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書き溜めが尽きただとぅ!?
ドラゴン……我が神の敵である魔獣と近き、また遠きもの。心動かせば邪に染まり、また動かせば善に染まる。
彼らの力は人など到底及ばないところにいるとされる。
そのようなものを鎮めるだと?
「ドラゴンを如何にして鎮めるのですか?」
「よくわかりませんが、私達が動物の肉をたくさん与えればいいそうです」
「……」
「心配は無用です。ドラゴンは大人しい生き物と聞いています。私達を取って食べてしまうことはないでしょう」
生け贄を要求したドラゴンもいるくらいだ。心配しないはずがない。
我々も待機しておくべきだろう。しかし相手はドラゴン。こちらの被害も覚悟しなければならない。
……生暖かい水。手を大きく振り上げた目の前の少女。
「……」
「ああ、ごめんなさい。あまりに真剣なお顔をされていたので、つい……」
神の剣たる騎士に清き水とはいえ、かけてしまったのだ。それ相応の罰を受けなければなるまい。
「天罰じゃ!」
私も水を掬い上げ、水を少女へとかけてあげた。なんと優しいのであろうか私は。
「これでおあ……」
顔面に突如水がかかる。水を拭うとクスクスと笑う少女。
そう、まだ彼女は子ども。私は大人。彼女もまた大人への階段を上っていくのだ。ここで大人として手本を示すことも必要だ。
「まずは話し合いから……あうっ……フフフ」
「おりゃあっ!」
「相手が騎士様と言えど、負けません!」
不毛な戦いだった。この戦いには一人の勝者もおらず、一人の敗者もいないのだ。
「シラ様、キス様は水浴びを終えられたようです」
「えっ……ちょっと待ってえええ!」
シラ様はどこかへ走って行ってしまわれた。
さて、私の仕事は終わった。早くここを発って警戒の準備に掛からねば。
「被弾している……抜かった」
シラ様は裸、私は衣服を着ている。戦いは始まる前から勝敗を決していたようだ。
下着が透けているままであの優男に会うわけにはいかないとなれば、鎧を着るしかない。
「うっ……気持ち悪い」
仕方の無いことだ。馬車の中の荷物に着替えを置いていたはず、早く戻りたい。
途中で優男に会い、王都に戻ると伝えた。
予定よりも些か早いが、ドラゴンの件もある。師団長らにも挨拶することなく私は馬車に着いた。
私が馬車に入ると、すぐに騎士二人が入ってきた。私の知らぬところで守ってくれていたのだ。
「今日はどうもありがとう」
私が声をかけると、二人は急に狼狽し始めた。
「い、いえ!これは我々の仕事ゆえ!」
「そうか。ところで私は今から服を着替えたいのだ。後ろを向いていてほしい」
馬車の中に入ってすぐに着替えようと思ったのだが、この者達がすぐに入ってきたので今に至る。
どうせ、女ながらに騎士をしているものの体など興味もないだろうが、私にも羞恥心はあるのだ。
「もういいぞ」
「ぷはあー!」
二人とも顔を真っ赤にして大きく呼吸しながらこちらを向いた。
「誰も息を止めろとは言っていない」
面倒だから鎧を着ることはなかった。窓の外はずっと同じ風景が続き、さすがに私も眺める気持ちにはなれなかった。
「副長」
「なんだ」
「副長のお名前を教えていただけないでしょうか」
「メイエだ」
「メイエ副長ですね」
ロードル騎士団には副長が複数人いる。
副長の認定は全て大神殿にいる聖女様が決めるとされている。
副長一人ひとりにそれぞれ任務があり、それを終えれば副長を辞するのが通例である。ちなみに私の任務は秘密だ。
副長が複数人いるため部下達は名前を一緒に呼ぶのだが、私は名前を明かすことも近しい部下とはまともに話したことすらないために必然、私は副長としか呼ばれない。 名前を呼ばないことこそが私を示すのだ。
「君達の名は?」
「えっ!?」
「!?」
「知らぬ者のほうが多い私の名を明したのだ。君達の名を私が知らぬわけにはいかない」
人懐っこい笑顔の青年はルド、寡黙な青年はラース。
二人とも貴族の生まれらしく、偶然にもルドもラースもグラシアン領と隣り合う領主を父に持っているらしい。
少し前に騎士団に入ったらしく新人らしさが抜けていない。二人とも16歳だそうだ。あの少女もこの新人も妹と近い歳だろう。何か認めたくないものを認めなくてはならないようだ。
「ルド、ラース。君達は何故騎士になったのだ。いつ死ぬかわからないのだ。普通に生きていても誰も文句は言わないだろう。それに貴族なら知っているはずだ。今騎士であると言うことはどう言うことであることか」
「ただ我が領を守りたいだけです。それはラースも同じはず」
ラースに視線を向ければ彼は頷いた。
「そうか。今だからこそ騎士になったのだな。」
一眠りすると窓の景色は変わり、大きな城が見えてきた。
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