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【勃発企画】妖精な妹は夜だけ魔王

作者: Zj1Lm88U

頭からっぽでどうぞ。


 草木も眠る丑三つ時。窓から見えるお月様が肥えに肥えたその夜。それは起きた。


「――ふふ」


 暗闇の中で奴は息を漏らした。込み上げる期待を抑えるような、はたまた俺の失態を嘲笑するかのような甘い吐息。官能的でさえある奴の声に背筋が痺れる錯覚を得、次いで腹部に感じる暖に腰が砕けそうになる。

 それは女の声だった。鈴の音を転がすようなソプラノに女特有の丸みを帯びた声域。そして、俺がよく知る者の声でもあった。


「――さあ、その身体(マリョク)……余すことなく我の糧にしてくれようぞ」


 押し寄せる快楽から身を捩らすように、彼女は堰を切った。同時に、俺の身体に撓垂れていた肢体が包囲を狭めるようにして密着してくる。



 閉ざされた密室。窓辺から差す夜光を背後に。一種、幻想的と言える状況で俺は――――妹に押し倒されていた。






□■□■□




 俺には今年で中学二年生になる妹がいる。

 平々凡々を絵に描いたような俺とは違い、非凡をそのまま擬人化したような完璧超人の如き妹だ。

 まず目を惹くのが日本人形のように長く艶やかな黒髪。そして中学生にして年上のお姉様真っ青の欧米さながらのボディ。最後に計算し尽くされた黄金比によって並べられた顔のパーツ。この次点で思わず頬を抓ってしまうであろう程の美少女が出来あがる。

 次に、天才と例えるのもおこがましい程の頭脳。何をやらせても万能という神の采配を疑うような優秀さだ。もはや嫉妬する隙すら存在しないというのも清々しく思える。

 そして極め付けに、本人の人格が整っているという点。その勢いや凄まじく、聖人やリアルモーゼを再現する超越っぷりを発揮している。ガンジーでも助走つけて殴るレベルというのはまさにこのことだ。


 容姿端麗で成績優秀で品行方正。そんな才色兼備な妹が俺にはいる。


 ただ、俺からすればどうということはない話ではある。

 少しばかり身内贔屓が過ぎてしまったが、ちょっと他の子供より優秀というだけだ。時には異性からのラブレターであたふたしてたり、同級生との喧嘩で泣き面を見ることだってある。その辺にいる子供と対して変りもない普通の子だ。幾ら美句麗句を並べても、兄からすればただの妹でしかない。


 と、些か話がずれてしまったが俺にはそんな妹がいる。

 前述した通り、目に入れても痛くない自慢の妹なのだが――ある夜を境にその認識は破壊されてしまった。それはもうゲシュタルト崩壊もかくやと思える程だ。


 これから語るのはその崩壊の序曲。俺と妹に遭った一つの事件。忌わしくもあり、惜しくもあるエピソード。臆せずして全裸で聞いてくれ。

 じゃあ、始めようか。




□■□■□




 その日の始まりは、いつも通りの朝だった。

 毎朝四時四四分四四秒キッカリに隣の部屋から聞こえる目覚まし呪文で起床。身支度を余裕を持って終わらせ、隣の部屋から響くラップ音と共に朝の体操を軽く流す。そして頃合い良く朝飯が出来たので家族揃って食す。いつも通りの朝だ。

 ただ、普段と違ったのはここからだ。


「夫婦水入らずで旅行行ってくるね。ばきゅーん」


 ラスト沢庵を空中で奪い合っていた俺と妹を前に、爆弾を投下したのは両親のどちらだったかは定かではない。正直、空中分解を起こす手前の沢庵の方が大事だったので記憶にすら残っていなかった。


 そうして沢庵が帰らぬ物となって暫くした後、何事もなく俺達は学校へ向かったのだった。


 学校はさして変わらず異常はなかった。

 毎日のように現れる妹信者との単行本六六巻に渡る熱き戦闘を繰り広げたり、妹がU-1ばりのニコポを振り撒いていたり、見知らぬ男の子達から「お義兄さん……」と性的に親しまれたり、昼休みの間に異世界トリップして世界を救ったり、いつも通りの学校生活と言えただろう。


