
「却下」
「だったら」
「くどいぞ」俺は妻の言葉を遮った。「お前の言うことなど誰が聞くか。おい、茶を淹れろ。あと晩飯だが、お前の料理など食いたくない。ソファーでくつろいでいたほうがまだマシだ」
妻は怒るどころか、むしろ呆れて溜息をついた。
「もう、腰が抜けて動けないっていい加減認めなさい。ホント、お化けが嫌いなくせにもの好きね。あのホラー番組怖かったでしょ」
俺は何も答えず、ただ首を縦に振った。
両足の震えはしばらく止まりそうにない。
怖いもの見たさというのは恐ろしいものである。
某番組で思いつき書いてみました。