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Come back to the moon water  作者: 白古賀
Chapter2 <Running out from home>
22/25

2-10

 工場建屋の大扉がゆっくりと開かれていく。<チラヴェーク>が余裕で通れるほどの大きさだ。

 その扉を、<チラヴェーク>がゆっくりと歩いて通過する。

 主任や整備員の男たちが帽子を振って見送り、それに対して<チラヴェーク>は手を振り返す。


 全て、操作しているのはキラナだ。

 この複雑な人型機械を一体どうやってか、数本のレバーとフットペタル、その他の各種スイッチ類で制御している。

 その操縦系は、扱うものの複雑さと比べれば随分シンプルだ。

 普通の航空機の方がはるかに複雑だといえるだろう。だからこそ、不思議でならない。


「ベレンさん、これからここを飛び立ちます」

「……重力下を飛べるのか?」

「はい、重力制御装置を使えば」


 キラナは答えながら、スイッチ類を操作する。

 手元のディスプレイに重力制御装置の稼働を示す複雑なグラフが表示され<チラヴェーク>は何も音を立てず、静かに浮かび上がる。

 そして、少しずつ高度を上げていく。


「ここからは、光学迷彩システムを使います。ただ、航空機との衝突やレーダー探知を避けるため、あまり高度は上げないほうがいいかと思っています」

「なるほど……どのくらいの高度で移動する?」

「だいたい1000から1500フィート程度が良いかと」

「そうだな、それくらいが良いだろう」


 <チラヴェーク>はしばらく上昇したあと、水平飛行に入る。

 元々宇宙用の人型機械を重力制御装置で浮遊させているだけなので、あまり速度は出せない。

 空力的に、大気圏内飛行には不向きすぎるのだ。


「エネルギーはもつのか?」


 ベレンの問いにキラナは頷いた。


水素式核融合動力炉ハイドロフュージョンリアクターの動力は、半年は稼働します。そちらは問題ありません。むしろ問題は――」

「――我々人間の方だな。水と食料が必要だ。あと休息も」

「はい、そこは道中で何とかしましょう。ベレンさんもアドバイスをお願いします」

「ああ、もちろんだ」


 <チラヴェーク>は不安になるくらいゆっくりと低空飛行を続ける。

 モニタに表示されている対地速度は時速170km程度。航空機に比べかなり低速だが、これでも人型機械である<チラヴェーク>はかなりの空気抵抗を受けている。

 フレームにもそれなりの負荷がかかっているだろう。


「さて……ここから、どうする? 我々はどうやって月を目指す?」


 しばらくしてベレンは問う。


「まさか、この<チラヴェーク>に大気圏脱出能力があることは――」

「さすがに、それは無理です。重力制御装置や補助スラスターは高度を上げても推進効率は落ちませんが、どう頑張っても第一宇宙速度は出せません」


 キラナは答えた。


「ですから――まずはインド洋を目指します」

「……インド洋?」

「はい」


 キラナは頷いた。


「次の目的地は<モノケロス>――マスドライバーです」

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