 ただ気掛かりと言えば一つ。学校帰り、校門前で妹を出迎えた時の話だ。

 その時の妹の表情といったらそう……ナイアルラトホテップも顕現するのを躊躇うような満面の笑顔だったということぐらいだ。

 何の気もなしに理由を問えば、今朝の出来事が原因らしい。どうやら俺と沢庵争奪バトルを繰り広げていた妹は実のところ残像で、本体は両親から自宅の合鍵と食費を預かっていたのだという。道理で今朝の沢庵は美味かった訳だ。


 そんなこんなで俺達は自宅についたのだが、その時の妹はまた一味違っていた。

 そう、普段通りの妹なら「びっくりするほどユートピア」と合言葉を囁きながら玄関に駆け込むのは諸兄ならご存知の通りだ。だが、今日の妹は最高にヴェルタースオリジナルだったようで門前に立つや否や、


 ――鍵を使って玄関の扉を開けてみせたのだ。


「――ッッ!?」

 俺は声にならない悲鳴をあげた! 人知れず、戦慄を抑えるように……!

 それほどまでに今起きた現象が信じられなかったのだ。

 例えるならば、コンポタが缶から中々出てこない時なもの。

 まさか不良品と呼ばれたアブトロニックのような俺をここまで震えさせるとは……。


 妹があたかも当然のように扉を解錠するというこの状況――。


 平素ならばタマゴ理論もかくやという方法で試しの門をブチ破るか、何事もなく自室のある二階の窓際に飛び乗るというのに。

 ――完膚なきまでに、圧倒的だった。


 後に未曾有の大事件と評されるこの脳内悲劇。

 流石の俺でも見て見ぬフリなぞ出来る訳がなかった。


 だからこそ、だろうか。

 この直後、俺が咄嗟にとった行動はまさに天啓と言えた。

 さながら、窮地に追い込まれた勇者が如き覚醒。

 今ならバーサーカー打倒だって夢じゃない。

 俺は――、











「今日のおやつはバナナがいいな」











 あれから二人仲良く夕飯を食べ、テレビを鑑賞し、風呂に入る。

 そして床に就き、隣の部屋から聞こえる定時のBGMを楽しみながら目を瞑った。


 何事もなかったかのように終わっていく一日。今日も実に平和だった。

 

 寝る間際とは言え、フラグを建てるのも忘れない俺。

 流石と言える配慮に、今頃街中のイベントは喝采していることだろう。

 勿論、隣の部屋にいる妹も例外ではなく――、


「フゥーハハハ!」


 ――狂気の雄叫びをあげているに違いなかったのだ。 

 そこからの対応は我ながら迅速だった。鹿頭が如く壁に飾られたガスマスクを装着し、床に放り出されていたサンホラライブDVDを片手に部屋を飛び出す。言うまでもなく、その時の俺は音を置き去りにしていた。

