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「キラナ……大丈夫か?」
猛烈な加重がかかるシャリダンⅣのキャビンの中で、ベレンはキラナに声をかけた。
キラナは声を出さず頷く。
「そうか。身体はきついとは思うが、おそらくあと5分ほとでこの加速は終わる。シャリダンⅣはサブモーターをドッキングしてからの加速が一番辛いんだ。そこを乗り越えれば、身体は楽になる」
キラナは再び頷いた。声を出す余裕はないらしい。
とはいえ、子供の身体には相当な負荷だろうに、一切泣き言を言わずに黙って耐えている。
そして長い5分が過ぎ、身体にかかる加速度が緩まった。
その直後、ベレンはわずかな振動を感じる。
シャリダンⅣが燃焼を終えたサブモーターを切り離したのだ。
「ふう……ようやく最大加速フェーズが終了したな、キラナ、大丈夫か?」
「……はい」
キラナは息を吐き出しながら頷いた。
「わかっていたことですが、少し堪えました」
「ああ、そうだろうな。特に君は、欧州なら制限を受けてもおかしくない年齢だ」
「ですね。大気圏離脱は二回目ですが、これはまだ慣れそうにないです」
それからキラナは少し声を潜めて、ベレンだけに聞こえるように囁いた。
「ベレンさん、このロケットの現在の飛行位置は推定できますか」
「まあ大まかにはな。事前情報にある飛行ルートと経過時間を見れば推測を立てることはできる。あとは微調整用の加速タイミングによる推定か」
ベレンはキラナの意図がわからないながらも、同じように小声で返す。
「では、地球周回軌道の投入最終フェーズに入った段階は分かりますか」
「それはわかるだろう。最終段階で加速か減速、姿勢制御による微調整を行うはずだ」
「では、その時点で私に教えてください。私たちは――」
そこでキラナは一旦言葉を切り、少し躊躇するように間を置いてから続けた。
「――私たちは、ここから離脱する必要があります。シャクティ宇宙基地に着く前に」




