皮がパリッと!具だくさん春巻き 2
料理をするのにも邪魔にならない、身につけられる小物。
あの一言を受けての贈り物だろうか。
ヤバい、めちゃくちゃ嬉しいかも。
手の中の可憐な花を見つめ、知らず小さな笑みが浮かんだ。
「本当に貰っちゃっても、いいんですか?」
窺うように再度問えば、ああ、と頷かれ「俺が持っててもしょうがない」と言葉が続いた。
はにかみながら「有難うございます」と羅刹に頭を下げ、「蒼くんもありがとう」と笑い掛ける。
思いがけない嬉しいプレゼントに口元を緩めていると、実にいい笑顔の雪音たちに「見せて!見せて!」とねだられ希望に応えた。
彼女は綾と羅刹のやり取りの間、ずっとニマニマしながらこっちを見てた。
まぁ、彼女だけでないが……。
「あら綺麗じゃない。綾の髪色にもよく合いそう」
「本当、素敵ですわ」
雪音と糸織の褒め言葉に椅子に座ったまま、体を寄せた蒼が自慢げに手を挙げた。
「でしょ?!あのね、お花の色はぼくが選んだんだよ。綾ちゃんに似合うと思ったの!」
「いい趣味ね。じゃあ、花は?」
チラリと意味ありげな視線が羅刹へと飛んだ。
その視線を受け、羅刹が僅かに眉をしかめる。
別に気分を害しているわけではない、あれは多分「面倒くせぇ」的なことを思っただけだ。
綾はそう理解するが、糸織などはビクリと肩を揺らし、雪音を止めるように腕に手をかけた。
雪音も僅かに反応したものの、こちらは興味が勝っているらしい。
気後れする……とか言っていたくせにわりと取り繕わない雪女さんでした。
「人気だというのを選んだだけだ」
「鬼のが小間物屋で女子の小物を選ぶ姿など、想像がつかぬのぅ」
くつくつと喉を鳴らすのは、こちらは揶揄う気満々の九十九だった。
「別に店には行ってない」
心底面倒くさそうに答えた羅刹が「おかわり」と皿を差し出す。
春巻きの第二段を皿に乗せる。
ついでに調味料も追加してみた。
「お醤油以外にもポン酢や練りがらしも良かったらどうぞ。ケチャップも意外と合いますよ。蒼くん、いる?」
「いるー!」
具材をごま油で炒めるときにしっかりと味付けをしてあるので、そのままでも充分食べれる。だが定番の醬油はもちろん、味変も意外にイケます。
「あのね、小間物屋さんが来たの。女の人たちが買うからね、たまに来るんだよ」
否定で完結していた羅刹の言葉を補完したのは、口の周りにケチャップをつけた蒼だった。
「そのお花は三番目に人気のだったの」
「一番じゃなくて?」
「うん。綾ちゃんに似合わないってとーりょーが」
酒を口にしつつ「派手だったからな」と羅刹が一言。
「本当にすっごい嬉しいです!大事にします!」
ぎゅっと簪かんざしを握りしめ、もう一度お礼を言う。何度だってお礼を言いたい気分だった。
「綾さん、宜しければお付け致しましょうか?折角ですもの」
糸織の申し出に、宝物みたいに握りしめていたそれの本来の活用法を思い出し、さっそくお願いした。
「綾ちゃん可愛い!いつもよりいっぱい可愛いよ!」
「えー本当?ありがとう」
拙い褒め言葉がかわいくて、ふふっと笑う。
雪音たちも褒めてくれるのでそれなりに似合ってはいるのだろう。お世辞こみにしても……。
自分で見えない綾に、糸織が手鏡を取り出して見せてくれた。
ちょこんと咲いた可憐な一輪の花。
嬉しくて、なんだか気持ちが舞い上がる。
小物ひとつで心が浮き立つとはオシャレの威力は侮れないらしい。
本来なら人目のあるところで渡したくなどなかったのだろう。
揶揄いを含んだ視線に辟易としてそうな羅刹へ、お礼の気持ちを込めて徳利を差し出した。




