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問題発生

「よし、村に戻ろう」

ダンがそう言って、捕まえたロックヤックを見渡した。

15体。

全て縄で繋がれて、大人しくしている。

「せっかくロックヤックを捕まえたんだ。乗って帰るか?」

レオが一体の背中を叩きながら提案する。

「そうだな。徒歩で三日かかったが、これなら半日で着くだろ」

ダンが頷く。

俺は、ロックヤックを見上げた。

......でかい。

背の高さは2メートル以上ある。

硬い鱗に覆われた背中。

正直、不安だ。

「大丈夫か、アリア?」

エドが心配そうな顔でこっちを見た。

「初めて乗るんだ。落ちるなよ」

「大丈夫ですよ」

俺は笑顔で答えた。

でも、心臓はバクバク鳴っている。


俺は一体のロックヤックに近づいた。

深呼吸。

よし、いける。

両手で鱗を掴み、右足を踏ん張って——体を持ち上げる。

「よっと......」

何とか、背中に跨った。

......硬い。

鱗が足の下にゴツゴツしている。

でも、左足——義足の方——の感覚が鈍い。

「よし、しっかり掴まれよ」

ダンが声をかけてくれた。

「ああ」

俺は両手で鱗をしっかり握る。

これなら——

「行くぞ!」

ダンが叫んだ。

次の瞬間——

――ドドドドドッ!!

「うわっ!?」

体が後ろに吹っ飛びそうになる。

必死に手綱を掴む——

だめだ、落ち——

「っ!」

――ドサァッ!!

地面に叩きつけられた。

......息が、できない。

苦しい——

視界が、白い。

死ぬ——?

「アリア!」

ダンの声が遠い。

「アリア!大丈夫か!?」

......息、を......

数秒後——空気が肺に入った。

「はぁ......はぁ......」

「だ、大丈夫......です」

みんなが寝静まった後。

俺は一人、焚き火の前に座っていた。

手には、割れた義足。

「......」

指で、木の表面を撫でる。

滑らか。

丁寧に削られている。

ガラムさんが、何日もかけて作ってくれた。

——俺の目の前に、あの日の光景が蘇った。


【3年前、エルドラ村】

「アリア、これを使いなさい」

ガラムさんが、義足を差し出してくれた。

村に来て3日目のことだった。

俺が松葉杖で苦労しているのを見て、作ってくれたんだ。

「お前の足に、ぴったり合うように作ったぞ」

ガラムさんは笑った。

優しい、しわだらけの顔。

「何日もかかったが、満足のいく出来だ」

「......ありがとうございます」

俺は涙ぐんだ。

こんなに優しくしてくれる人、初めてだった。

「これで、もっと動けます」

「ああ」

ガラムさんが俺の頭を撫でた。

温かい手。

「お前は、この村の希望だ」

「たくさん動いて、たくさん働いて——」

「この村を、守ってくれ」

「......はい」

俺は強く頷いた。

絶対に、この村を守る——。

そう誓ったんだ。


「......」

涙が、一筋流れた。

すみません、ガラムさん

大事にするって約束したのに

壊しちゃいました

涙が止まらない。

俺、ダメだな

ポロポロと涙が落ちる。

みんなを守るって言ったのに

こんな、簡単なことも——

「アリア」

「!?」

振り向くと——レオが立っていた。

「レオ......起きてたのか」

「お前が、いないから」

レオが隣に座った。

「心配で、起きた」

「......」

「泣いてたんだな」

「泣いてないよ」

俺は慌てて涙を拭った。

「嘘つけ」

レオが苦笑した。

「顔、ぐちゃぐちゃだぞ」

「......」

「アリア」

レオが俺の肩を掴んだ。

「お前は、一人じゃない」

「......」

「辛いときは、辛いって言え」

「悲しいときは泣け」

「俺たちは仲間だろ」

「......」

「だから——無理するな」

レオが笑った。

「......レオ」

俺は、もう我慢できなかった。

涙が、溢れた。

「ごめん」

「何が?」

「俺、弱くて......」

「バカ言うな」

レオがおでこを軽く小突いた。

「お前は十分強い」

「でも——義足、壊しちゃって——」

「義足が壊れたくらいで、お前の強さは変わらない」

レオが真剣な目で言った。

「お前は、この村の希望だ」

「ガラムさんもそう言ってた」

「......」

「だから、泣きたいときは泣け」

「でも、泣き終わったら——」

レオが笑った。

「また前を向こうぜ」

「......はい」

俺は頷いた。

レオは何も言わず、ずっと隣にいてくれた

ロックヤック15体を連れて、村に到着した。

「ロックヤックだ!」

「こんなにたくさん!」

「すごい!」

村人たちが歓声を上げた。

バルグ、ビルグ、ブルグが出迎えてくれた。

「よくやったな、アリア」

バルグが笑った。

「これで、極東への道が開けた」

「でも——」

ブルグが俺の足を見た。

「義足が......壊れたのか?」

「......はい」

俺は頷いた。

「ロックヤックから落ちて」

「そうか......」

ブルグが、割れた義足を手に取った。

じっと見つめる。

数秒の沈黙。

「......いい仕事だ」

「え?」

「この義足を作った人は——」

ブルグが俺を見た。

「お前のことを、本当に大切に思ってたんだな」

「......」

胸が熱くなる。

「木の削り方、重心の取り方」

ブルグが義足を撫でた。

「全てが、お前の体に合うように作られてる」

「素人の仕事じゃない。プロだ」

「これを作るには、数日もかかったはずだ」

「......はい」

俺は頷いた。

「ガラムさんが、作ってくれました」

「ガラム......ああ、村長だった人か」

ブルグが頷いた。

「いい職人だったんだな」

「......はい」

「なら——」

ブルグが俺を見た。

「俺に、作らせてくれ」

「え?」

「新しい義足を」

ブルグが真剣な目で言った。

「ガラムが作った義足は、素晴らしい」

「でも、お前はこれから戦う」

「戦場で使える、頑丈な義足が必要だ」

「......」

「ガラムの想いを、俺たちが引き継ぐ」

ブルグが拳を握った。

「お前のために、全力で作る」

「俺たちドワーフの技術と——」

「ガラムの想いを、一つにする」

「だから——お願い、できるか?」

「......」

俺は、ブルグを見た。

真剣な目。

職人の誇り。

そして——ガラムさんへの、敬意。

俺は、深く頭を下げた。

「お願いします」

「新しい義足を、作ってください」

「任せろ」

ブルグが笑った。

「ガラムに、恥じない仕事をする」

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