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投函されなかった言葉

窓から春の暖かな風が入り込み、教室の中はざわついていた。私、浮谷一花は一枚の紙に書かれた番号と黒板を見ながら席を探していた。自分の席を見つけたが既にそこには人が座っていた。

(おかしいなぁ……あそこのはずだけど。私間違えてるかな?)何度も確認したが間違いないようだった。勇気を出して側に行くとそこに座っていた少年がこちらに気付いて顔をあげた。

「あ、あのー。ここ私の席みたいなんですけど……。」

「うそ!番号見して。」

私は番号の書かれた紙を少年に差し出す。交互に紙に書かれた数字を見るとぷはっと笑い声が聞こえた。

「待って!あはは。同じ数字だ!」

「嘘!本当だ!!」

びっくりして確認するとそこには全く同じ数字が書かれていた。まさかの状況に2人は笑顔になる。

「じゃあ先生に言ってくるね。」

「あ、俺も行くよ。」

2人で先生の元に行き状況を説明した。先生も笑っていた。

「ごめん!前作ったのが何故か混ざってたみたい。どっちかもう一回引いてもらってもいいかな?」

「それなら私が引きます。」

彼は先に席についていた。後から来た自分が引くべきだと思い名乗り出る。彼は申し訳なさそうな顔をしていたが私が引き直す姿を見て席へと戻っていった。

(優しそうな人だったな……隣の席だったら良かったのに。)

少し期待をしていたがそうなることはないだろうと思い再度引いた紙に書かれた番号の席へと向かう。席に着いた瞬間周りのざわつきが遠のく。こんなことはあるのだろうか隣の席には先程の少年――大鹿海空がいた。お互いの視線がぶつかる。互いに軽く会釈をして席に着いた。

(うそうそ!本当に隣の席になれるなんて!)

これが彼との出会いだった。私はこの日から考え事は全部遠回りして彼に戻ってくるようになった。連絡先を知ってから何度も連絡した。直接話しかけようとしても、いつも失敗した。相手に好きな人がいることも明らかになった。それでも諦めきれなかった。大好きだった。それなのに、高校3年生のある日。一通のメールで私の恋は迷惑なもの、悪い気持ちになってしまった。

 ――彼女ができた。それが私の恋を悪者にしてしまった。

私は悪者にはなりたくなかった。だから自分の想いを隠して、何もなかったふりをした。受験だの将来だの、忙しさはちょうどいい言い訳になって、気付けば彼の名前を思い出すことも減っていた。

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