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「ルーシュ」


「やはり、バレてしまいましたか」


「隠さぬことにした。全ては私の杞憂であった」


「そう、ですか。……何用で?」


「対ドラゴン装備を用意させておけ」


「ドラゴン……現在大神殿に保管されているのみとなりますから、一月はかかります」


一月では遅すぎる。確か国軍の作戦は三日と待たずに開始されるはずだ。


何も起こらないことを祈るしかあるまい。万が一と言うこともあるのだから、備えていても損はないだろう。


「ルーシュ、騎馬隊を50人で編成するとしたならば、メンバーはどうする?」


「貴族出の騎士ならば馬の扱いに慣れている者は多いはず。その中からある程度は選出できます」


「メンバーの名簿を頼めるか」


「必ずや明日の夕暮れまでには。副長……いえ、メイエ副長は何を考えているのですか」


「ドラゴン退治だ」


ルーシュは顔色一つ変えずに私に問うた。


「あの森にはドラゴンがいるのですか」


「暴れ出すかどうかもわからん。備えるだけだ」


ルーシュと言う男は最年長ということを誇ったりはしない。ただ運良く生き残っただけといつも語る。

元々ロードル騎士団に属していたわけではなく、とある魔獣によりほぼ全滅に追いやられた騎士団の生き残りらしい。

酒が入ると、この男が饒舌になるのは意外と言えば意外である。

少し前に騎士団の歴史を語られたのは非常に厄介だった。



「わかりました」



用事が済んだと思えばさっさと何処かへ行ってしまうのも、ルーシュの特徴である。







夜も更けてきているが意外と早く帰ることが出来た。私の屋敷にはアラーナ一人だけになっている。王都も物騒になっているのだから、賊が入るかもしれない。


「それで、早く帰ってきた、と」


「理由はいくつもある。アラーナが心配だったのもその一つだ」


「左様にございますか」


「私がいない間に何かあったか」


「メアリー様よりお便りが届いております」


メアリー、私の妹だ。とても病弱な子であったが、聖女様に助けていただいて以降元気な姿を皆に見せているらしい。

私と七つも離れていて、愛らしく、一日中愛でてあげたい。


「内容は」


「メアリー様はグラシアン領を五日前に発ち、明日中には王都に入ると」


「明日!?」


あまりに急すぎる。私に会うためだけに王都に来る訳がない。ならば、私に前もって話を通しても……あのクソ親父め。


「メアリー様をお迎えする準備は出来ております。今日は夜も遅いですから、お嬢様は自室でお休みになってください。明日はそれなりの服を着ていただきます」


「え゛」


「何か問題が?お休みなさい」


またあのような動きにくい服を着なければならないのか。否、メアリーに会うだけならば楽な服装でもいいはずなのだから、いつも着ている服を持ってくるはず……







朝食を終えた私を待っていたのは、真っ赤なドレスである。それも深い深い赤、胸元が遠慮気味に開いているドレスである。


「……どうしてこのような服を着なければならんのだ」


「先達の方がメアリー様は王都にてお遊びなさるとのことで、お嬢様も一緒に参加してほしいと言っていました」


「……私は行くと言っていない」


「行かないのですか」


……アラーナめ、手を進めながら何を言うか。私が行かぬはずがないと踏んでいるのだな?アラーナよ、私はすでに妹離れしているのだ。知将アラーナ敗れたり。

妹と聞けば、どんな危険をも冒しす心持ちであったあの頃の私ではないのだ!


「……い、いいい行かないにききき決まっておろう」


「その言葉をメアリー様が聞けば、さぞお悲しみになられるのでしょうね」


「……」


「今日は騎士メイエをお忘れください。グラシアン家のメイエお嬢様として王都に不慣れなメアリー様を見守るのです」


「剣も持ってはならぬのか」


「お嬢様、騎士をお忘れください」


「私は剣をもって守ることしか知らぬ」


「剣では守れないものもあるのです」





あー動きにくい動きにくい。帯剣してないせいで身体が異様に軽く、バランスが悪い。

メアリーはすでにこの屋敷に着いて、用意した部屋で長旅の疲れをとっているようだ。メアリーに着いてきたメイドがアラーナの指示でせっせと荷物を部屋へ運んでいる。随分と多い荷物から察するに長くここに滞在するのだろう。


「お嬢様、メアリー様がもうそろそろご挨拶に来られます」


どこから現れたのかアラーナである。先ほどまで、メイドたちに働け働けと言っていたはず。


「そうか、応接間に来るように言っておいてくれ」


アラーナは普段から無表情であるが、今日は少し厳しい顔をしているように見える。折角の可愛い顔が台無しだ。

因みにこの屋敷にアラーナが来て、アラーナが笑ったことは数回程度だが、その全てが非常に可愛いのだ。もちろん私の心の中に刻銘に残している。


「どうした、眉間に皺が寄っているぞ。メイド等の働きが悪いのか」


「……」


「だんまりとは珍しいな」


アラーナは口を閉ざしたまま、私から目線を下にずらした。

若いメイド達に何か言われたのだろうか。意外と打たれ弱い人間なのかもしれない。


「早く、メアリーに伝えてきてくれないか」


アラーナはいつもと変わらない速さで、メアリーのもとへ向かっていった。


「休みでもとらせたほうがいいのだろうか」





 


PVが800……ありがとうございます!

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