届いた小包
春のそよ風に押されて、桜の花びらが足元を転がっていた。肩に強い衝撃が走る。
「どこ見て歩いてんだ!!」
酔っているのだろうか男性が怒声を上げ、そのまま歩いていった。私は驚きと恐怖に足を止めたが男性を横目にまた歩き出した。すると今度は肩にトンットンッと優しい感覚が伝わった。振り返ると先程とは違う男性が立っていた。
「あのこれ、落としまし……」
男性の声が突然途切れる。どうしたのだろうと思い顔をあげた瞬間。私の思考は止まった。
「このキーホルダー。まさかとは思ったけど、一花か……?」
高校生時代に大好きだった彼が、そこにいた。春の光のせいか彼の黒髪が少しだけ柔らかく見えた。
「……海空?」
「ほら、これ。」
「あ……拾ってくれてありがとう。」
キーホルダーを受け取る。高校生の時、バレンタインのお返しにもらったものだった。可愛くて、捨てる理由が見つからないまま、ここまで来てしまった。
「大切なものだから。なくさなくて良かった。」
「まだ、つけてるんだな。」
予想外の言葉に驚き言葉が出なかった。
「ご、ごめん私急いでるんだった。じゃあ……」
何とか言葉を絞り出しその場を去ろうとした時。
「待って。」
ぎゅっと裾を掴まれる。振り向くことも手を振り払うこともできなかった。
「……どうしたの?」
「懐かしくて。ごめん……じゃあな。」
私はその場から動けなかった。やっとの事で振り返るともう彼の姿はなかった。袖を掴まれた感覚だけが微かに残っている気がした。




