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Come back to the moon water  作者: 白古賀
Chapter2 <Running out from home>
16/21

2-4

 ブダペストに着いてからはしばらく順調だった。

 ベレンは密かに情報収集しながら電車やバス、タケシーなどを乗り継ぎ、東へと移動する。

 なるべく足のつかない移動にはこだわったものの、ヒッチハイクにはこだわらなかった。


 最初にうまくいったのはベレンが長距離トラックのルートを知っていたことに加え、幸運が重なったからだ。

 ベレンは次の幸運を待つよりも、確実に東へ移動することを選んだ。

 最初に足跡を断ってしまえば、後は速さが重要になると思ったからだ。


 とはいえ海路と空路は使わなかった。その二つは陸路に比べ、やはり管理が厳しい。

 ベレンの持つ偽造IDではリスクが高すぎたのだ。


 移動ルートは主にベレンが決め、手配していたが、たまにキラナが不思議な口出しをすることもあった。


「ポーランド回りはやめましょう」


 キラナの最初の提案はプダペストからのルートを考えていたベレンに対してのものだった。


「なぜだ? 少なくとも最短ルートを通るならポーランドを経由するルートになるが」

「はい。だから……避けた方がいいと思うんです。明確な根拠があるわけではありません。ただ……合理的な選択は探す方にとってもそうです」

「それはそうだが……そもそも相手は我々の目的地を知らないはずだ」

「ええ、でも……」


 キラナは何かを言いかけて、しかし言葉が出てこなかったようで首を振り、


「わかりません。明確な根拠はないです」


 キラナは繰り返した。


「でも、私は避けた方が良いと思って……」


 キラナはそこで言葉を切り、


「いえ……やはりルートはベレンさんにお任せします」 

「そうか……」


 ベレンは一瞬考え、


「そうだな、ポーランドは避けよう。ルーマニアを通ってオデッサまで移動し、そこから北上する」


 その決断が正しかったのか、キアラの助言が本当に役に立ったのか、ベレンには確かめる術はなかった。

 しかし結果として、オデッサまでは捜査局に見つからずに移動することができたのだ。

 だが……


「ようやく一息ついたな」


 ベレンはホテルの一室でキラナと話す。


「むろんまだ油断はできないが、ひとまず今日はここで宿泊だ。しっかり休息して体力を温存しよう」

「……はい」


 キラナは頷いたが、どこか上の空という雰囲気だった。


「何か気になることがあるのか?」


 ベレンの問いに、キラナは一瞬躊躇ってから答える。


「……私たちは泳がされている可能性もあります」 

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