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っく……キャンパスライフが俺を呼んでいるぅ!?
メアリー、何と愛らしいことだろうか。私と別れてもう何年も経つと言うのにその無垢なる心を残したまま、美しい姫へと成長している。メアリーが笑えば世界の花々は咲き誇り、メアリーが泣けば天が共に泣くだろう。そうに決まっている。
「メイエ様、メアリー様が笑顔でいるからと言って、お心までお花畑になさらないでください」
何を言っているのだこのメイドは。私はただ、メアリーと言う美しい花を愛でているに過ぎない。この務めは私の役目であるし、やれといったのはアラーナだろう。とは言え……
「メアリー、ここはあまり騒ぐ場所ではない。初めて王都に来てはしゃぐ気持ちはわかるが、その……非常に目立っている」
「ふぇ?」
ここはグリーベルト侯爵邸。侯爵の趣味で集められた食べ物を食し、侯爵の趣味で集められた美術品を眺め、侯爵の趣味で集められた貴族達が集う場所である。
残念ながら今日は侯爵は出席なさらないようだが、わがまま侯爵だからこそだろうか、欠席してもこの集いを中止することをしなかったらしい。
メアリーは珍品に心をときめかせているのか、夢中で周りが見えていないようだ。そのせいで男女問わずメアリーを見て、苦笑している。
「ご、ごめんなさい。グランマールでは見たこともないものばかりでつい……」
「よいのだ。さあ、楽しんでおいで。あっちで若い娘達が盛り上がっている」
「お姉さまは何処かに用がお有りですか」
「私は……」
「行きましょうお姉さま!」
メアリーに急に手を引っ張られたせいで転びそうになりながらも体制を立て直した。メアリー、私を何歳だと思っているのだ。あの様な若い娘達に混じるような歳ではないぞ。
「私もお話に入れてもらえませんか?」
メアリーが彼女達との話に夢中になっている間にこっそりとこの小さな集団を抜け出し、アラーナのもとへと向かった。
メイドたちは入り口付近で皆姿勢正しく立っていて、皆貴族のメイドであることは一目了然だ。たかが給仕であろうと一流品を好む貴族達のニーズに答えるだけのメイドだ。
「アラーナ、少し用が出来た。すぐに戻れるとは思うが、戻れない場合はメアリーを連れて屋敷まで戻って欲しい」
「かしこまりました」
アラーナに後の事を任せて、そのまま守衛のところに向かう。
「……ルーシュ」
後ろから声をかけてやった。人並みに驚いたことに私も驚いた。王都に駐留している我が騎士団のメンバーがこのようなところで、こんなにも大勢の人員を割いて貴族の守衛などやる必要がどこにあろうか。
「メイエ・グラシアン殿。今日はご機嫌麗しゅう……」
「何をやっている」
「そのような口調を聞かれては他の騎士にバレてしまいます」
さすがに騎士団の副長がこのような格好をしていては示しがつかない。
「ルーシュ殿。お頼みしていました、名簿票はどちらに」
「これにございます」
「ルーシュさんにあんな女の知り合いがいるだとぅ!?あのコワモテ爺に限ってそんなことはありえん!」「どうせ娘だろ?」「娘が貴族ってことかよ!?」「あの顔の父親からあれほどのものは生まれないだろ」「異論はない」「それにしても……いぃっ」「ああ」「……異論はない」
「変な声が聞こえるのですが、空耳でしょうか」
「空耳にございます」
「……ふむ、明後日このメンバーを南門に」
「かしこまりました」
万が一にしてはやりすぎただろうか。しかし、ドラゴンが暴れまわったとすればこの王都とて甚大な被害を受けることになる。ドラゴンをうまく誘導し、王都から遠ざけねばならない。
「ルーシュ殿。こちらに」
ルーシュを庭の中に連れて、人の目を避けよう。
「何故ここにいるのだ。雑用のそうなことを神に仕える我々が……」
「騎士団長の命令です」
「……」
「無防備な副長をお守りせよ。との事ですので、はい」
「何なんだあいつは……」
私には頭を抱えるしか選択肢しか残されていなかった。
あ、感想、ダメだしいろいろ待ってます。面白い、面白くない的な簡単な意見でもいいので一言よろしくお願いします。
一人で書いてると迷走している気がして……。