 目標は歩いて一秒にある隣の部屋。普段見慣れているその扉。今ではどことなくオーラが漂っている気がしなくもない。

 臆せず慌てず慎重に、ドアノブの形をとったマンゴーを粉砕しつつ、俺はその領域に足を踏み入れた。

 そこで俺が見たものとは――、


 ――ベットの上で仁王立ちする妹の姿だった。


 窓際から漏れる星明りが妹を照らす。その姿は風呂上がりらしくバスタオル一枚だけであった。

 張りのある肢体はうっすらと赤みがかかり、それでいて水々しさが映える。バスタオルから伸びる手足はまるで初雪のように白く、洗練された芸術品のよう。

 そこはさながら異世界か。現実から切り離された切絵が如く。自然のように荘厳で、宇宙のように神秘的で、何より――神々しいまでの美しさがそこにはあった。


「――我の眠りを妨げる者は誰ぞ?」


 凛とした声で妹は言い放つ。

 続けて首を傾げ、悩ましい鎖骨の形を変えながら俺を見据えた。

 だが、俺は依然として立ち尽くすまま。体中に鎖が繋がれたような感覚。まるでこれは、一切の動きが許されない臣下か。もしくは――、


「邪魔にきたか? それとも何か」


 ――死を待つばかりの(いけにえ)なのか。

 それは一瞬のことだった。ベットから飛び降りた妹は、獣さながらの俊敏さで距離を詰め、あろうことか俺の背後をとった。

 流石に危険を感じた俺も応戦しようとしたが、時すでに遅し。されるがままに背を押されベットに倒れこむのだった。

 視界いっぱいに映るベットの白。所々に湿ったような跡があるのは風呂上がり故か、それとも別の何かか。

 途端に甘い香りが鼻腔を支配する。神経が焼き切れそうな魅惑のソレ。麻薬を嗅がされたような濃密な匂いに、堪らず仰向けになり――狙ったタイミングで妹に圧し掛かられた。


「――我への供物(えさ)になりにきたか?」


 猫のような笑みを浮かべながら、徐々に体重をかけてくる妹。

 バスタオルから伸びる太股は俺の腹部を挟むようにして跨り、谷間を覗かせる見事な胸は胸板に押しつけるようにして形を変える。

 傍から見れば、恋人同士が抱き合っているような情緒溢れる状況。深夜に相応しいシチュエーションと言えた。

 だがそこにロマンスは存在しない。あくまでも一方的で、強制的で、仕方がなき弱肉強食の世界を如実に示していた。

 

「今の我はとてもとても腹が減っておる」


 息がかかるような至近距離。新鮮な桃が如き唇が節々に暗闇を覗かせる。


「そこに迷い込んできた一匹の(オス)


 腕が首に回される。思いなしか息が荒くなってきたようだ。


「あとは――わかるな?」


 勿体ぶった言葉と共に、遂にと言うべきか、妹はその(きば)を――










 ガスマスクに突き立てた。

 アイピースと呼称される目にあたる部分、透明なレンズに妹は唇を這わせていた。

 ぴちゃぴちゃ、と舌が翻る度にたてる淫靡な音。レンズ越しに見ゆる舌は何とも形容しがたい厭らしさを醸し出していた。

 見っとも無く舌を這わせ、唇が淫らにレンズに吸い付く。

 首に回された腕は獲物を離すまいと、ぎゅっと絡み付く。

 そして、今にも(はだ)けそうなバスタオルはいよいよもって、その役目を放棄しようとさえしていた。


「んッ――ん。……ふぅ」


 れろれろ、と蠢く舌は蛇のよう。熱い吐息によって曇るレンズを唾液で拭い取る行為を続けること長く、長く。

 だが、その情事も終わりを見せる。

 漸くガスマスクにキスすることに飽きたのか、妹は顔を上げたのだが――とろん、とした目元に俺は途轍もない危機感を覚えた。

 首に回していた腕が屈伸し、妹は上半身だけ立ち上がる。

 振り出しに戻ったような感覚。

 ただ、違うのは妹の身に纏う雰囲気。

 徐に腰の位置をずらした妹は、申し訳程度に巻かれているバスタオルの端を摘むと――こう言ったのだった。
















「――今夜の夜食(おやつ)、バナナがいいな」

 





          ,. -‐‐‐- 、

         / !      ヽ

        _,!-y-‐-、-、   |

        ゞヽ}i⌒ヽ\ \ {  シューコパー

        }〉ソー-// 入 ヽ、

        >仝\//__,.ゝ、  >

       o|ii_ii_:|oニ二三____,.>'

    ''''''} ̄~フハ      ;/;' /_,;,7'

   ;;;''''/_  / | | `ー-‐'´_,,,/' ,,/r'~`ヽ';

     ,r'~ `V ヽニニニ二、-'{ 十 )


最初のプロット

二重人格のメンヘラ♀→夜には魔王になってR15ッポゥ!

次のプロット

中二病、高二病、大二病の三段構えで妹を虐める話。

最後のなにか

ノリで書いてたらガスマスクになった。何がなんだかry

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