未来への届け物
青春の思い出とは残酷だ。忘れたはずの想いがこうも簡単に思い出せるなんて。あの瞬間から彼のことが脳裏から離れないでいる。だがもう傷つくのはごめんだ。今ではただの知人だ、もう会うこともないだろう、そう思った時だった。
「また会ったな。」
背後から聞き覚えのある声が聞こえてくる。恐る恐る振り返ると彼がいた。
「……うそ。」
「なんだよその顔。」
いつの間にそばに来たのだろうか、顔を覗き込んでくる。
「普通の顔でしょ……」
「そっか。ところでこのあと時間あるか?」
そういうと彼はにこりと笑った。私は嫌な予感がした。
(だよね……そうなるよね。)
あの後、彼の誘いを断れず一緒に散歩をすることになった。辺りに人の気配はせず家々にあかりが点っている。月明かりに照らされて私たちはポツリポツリと歩いていた。
「嬉しかったんだ。キーホルダーまだ持ってくれてたなんて。」
突然、海空が口を開く。彼は夜空を見上げていた。私は唖然として彼を見たがすぐに視線を戻す。
「……覚えてると思わなかった。忘れてるって思ってたから。」
「あのキーホルダー、頑張って選んだんだ。どんなのがいいか全然分からなくてさー。」
そういうと彼は歩みを止めた。私も立ち止まった。
「俺さ、お前に偶然会ったあの日からお前のこと忘れられないんだ。」
「……え、」
「また……こうやって会えないか?」
まるで時が止まっているかのようだ。声にならない返事しか出せなかった。月明かりに照らされる彼の笑顔、揺れるキーホルダー。胸の奥がじんわり熱くなるのを感じながら、私はただ立ち尽くしていた。
――未来の届け物は、こんな形で届いたのだ。




